常勝軍団
「オェー・・・はい!次!」
「はっ!キノコ山村の十八太郎と申します!首級よろしくお願──」
「十八太郎さんね。覚えておくよ!金剛君!ちゃんと紙に書いて!それで欲しい物はこの金剛君・・・オレの側近ね。この金剛君に言って帰るように!金剛君!栄養ドリンクも渡してあげて!次!」
「はっ!お招きありがとうございます!タケノコ山村の八次郎と申します!この首が──」
「あーはいはい。八次郎さんね。側近の剛力君に欲しい物を言って、お疲れの栄養ドリンクを持って帰って!はい!次!」
あの後、オレ達の快進撃は続いた。まず昨日の内に芥川山城は落城。ここでも被害0。強いて言うとすれば浅井軍の足軽数名が躓いて、将棋倒しみたいになったみたいで、擦り傷があったくらいだ。
だが衛生班の鞠ちゃん、凛ちゃんの素早い救護により負傷が無かった事にされた。うん。オレは金剛君から浅井軍に数名負傷と聞いたが、即座に鞠ちゃんが『負傷0です』と言ってきたのだ。
織田軍でもなく浅井軍の事だから、何かあるといけないから念を見て確認しようとしたのだが『負傷は0です!繰り返します!0です!』と言い切った為、金剛君の間違いなんだろうと思う。
自称、芝田家筆頭家老の小川三左衛門さんが、方々で褒美褒美と唱えるもんだから、全然知らない人達からも褒美を強請られる始末だ。最初に来た、氏家さん・・・美濃三人衆の1人だ。この人が6人の首を持ってきたのを皮切りに、次々に持ち込まれる首。
信長さんにじゃなく何故オレなのか聞きたい。今すぐ渡すのは違うと思い、とりあえず名前と所属、住んでる場所を聞いて後日届けると伝えている。労いを兼ねて栄養ドリンクを渡しているんだが、これも間違いだった。
森さんや柴田さん、蜂屋さん達も何かオレから貰いたいらしく、全く知らない人の首まで持ってきたりしたが、早々足軽以上の首なんて無い。無いならどうするか・・・。
「戦とは勢いが大事だ。そうは思わんかね?皆の衆よ」
「歴戦の勇士、森殿が言うなら間違いない。このまま高槻、茨木、有岡と攻めましょうぞ」
「うむ。池田城を落とすには支城は全て落とすのが吉であろう。降伏も許さずただただ攻めるの事が肝要かと」
「さすが蜂屋殿は分かっておる。我等の勢い止められるものか」
と、こんな事を諸将で決めたらしく、このまま戦の継続が確定された。だが、この芥川山城にも守備隊を残しておかなければならず、誰が残るかという話になり、まさか1番士気が高く、類稀な指揮をしていた坂井さんが『残る』と言い出したのだ。オレは流石だなと思った。
この人は沢山首を取った筈なのに、一度も褒美をくれと言って来ない。寧ろその事を隠す素振りすら見える。この皆の進軍意見も間違いなく手柄が、首が無い人が居るからそれを欲する為の進軍だろう、とオレは思っている。
その坂井さん・・・皆に手柄を渡す為、敢えて居残りを主張する姿は称賛に値する、と思っている。
とりあえず、身分の低い人が一生懸命倒したという人の首・・・正直誰々の誰々の首です!と言われても分からない。仮に足軽未満の人であっても褒美は出してあげる予定だ。どうせお菓子や酒とか食べ物を強請られるだろうと思っているからだ。それくらいなら全然許容範囲。
「うむ。ではそろそろ準備致すか。それで?剣城?誰が残るようになったのだ?」
「はい。やはり坂井様を守備に回すのは違うと思いますので──」
「いやいや!剣城殿!?森殿!?某がこの芥川山城に残った方が──」
「いや〜、さすが坂井殿だ。我等に手柄を譲ってくれるとはな。その見え透いた演技なぞしなくてよい。其方の指揮、采配は素晴らしい。あの三人衆を見事に動かしておる」
「うむ。ワシもそう思う。坂井の采配なくして、ここまでの快進撃はないと言える」
「え、あ・・いや某は本当に居残りで──」
「という事ですので、坂井様には是非このまま第一陣を率いて貰いたいと思います。そしてこの芥川山城へは蜂屋様に守ってもらいたいのですが、構いませんか?信長様本隊にも連絡はしてあります。すぐに駆け付けてこられるそうですので」
「うむ。仕方あるまい。我が兵は農家が混ざってる混成部隊だから、ここまでだ」
「すいません。ちゃんと皆さんに手土産はお渡ししますので」
「構わぬさ。お館様の上洛、必ず成功させようぞ!」
「「「「「オォ────!!」」」」」
何故・・・何故また俺が先頭で、この3人を纏めなければならないのだ・・・!?まさか剣城殿が面白がって、こんな風にしてるのではないのだろうか!?うん!絶対にそうだ!
