神薬!?禿げ薬!?
「っていうか随分待たせるな」
「そうですね。普通はここまで待たせる事はないと思いますが・・・」
「琴ちゃんは何してるの?」
「どうもこの着物が落ち着かなくて・・・。肌触りなどは快適なのですが、剣城様が出してくれた忍者服?の方が落ち着いてしまいます」
「いや、でも着物も着物で可愛いと思うよ?その青色の着物とか珍しいでしょう?」
「可愛いなんて・・・剣城様!?そんな事言っても私からは何も出ませんよ!?そんな事言うならゆきに言ってあげて下さい!」
「そんな、ゆきさんも菊さんも皆、着物姿は綺麗だと思うよ?金剛君もどこかの国の大将みたいじゃん!?オレは・・・痩せたとは言え、まだ少し腹が出てるからな・・・」
「ははは!そんな剣城様こそ我らの大将ですよ!」
いや普通に金剛君は笑って終わらせたけど、少しくらい『最初よりは痩せましたね』の一言くらい言ってくれよ!?頑張ってるんだぞ!?
「剣城様・・・・」
「ゆきさん?どうしたの?」
「その・・・男前です・・・」
「え!?マジで!?もっかい!もっかい!!言ってくれてもいいよ!?」
「剣城様!御免ッ!(パチンッ!)」
「痛ッ!いや、ごめんごめん。調子に乗りました。ゆきさんありがとうね。どこぞの馬の骨は、社交辞令すら言ってくれないからな?な?金剛君?」
「え?某すか!?ドントシンク…ドントシン…」
どうせなら、この城の外見を見せてもらえればよかったな。時間できたら見せてもらおうかな。部屋は綺麗だけど、入り口の門なんかは朽ちかけていたしな。
「金剛君?帰りにできる限りこの城の写真撮影できる?」
「剛力に言えばこのれべるの城くらいなら──」
「違う違う。この城はこれ!みたいなアルバム作りたいんだよ。まあ一言で言えば趣味だよ」
「はっ。分かりました!撮れるだけ撮っておきます」
色々な本を読ませてるから、英語もボチボチ覚えてきてるな。
「それにしても清洲や岐阜城に比べたら、言葉悪いけどボロいね」
「私もそう思いますが、くれぐれも松平様の前では・・・」
「さすがに言う訳ないよ!もっと修理すればいいのにな、と思っただけだよ。それにあの民家の人達だよ。あれはさすがにね」
「不殺と言われなければ対処できたのですが・・・」
「無闇に殺してはいけないよ」
「お待たせ致しました。殿の準備が整いました。こちらへ」
「分かりました。金剛君、ゆきさん。荷物を」
廊下を通り隣の建物に呼ばれ部屋に案内された。途中所々部屋を見たけど汚くはないが、何かやっぱ城が疲れてるような気がする。いや人間じゃないし建物だから、勿論表情なんかは無いんだけど何だろうな。
「芝田様、参りました」
「入ってもらいなさい」
「失礼しま・・・・」
部屋に入ると、さっきの3人の男の人達がボコボコな顔になって、本多さんと家康さんが居た。
「いや遅くなって申し訳ない。この者達が粗相をしたと聞いてな?岡崎にわざわざ来ていただいて、内政の手本を見せていただくと言うのに、此奴らときたら・・・」
「いやもういいですよ。それにこんな顔を見ればさすがに・・・。琴ちゃん?手当を」
「いや、それには及ばない。芝田殿は客人。此奴らなど放っておいても良い」
「いえ、ばい菌が入ってもっと大事になる可能性が──」
「剣城様?ここは松平様の家です。従いましょう」
なんかお菊さんが諭すように言ってくれたけど・・・。確かに他人の家の事だけど治療しなくていいのか!?
