塩田作り
望月さん、金剛君達が帰って来て更に仕事を加速させた。まずは塩を作る塩田だ。これは塩屋さん兄弟と那古屋に向かい、少し陸地に入った所に流下式塩田を作った。まぁ作ったのは野田さん達なのだが。
「剣城様?枝条架はこんな感じで如何でしょう?」
「オッケー!昔テレビで見た感じと同じですよ!」
流下式塩田に使う枝条架とは竹や細い、ささらなどをまとめてホウキのような枝状にし、幾層にも集めて棚にまとめたもの。
これに付着した海水に天日及び風を当て、水分を蒸発させ、脚部の水槽に貯める。これを再度汲み上げて枝条架に散布し、同様に水槽に貯める、という作業を繰り返し、一定の濃度に達したら、水槽の中の水を煮詰めて製塩する。
「脚立は下で支える人を必ず付けて上がるように!」
「てやんでぃ!海の男はそんなヤワじゃねー!」
いやいや転けると怪我じゃ済まないぞ!?安全第一だろ!?
「其の方・・・吉蔵の子分と見えるが責任はお主が取れるのか?お主は自分で差配する身分に見えないが?剣城様はお優しい。怪我で済めば治してくれよう。だが剣城様は安全を期すように、下で支え手が必要と言われた」
いやいや野田さんもこえーよ!!なんでドスの効いた声を出すんだよ!?
このような悶着もありながらも、この作業の監督は塩屋さん達に任せた。一応もっと簡易的な粘土質の土を浅く穴を掘った場所に敷き詰め、天日干しにて塩を作る揚浜式塩田なんかも作った。
「では塩屋さん?1番は岐阜に供給する事!そして他国に売る場合は揚浜式の方を。どうしても品質は悪くなると思うし」
「分かりました!お任せ下さい!この辺一帯を見事な塩田にしてみせます!!」
「よろしくお願いします!」
と、丸投げにした形だが、とりあえずは塩田の方はどうにかなった。
そして服飾の方だが、喜左衛門さんが見事な采配をしているのだ。まずは三河から来る綿花だ。栽培は見事なようで、かなり持って来てくれている。最初は物品を渡していたが、数日経つと新しく作った銭を渡すようにしている。
「あっ!剣城様!この着物なんか如何でしょう!?」
「剣城様!こちらの御召し物なんかは!?」
と、ご婦人方にあれよこれよと献上してもらうのだが、オレはやはり甚平みたいな作業服が楽で、最近はそればかり着ている。
「剣城様?これなんか如何でしょう?未来のジャージに似ていませんか!?」
「おっ!?喜左衛門さん流石!!デザインはかなり良いですね!」
「ありがとうございます!実は未亡人達に呉服屋なんかも考えております。許可していただけませんでしょうか?」
「いやいや、そんなのオレに聞かなくていいので始めて下さい!」
と、普通の人にまで畑仕事以外の考えが、出てきたりしている。天蚕の方も喜左衛門さん達に任せているが、順調に上質な糸が取れている。
「あたしゃ金剛様の方が良かったのだけどねぇ〜」
「本当。金剛様は中々顔を見せないねぇ〜」
とお婆さんには人気な金剛君だが残念だ。金剛君はオレの右腕だ。
そんなこんなで数日経ち、夜はゆきさんとハッスルしつつ、昼間は塩田を見たり大野さんの飯を食べたりして、1週間が過ぎた所で大所帯の引越しである。
「小泉さん!この村をお願いしますね!まあ近くだからすぐ会えるっちゃ会えるけど」
「お任せ下さい!八兵衛殿と連携し、更なる収穫量をご覧に入れましょう!」
「はは!ある程度保存しておきたいから、芳兵衛さんとかとも連携するようにね!国友さんは色々新兵器期待してるから!」
大所帯での引越しだが、そんなに時間がかかる事もなく済んだ。荷物はノア嬢が連れてきた馬達に荷車を引いてもらい、荷物を運んだからだ。
"ノア?本当にノアが居て助かるよ"
"キャハッ♪あーしも剣城っち♪の愛馬で嬉しいよ"
そして新築の家に早い者順で入居してもらう。早い者順と言っても家族の人には大きな家を。結婚してない方なんかは小さい家に入ってもらったが。