下の者にまで褒美を強請られ、謁見を拒否する事なく全員と相対していた剣城殿・・・。辟易としていたのは、目に見えて分かったから俺は何も強請らなかったし、そもそも俺は美濃の田舎に帰り、田植えをして暮らしたいだけなのに・・・。
「おーい!坂井!出撃前にこれ洗っておいてくれ!」
「ワシのも!」「俺のも頼もう!」
チッ。俺は舎弟じゃないと言っているのに。クソ爺どもが!流れ弾で死ねばいい。
「はーい!すぐに!」
クッ・・・こうなりゃこの3人を酷使してやる!それで被害が出たところで、退却を進言してみよう。剣城殿なら受け入れてくれる筈。
「なに!?降伏だと!?貴様等!1当てもせず降伏だと!?立て!戦え!」
「か、勘弁して下さい。切腹をと申しつけられるなら、どうか我が命のみで城兵には何卒・・・」
「チッ。興醒めだ!剣城!後は任せる!」
「う〜ん。切腹なんかいらないですよ。とりあえず降伏で。武器やなんかは回収しますね。あれ?坂井様は不満・・・ですよね。すいません」
「え!?あ!いや不満なぞ全然!某はもうそろそろ──」
「おう!流石、坂井!こんな所で足止めではなく、このまま更に進みたいとな!?よーしよし!隣の茨木城を攻めようぞ!」
「茨木城 茨木長隆 降伏致す」
「ま、待て!1当てくらいしてはどうだ!?それから降伏したのでも、遅くはないのではないのか!?」
「いや無駄に兵を死なせるには・・・物見の報告で芥川山に爆轟が轟く何かがあると・・・その音が鳴ると大手門も一撃粉砕されると・・・そのような武器を持っている織田軍に立ち向かうなぞとは、誠、愚かの極み」
「そうですか。では武器や何もかも回収させてもらいます。後程、沙汰は出しますので変な真似はしないで下さい」
「まだ死にたくはありませぬ故・・・。我等は後ろ手に縛らなくても?」
「うん?別に縛らなくてもいいでしょう。貴方の主君が三好か誰かは知らないですけど、ここで反乱でもすれば、本当の意味で皆殺しになりますよ。特にあそこの坂井様と柴田様にはお気を付けて。相当に気が立っているようですので」
剣城様は一体・・・。それに末端の兵に至るまでこの士気の高さは何だ・・・?まだ進軍は続くのか・・・?今度こそ俺はここで留守番を・・・。
「あのう・・・剣城殿?そろそろ──」
「あぁ〜、坂井様。もう少し待って下さい。皆に『落とす速度が尋常じゃない』と言われてるから、オレも楽しくなってきましてね。特に徳川軍、浅井軍も疲弊していないようですし、本命の池田城に向かいます。信長様の援軍待たずに開戦します。先駆けは頼みますね」
何ですとぉぉぁ!?俺の苦悩はまだ続くのか・・・。
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