明の船団の加勢

 「ははは!肝付の水兵は大した事がないな!ただの的ではないか!俺は100は殺したぞ?のう?伝七?」


 「ふん。ワシが舟を沈めたからであろう?ワシは動く的を外す事なく沈めておるのだ!つまりワシの方が凄いということだ!」


 「うん?伝七!後ろだ!でかい船が来ている!」


 「な、何!?クッ・・・気付かなんだ!反対に回れ!うん?あれは・・・はおゆーではないか!?」


 「おぉーい!この前のハオユーだ!話を聞いてくれ!!」


 「明の船か?でかいのう。だがこれが肝付の船じゃなくて良かった」


 「そちらに乗り移るが良いか!?良い話を持ってきたのだ!」


 「乗るのは構わないが、怪しい動きをすれば撃つぞ?」


 「ハオユー!どけッ!先日は供の者が世話になったな?私はこの明の船団の長をしている朱華だ!日の本の言葉は難しい故、正しく伝わらないかもしれないが、とりあえずそちらに上がらせてもらうぞ?」


 「伝七?気を許すなよ」


 「当たり前だ。怪しい動きを見せれば殺せ」


 「ふ〜ん?いい船じゃないか!鉄で出来てるのかい?どうやって造るんだい?」


 「ふん。要件を言え。剣城様に『無闇に攻撃するな』と言われているが、怪しい動きをすれば殺すぞ」


 「おぉ〜怖い怖い。じゃあ早速言うわ。貴方達は大隅の国というところと戦を始めたんだろう?薩摩の国側に立っていると見る。尾張の国と薩摩の国が手を取り合った。そうだな?」


 「まあ、今はそうだが?それがどうした?」


 「そんな怖い顔しないでおくれ?私ゃあんた等にとって良い相談をしよう、と思ってね?あんた等、あの大隅の国の主が居る城を攻めるのだろう?他の兵は船の中に居るのかい?」


 「あぁ。下に500人は居る。お前達がよからぬ事を企てようとも負ける道理がない」


 「へぇ〜?そんなに居る割には臭いもしないわね?それに何と言っても、汚れ一つ無い綺麗な船ね?あんた等の主に会いたいくらいさ。こんな綺麗好きな男なら私の旦那に相応しい。なぁ?ハオユー?そう思わないかい?」


 「へ?いやそれは・・・朱華様が御成婚されれば・・・俺は誰に虐げられれば・・・」


 ドゴンッ


 「気持ち悪いニヤニヤ顔を見せるな!」


 ワシは何を見せられているのだ?かつてのお市様と剣城様を見ているかのように思うが・・・。確かに明の女だろうが、剣城様はこんな女を好きにはならないだろう。だが明と伝手があるのは国として見れば大きい。ここは無下にしない方が得策と見る。


 「おい?そんな痴話喧嘩は止めろ。要件を言え。簡潔に」


 「はいはい。せっかちな男は嫌われるよ?男はどっしり構え、女を待つもんさ。じゃあ・・・我が明の船団は、輸送船と攻撃船に分かれている。攻撃船を派遣しましょうか」


 「ほう?我らに与すると?明がか?」


 「勘違いしないでね?明と言っても私は私船で日の本に来ているの。幾分かは国に銭を納めないとやっていけないけど、明とは関係ない。個人的によ?」


 「それでお前達は何を求める?」


 「すぐじゃなくていい。あんた等の主に聞いてからでもいい。このような鉄の船をどうやって造ったのか、少しでいいから教えてほしい。それと相互貿易なんて如何かしら?損得勘定抜きで、本当に少しの手数料で荷を売ってあげる。貴方達、尾張の国の荷も私が買ってあげる」