俺は変わらず温泉の横の家だ。ちなみにだが沢彦さんの家も作ってもらっている。学舎を二階建てにし、1階を教室、2階を居住区にしてもらっている。
「剣城様?婿殿が城にお呼びでしたよ」
家に帰ると小見さんに聞きたくない言葉を言われた。
出向かないとだめだろうな・・・。
「分かりました。ありがとうございます。今から向かいます」
城にはいつも通り顔パスで入らせてもらい、遠藤さんに取り次いで貰い、信長さんの自室に呼ばれた。
「よく来た。まあ飲め」
出されたのは抹茶だ。砂糖を少し入れたのと、児玉さんの牛乳を混ぜて抹茶ミルクみたいで、普通に美味い。
「美味しいです。ありがとうございます」
「うむ。貴様の配下の引越しも粗方済んだようだが、義弟を通して、越前の公家数人が岐阜に参りたいと申しておる」
「え!?もう岐阜が噂になってるのですか!?」
「であろうな。だがワシはこれを好機と見る。特段気にせずに歓待しようと思うが、一計あるか?」
「一計ですか・・・」
温泉に入ってもらい、飯を食ってもらう。銭は逆に公家に渡さないといけないくらいだから・・・。温泉は俺の家の横にしか無いからな・・・。城に作りたいけどな。農業神様にお願いしてみるか!?
〜時間が止まる〜
「呼ばれた気がしたんだなぁ」
「あっ!いつもいつも丁度良いタイミングです!」
「温泉の素とおいの彼女からのプレゼントも、ボックスに入れたんだなぁ」
いやマジで神だわ。
「芸術神様からは何か分かりませんが、お礼を伝えておいて下さい!」
「分かったんだなぁ。それとこれはまだ試作段階だけど、使ってほしいんだなぁ」
「え?何ですかこれは!?」
「貯蔵庫専用のジオラマ倉庫なんだなぁ」
農業神様が言ったのは『食が広がるのは良い事』らしく、農業神と名前がある通り食とは肉や魚なんかもあるが、米にしろ野菜にしろ栽培する事には変わりなく、需要が増えれば作る人も増えて良い事なんだと。
それに俺が大野さん達に飯屋を頼んでいるが、今後この大野さんは戦に出れなくなるくらい忙しくなるであろう、と先読みの事はあまり言われないが、この事だけはだな。『世界線でも同じ』と言われ教えてくれた。
「我が兄弟を慕う者に渡せば喜ばれると思うのだなぁ」
「分かりました!ありがとうございます!すぐに使わせていただきます!お代の方はクレジットから引いて下さい!今は余裕がありますので!」
「今回はサービス品だから要らないんだなぁ。おいは今かなり幸せなんだなぁ」
芸術神様とイチャイチャして幸せなのか!?羨ましいぞ!?農業神様は少し痩せたように見えるのは、気のせいだろう。
「幸せで何よりです。ありがとうございます!また、買い物色々させてもらいますのでお願いします!」
「さよならなんだなぁ」
〜時間が動き出す〜
「いい案があります。今しがた城にも温泉施設を作れるようになりました!」
「本当かッ!?今すぐに作れ!」
「と、とにかく!温泉を作り歓待し、新しい岐阜だけで使える銭を渡しましょう。何日居るかは分かりませんが岐阜で飯を食べ、酒を飲めば越前には帰りたくなくなるでしょう」
「ほう?貴様もそう考えるか。良かろう!貴様に任す!冬になると越前は雪に閉ざされる! 恐らく早くに来るだろう。それと次の満月までに岐阜時間による暦を定めよ」
やっとか。やっと刻とか閏とかから解放されるのか。沢彦さんのお陰だな。
「ありがとうございます。助かります」
「うむ。多少は混乱はあるだろうが慣れると秒、分、時間、距離と間違いが無くなるであろう。城下に誰でも見える時計も配置致す!考えておけ!」
いやいやまたオレかよ!?
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