「さすが芝田殿。良い配下を持たれている。おい!お前ら!お前らは芝田殿に礼を言い謝れ!二度は無いぞ!?」
「「「申し訳ありませんでした・・」」」
オレは一応謝られたが、何か引っかかるものがあった。まあ気にしてもしょうがない。
「いいですよ。以後、気を付けて下さいね」
「下がれ」
「芝田殿、久しぶりだな」
「本多さん。お久しぶりです」
「これ!忠勝!あまり馴れた口をするでない」
「いや、いいですよ!その方が話しやすいでしょう。松平様も配下のような口調で結構ですよ」
「本人がそう言っているではありませんか!だから殿も良いのです!芝田殿?いや、剣城殿!今宵も例の黒い水を!?」
本多さんはまだ14~15歳くらいで、確か前はコーラばっか飲んでたんだよな!?用意してないから後で出してあげよう。
「用意しておりますよ!後で飲みましょう!それと・・・金剛君?ゆきさん?手土産を」
「はっ。お納め下さい。尾張で作られた澄み酒と醤油です。こちらはとある伝手でご用意した焼き菓子です。それとこれは快適ぐっずなる物です」
「おっ!?何だ何だ!?快適ぐっずとは!?」
「忠勝!ワシより前に出るな!!」
「良いではないですか!な?剣城殿?これはどうやって使うのだ!?」
いい感じの主従関係だな。これが徳川四天王、徳川十六神将、徳川三傑と言われる人か。まだ中高生くらいの年代の人だけど、オーラは本物だわ。体も既にオレくらいの身長だしな。
「これはまたその話し合いの時に、実演しながら教えますよ。こっちのポンプの方は髪の毛を洗う薬でございます。金剛君?説明を」
「本多殿?ここからは某が」
あまりピンときてなさそうだが、食い付きは良さそうだな。
「なんとッ!?禿げに効く薬になると!?」
「殿ッ!!!今聞こえましたぞッ!!髪の毛の神薬を頼んでいただいたので!?」
おっ!?誰かいきなり入ってきたぞ!?確か・・・酒井忠次さんだったよな!?
「忠次!控えろ!剣城殿の前ぞ!」
「いやなりませぬ!某・・・某・・・忠勝や康政のような若さはござりませぬ。武こそ負ける道理はござらぬが、些か髪の毛の方が・・・」
うん。髪の毛は大事だ。よく見ると剃って髷を作ってる訳じゃなさそうだ。あれは・・・自然と髪の毛が衰退してるやつだ!
「ぷはははははッ!!!」
「忠勝ッ!?貴様ッ!我を笑うか!?」
「酒井殿は気にし過ぎである!禿げれば潔くすれば良いだけでござる!ははは」
いや忠勝さん?貴方はまだ若いからいいけど、髪の毛を剃るのはかなり勇気要るんだよ!?オレも少し気にはしてるけど!?
「貴様っ!笑うな!髪の毛を見て笑うな!!!」
本当にいい関係だな。織田とはまた違う感じだな。
「配下が申し訳ない。しゃんぷーとりーとめんとは今宵使わせてもらいまする。どれ程、滞在予定で?いや、追い出す訳ではございませぬぞ」
「特に決めていません。用があるなら早目にとは思いますが」
「いえ。ここ岡崎は戦、内乱続きで、料理ご意見番の芝田殿を唸らせる料理を作れるかどうかと・・・」
「いやいや、そんな事気にしてませんよ!ある程度の素材は持ってきてますので、料理番の人達に渡しておきますよ!」
「いや忝い。まずは、疲れを癒やしていただきたい。どうも剣城殿は風呂が好きだとか?」
「よく知ってますね!?中々風呂には入れないので苦労してるんですよ」
「ははは。ワシも戦の時は泥や血など付いて、夏なら汗なんかも気になってな?着いて来て下され」
いや、ちょっと待てよ!?本当に間者が居るのか!?ゆきさんまで目がマジになってるぞ!?
「これですぞ!」
案内されたのは外にある小さな建物の中だった。なんかこの建物だけ綺麗だな?
「え!?まさかサウナ!?」
「おっ!?剣城殿は蒸し風呂を知っているので!?」
いやこれは少し形が違うけど、下から蒸して入るサウナのような感じじゃないのか!?
「これに似たような物は知っています!いや!流石です!これに入らせてもらえるのですか!?」
「その通り!男同士!裸の付き合いと参りましょう!なにぶん、丁度二人しか入れませんからな?ははは!」
オレは何故か悪寒が走った。オレの貞操か!?
その後は本当に褌一丁になり松平さんが先に入り、『横に来い』と言われたので身震いしながら入る。
「えっ!?めっちゃ気持ち良い!」
「ははは!良かった!良かった!少しばかり銭はかかりましたが、中々に良い物でしょう?」
「これは素晴らしいです!サウナと言ってもいいですよ!この横にある何の草か分かりませんが良い匂いです!」
「そこまで言われると作った甲斐がありますな?何せ今回の為に作ったような物ですからな?ははは」
え!?オレの為だけにってこと!?確かにこの建物だけ真新しい感じはするけど・・・。
「これはまさか・・・」
「多分思っておる通り。剣城殿が来ると聞いて一晩で作り上げた物。存分に味わってくれて結構!」
いやこれは礼の方が大変だ。さぁ、何を言われるか・・・。
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