 「些か聞こえは良いように聞こえるが、そちらの方が利が多いように聞こえるが?我らの船を教えるのは巨額ぞ?」


 「ならば7対3でどうかしら?」


 「しゅ、朱華様!?それは些かまずいのでは!?」


 ドフッ


 「7対3は破格だと思うわよ?」


 「既に相互貿易ではないと思うが?それに舐めているのか?7対3とは我らが明らかに下に見られていると──」


 「私達が3よ!」


 「・・・・・・・・暫し待たれよ」



 「善住坊?どう思うか?確か芳兵衛殿が『明国に船を売りたい』と、申しておったよな?」


 「確かに言ってはいたが、勝手に俺達だけで決めるのは、間違えた選択をすれば切腹ものぞ!?」


 「大局を見よ。明と個人的に伝手があるのは、畿内では居ないのではないか!?しかもあの明が下に出ている。これがいわゆる、ちょんすと言うやつではないか!?」


 「馬鹿か!えいごだろう!?あれはチャンスだ!剣城様がたまに言う言葉くらい覚えておけ!確かにチャンスだとは思うがしかし・・・」


 「ねぇ?まだかしら?あの城の方からまた小舟がやって来てるわよ?」


 「あぁ〜!肝付の奴等めが!大人しくしておらんか!8対2!それ程この船の秘密は大きい」


 「はぁ!?尾張の国の者が明を舐めてるの──」


 ドフッ


 「ハオユー?そいつは要らない。明の宰相の手先よ。どうせ私腹を肥やす為に無理矢理乗せられた者。あぁ〜残念!日の本にて大嵐に遭い、船の修理を買って出たリューは荒波に揉まれて、溺死してしまったわ?」


 「お、おい!朱華!?何を言ってるのか分か──」


 ズシャッ


 「これでよろしいですか?」


 「はい。よろしい!見苦しいところを見せたわね?8対2でいいわ。何なら9対1でもいいとすら思うわよ?」


 「それ程までに船が欲しいのか?いや暫し待て。あの馬鹿共を掃除してくる」



 ビシュンッ ビシュンッ ビシュンッ ビシュンッ


 ズドンッ ズドンッ ズドンッ ズドンッ


 

 「ハオユー!?あれは何!?あんな青銅砲見た事ないわよ!?」


 「はっ。俺も初めて見ました!何か水の弾らしきものが見えますが、確実に小舟に当たり沈没させております!しかもその後、もう一人の男の銃が海に投げ出された者を、確実に倒しています!しかも連射で・・・」


 「これは何としても売ってもらわなくてはならない!ここで私達が大きくなれるかの別れ道!徐階宰相の好きにさせてはいけない」


 「ではあの噂は本当だと!?」


 「あの男は底知れぬ人。皇帝すら操ろうとする人。私は父からこの船団を貰ったけど、その父に濡れ衣を着せ処刑したのは、徐階だと思っている。内閣大学士か何か知らないけど、私は許さない」


 「畏まりました。朱華様が俺を踏み付けてくれるならば、俺はどこまでもお供致し──」


 ドフッ


 「いい加減、その変態は止めなさい!目障りよ」


 「・・・・はい!喜んで!」



 「おう。すまん。待たせたな。片付けたぞ。で、どこまで話したのだったか?」


 「9対1よ」


 「うん?お前達はそれでもいいのか?国として面子とか無いのか?」


 「だからこれは個人的な取り引きよ?末長くお付き合いしたいわね?」


 「分かった。我が主に言おう。優しい方、故に断りはしないだろう。お前達は本当に攻撃船を呼び寄せるのか?」


 「えぇ。だけど攻撃船を出せばとことんやるわよ?そうね・・・私がどれだけ本気か見せましょうか?大隅の国のあの城・・・確か高山城だったかしら?あそこに砲撃しましょう」


 「ほう?なら明も島津家、芝田家に与するという事だな?」


 「えぇ。そういう事ね」


 「分かった。だが我が殿に申し付けるまでは、各々の船で攻撃とする。良いな?」


 「礼儀を重んじるのね?分かったわ」

 




 「半兵衛さん?静かだけど大丈夫です?」


 「だ、大丈夫だ。少々酒が抜け切ってなくて・・・」


 「二日酔いですか!?だからあれ程、薩摩人に付き合わなくていいと言ってるのに。ウコンを飲んで下さい!」


 「いや、誰かが相手せねば親交は勝ち取れぬ。それは私の役目」


 意外にもちゃんと考えてくれているんだな。元は敵だったのに、ちゃんと働いてくれてる事に感謝だな。


 「鈴ちゃん?竹中さんを後方に。戦わないように見張ってて」


 「了解です!」


 「剣城君!もう少しだ!この山を登れば城だ!」


 城の山の麓まで来た。確かにかなり声が聞こえる。というか首首首首首と怨念のように聞こえる。薩摩人ってマジのバトルジャンキーだな。


 城の西から貴久さんの軍、北からは義久さんの軍、南からはオレ達だ。既に勝ち戦の感じに思う。だが油断はしない。変な流れ矢とかで死にたくないからだ。ただ一つ思う。かなり銃を装備してる人が多い。さすが種子島が伝来した場所だなとも思う。オレ達のよりかなり古いけど。


 さて、最後の山登り。頑張りますか。

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