新たな任務

 「坂井様、お疲れ様です!見事な采配でした!」


 「いや、某は勢いに任せただけでございますれば・・・」


 「いやいやまたまた!謙遜を!しかも我が儘言ってた美濃の3人を一喝したとか!?それで黙らせたとか、誰にも真似できませんよ!信長様にもちゃんと伝えておきますね!多分褒められますよ!」


 いや、本当に何もしていないんだが・・・そもそも大殿に何も言われたくないのだが・・・。


 「おぉ〜!剣城か!もう参ったのか?」


 「柴田様!?その首は!?血!血!血が垂れてますって!剛力君!早く首桶!」


 「なんぞ?剣城はまだビビっておるのか?ほれ!」


 ゴロン


 「うを!?夢に出る!出るって!」


 「情けない!それくらいで喚くな!」


 「権六!そう言ってやるでない。これこそ剣城のいいところではないか」


 「あ、森様!お疲れ様でございます!」


 「うむ。我が隊の損害0じゃ。少しばかり活躍出来ず、兵達が空回りしておるがな」


 「失礼します!浅井家 徒士頭 新庄忠道です。遅ればせながら浅井軍1000、援軍に馳せ参じました」


 「失礼します。同じく徳川軍 徒士頭 本多忠則。徳川軍500、遅ればせながら馳せ参じました」


 「ありがとうございます。東福寺には寄りましたか?」


 「はっ。織田様が急ぎ芝田軍に合流せよと申されまして、急ぎ後方もこちらへ向かっておりまする」


 「同じく徳川軍もです」


 「う〜ん・・・」


 「どうしたのだ?」


 「森様の意見をお聞きしたいのですが、構いませんか?」


 「言ってみよ」


 オレは進める所まで進めと言われた事、それはお前に任すと言われた事を言い、どうすればいいかを聞いた。


 「流石、剣城だな。最早新参とは言わぬが、少し嫉妬すら感じる」


 「え!?嫉妬ですか!?何でですか!?」


 「こんな早くに織田軍の先駆け大将を任せられ、且つ長年忠節を貫いているワシ等を差し置いて、『己の判断で軍を動かして良い』と言われる事に、少し嫉妬を感じるのだ」


 「すいません・・・オレはそんなつもりでは・・・」


 「いや構わんよ。ワシが少し思った事だ。先の答えだがワシなら、摂津から三好を追い出すくらいまではするだろう」


 「そうですか。取り急ぎ、自分の隊を使い斥候を出しています。越水城まで調べるようには言っています。浅井軍、徳川軍も合流したので、このまま進んでも構いませんか?」


 「その決定権はお主にあるのだぞ?」


 「オレは大した男ではありませんので、経験豊富な森様の判断を仰ぎたいです。お願いします」


 「仕方のない男だ。未だ我等は無傷に近い。お館様の上洛を完璧に成功させるには、三好を追い出す事は必須・・・。このまま森隊の決定権は剣城に預ける。好きに使え」


 「え!?」


 「ははは。さすが先見の明がある森殿だ。蜂屋隊以下500も預けよう」


 「御二方にそう言われるならば、柴田軍も任せるしかないではないか?ははは。剣城!見事、精強な柴田軍を使ってみせよ!」


 マジかよ・・・あぁ〜・・・やるしかないな。


 「分かりました。皆様の軍お預かり致します。これからの手柄は皆、折半にします。これは譲りません。ただ、個人的にお願いがあります」


 「何だ?」


 「まずはこのまま芥川山城に向かいます。その先駆けはここ勝龍寺で見事な働きをした坂井様に、このまま任せたいと思うので、1番手柄だけ坂井様にお渡ししてよろしいですか?あとは折半です」


 「あ!?え!?また某ですか!?それは皆に申し訳──」


 「うむ。確かに見事な激に見事な働きだった。森可成、異論なし」


 「蜂屋、異論なし」


 「柴田、異論なし」


 「と、いう事です。坂井様には獅子奮迅の活躍をお願いしたいです」


 やっと終わったかと思えば、このまま更に俺が美濃3人を率いるのか!?そんなの無理なんだが!?


 「うむ!坂井!次もお主に使われてやる!1番手柄のお溢れを期待しているぞ!」


 「氏家や安藤なんかより、この稲葉の隊を多く使え!」


 「な!?何だと!?おい!坂井!安藤隊を使え!」


 はぁ〜・・・もう纏め上げるの無理だって・・・。




 時刻は昼前だ。少し早目の昼食を取る事とした。このまま1時間程休憩した後、芥川山城に向かう事にした。まずは金剛君率いる精鋭の鉄砲隊で、威力偵察をお願いした訳だ。


 敵の鉄砲への備えはどうなのかと、敵の士気の高さを調べてもらう為だ。


 「望月さん?芥川山城を攻めるのに、陣を敷けそうな所ありますか?」


 「はっ。これをご覧下さい」


 「へぇ〜!また随分と詳しい地図だね」


 「倉治家の者と夏見家の者を堺や山城、河内、摂津と入り込ませていましたので、ここら辺は三好なんかに負けぬくらい、詳しく測量まで出来ているかと」


 「流石です!未来の地図と言ってもおかしくないくらいの、出来栄えです!なら・・・この高槻の天神の、この小高い山に仮の陣を敷こうか。剛力君?」


 「はっ!」


 「昼飯食べた後でいいから、簡単に陣を敷いてくれる?」


 「はっ!畏まりました」


 「剣城様は・・・」


 「はい。望月さん?どうしました?」


 「剣城様は半日で芥川山城を落とすつもりで?」


 「いや半日も掛からないんじゃないかな?今度は最初から全力で行くから国友大筒、大筒MK-2も何もかもブッパする予定ですし」


 「まさか!?はっ!我等は甲賀隊も全力を出します!」


 「さっさと終わらして、京都を見て回りたいってのが1番かも。それに石成って人もそろそろ──」


 「ただいま戻りましてございます」


 「お帰り!佐治さん、和田さん、上野さんですね?」


 「おぉ〜!我等も覚えておいででしたか!?」


 いや、うん。さっき出払った時に望月さんに聞いたからね。ドヤ顔で言ったけどごめん。正直、覚えてなかった。


 「当たり前ですよ。自分の部隊の長くらい覚えてますよ!」


 「ありがたい・・・いや・・・そんな事より、石成友通以下7人討ち取りました。こちらの首桶に──」


 「ダァァァ──!!佐治さんまで!!今ご飯中だから!」


 「あっ、いや・・・これは失礼を・・・首級の確認は後でお願い致しまする」


 「いや、オレは確認しないよ!佐治さん達が討ったと信長様に言っておくから!岐阜に帰ったら褒美渡してあげるから!」


 「はっ!ありがとうございます!」


 「と、いう事は石成は佐治さんが討ったの?」


 「はい。手前が清洲の村の武器庫にあるこの刀にて」


 あぁ〜。農業神様が気合い入れてくれた、ジオラマの家にある部屋の武器庫ね。


 「佐治さんには悪いけどサーターアンダギーは皆に振る舞うよ。その代わり、佐治さんには別の褒美渡すから、何が欲しいか考えておいて下さい。手洗って昼ご飯食べてね」


 「はぁ〜。構いませんので?」


 「いいよ。お疲れ様」


 今思えば、部隊の指揮も慣れたものだなと思う。未だに首にだけは慣れないけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る