服部半蔵さんでした
岡崎城までの道のりはそう遠い事もなかった。1時間くらいだろうか?走るとまばらに家が見え城も見えてきた。
「なんかこの辺の人達疲れているし、畑も荒れ放題だね」
「そうですね。尾張や岐阜は剣城様が来てから、徐々に変わり始めていますからね」
「それにしてもやはり変な目で見られてるよね!?寺も多いな」
「大黒剣は珍しいですからね。多少は・・・。三河は宗教武家が強い地域ですからね」
「ちょっとここで休憩しようか。ゆきさん、琴ちゃん、大丈夫?はい、これスポーツ飲料ね」
「ありがとうございます。大丈夫です」
「私も剣城様と遠征は初めてで楽しみです!」
ゆきさんは旅行気分なのかな?だからニコニコしてるのかな?
「まあ、戦じゃないからね。よければ観光して帰ろうとも思ったけど・・・。そんな感じの場所じゃなさそうだよね」
「剣城様、老人がこちらに近寄って来ます。防御陣!」
「何奴かッ!?ここに座(おわ)すは織田家、 料理ご意見番!芝田剣城様なるぞッ!」
いや金剛君・・・。名乗りはいいけど、ご意見番とかカッコ悪いからやめてくれ・・・・。
「いや、大丈夫だよ。金剛君も琴ちゃん達も下がって」
「いやでも・・・」
「下がりなさい」
「も、申し訳ねーです。お武家様・・・良ければ食べ物を・・・」
「あぁー食べ物ですね。なら米を──」
「剣城様、なりません」
「え?何で?」
「この方達には申し訳ないですが、ここでこの老人にお渡ししますと・・・周りをご覧下さい。金剛!油断するな!」
お菊さんに言われ周りを見ると、気付けば痩せこけた人達に囲まれていた。
「お武家様!」「武家殿!」「どうかお恵みを」
安易に一人に施しをすれば皆にか・・・。松平さんは何やってるんだよ!!
「お菊さん?飴玉一つずつ皆に配ってあげて。それ以上はしなくていいから。オレのせいでごめん」
「いえ。了解致しました」
「皆の者ッ!ここに座す芝田剣城様は、必ずやこの地にも恵みを齎す事を、お前達の殿に上奏するであろう!今はこれだけしかできぬが一列に並べ!」
「たったこれだけ・・・」「お前達はいい身なりなのにこれだけか!!?」「もっと寄越せ!!」
ヤバイ・・・。どうしよう。
「剣城様!?どうされますか!?」
常に戦乱に巻き込まれ飢えてる状態で、身なりの良いオレ達が少人数でここに居たら・・・そりゃ襲うよな。しょうがない。
「琴ちゃん!ゆきさん!金剛君はすぐにイージスに!お菊さんは颯号に!煙幕花火で突破します!」
そして、ボックスから取り出した芳兵衛さん作の煙幕花火に火を点け、逃げようとした時に三人の中年の男が大黒剣を、思いっきり殴ってきた。びくともしなかったが、その時の顔は獣のようだった。
「待て!」「逃げるなッ!!」「食い物を置いていけッ!」
「剣城様、大丈夫でしょうか!?」
「なんとか大丈夫だけど、あの三人にはビックリしたよ。ノアなら危なかったな」
「無事で良かったです!」
「とりあえず城まで止まらずに行こう。この地はダメだ」
その後は休憩無しで岡崎の方へ向かった。城が間近に見えて来た頃に、3人の武士らしき人が待ち構えていた。
「そ、其の方は織田家、芝田剣城殿か!?」
「そうで──」
「剣城様、某にお任せを」
「出迎えご苦労であるッ!今しがた城より四半刻前の家々で休憩した折、岡崎の民より攻撃を受けた!難無く我らは突破したが、この落とし前はどうしてくれるッ!」
「なっ、何を!?そんな事我らが──」
「松平殿は、
「貴様ッ!下手に出ておれば付け上がりやがって!」
いや、金剛君どうしたんだ!?こんな偉そうにしなくてもいいんだけど・・・。
「其の方らは、このお方が何をしにわざわざ遠路遥々、岡崎まで来たか分からぬのかッ!?少量だがこの国にも入ってきているだろう、澄み酒、醤油、イチゴなどはこの方が作っておるのだぞッ!」
「ふん!そんな物、我らも作り方が分かれば造作もない!」
「ではその作り方は誰が教えてくれるのであろうな?」
いやだから金剛君大丈夫か!?
「使者風情が!黙って己らは我らに作り方を教えればよいッ!」
この言葉でオレの何かがキレた。なんならこっちが悪かったとまで思っていたが、教えられて当然、作り方が分かれば簡単と・・・。
「金剛君?もういいよ。下がって」
「はっ」
「誰か名前は知りませんが、よくもまあそんな図々しく言えますね」
「織田の何者か分からぬがそれがどうした!」
「先触れである程度は伝えておりますが、教えられて当たり前と簡単に言えるその配慮の無さは、底が見えますよ」
オレがそう言い、一人が鞘に手を掛けると城の方から一人の男が颯爽と現れた。瞬間に目の前の男3人を鞘で殴った。
「貴様ら!何をしているのだ!殿は芝田殿を丁重にお迎えしろと言われたではないかッ!剰え己らの境遇を知って、裏切り者の汚名を晴らさせてやろうとした!殿の恩を仇で返すかッ!?」
「いえ!それは・・・」
「もう良いッ!城に戻り沙汰を出す!大人しくしておけッ!芝田殿、申し訳ない。お初にお目に掛かります。某、服部半蔵と申します。家の者が御無礼を・・・。何ですか!?その馬は!?」
この人が服部半蔵さんか!?あの忍者の!?大黒剣にびっくりしているな。
「貴方があの有名な服部様でしたか!握手!握手をお願いします!!これは私の乗り物で大黒剣と言います」
「え!?大黒剣ですと!?それに某が有名ですと!?」
「ちょ、ちょっと剣城様!?」
「お菊さんもいいからいいから!皆、握手してもらいなさい!」
「何が何やら分かりませぬが・・・。こんな汚い手で申し訳ない」
「いえ、いつか話す事があれば必ず理由を言いますので!では案内お願いします!」
「はぁ〜・・・。ついてきて下され」
「「「服部様。お帰りなさいませ」」」
「うむ。織田家、芝田殿だ。丁寧に致せ」
「服部様、ありがとうございました」
「いえ、某は先程の奴3人が許せないのであります。恐らく我が殿も烈火の如く叱り、斬首を申し付けるやもしれませぬ。当然の事でしょうが、某はそれすら生ぬるいと思いです」
いやさすがにそこまでではないけど・・・。けどこの時代なら、ああいうのは当たり前なのかな。
「いえ、私はそこまで気にしてませんので構いませんよ。この土地が豊かになり戦乱が無くなれば、変わっていきますよ」
「いやそれでは示しが・・・。とりあえずこちらの間でお待ちを。'金剛様、菊様、ゆき様、琴様'もごゆるりと」
服部さんがそう言い消えた後、金剛君達の顔が変わった事に気付いた。
「怖い顔してどうしたの?」
「いえ、不自然に思いませんでしたか?あの方は菊は剣城様がお呼びしましたが、我ら全員は名乗りすら上げてませんのに、服部殿は我らを知っていました」
「確かにそうだね。それが?」
「我らを知っている。近くに間者が居るという事です。もしくは商人などに名前を聞いたとかも考えられます。さすが伊賀者だけあります」
「金剛!この地にて剣城様からは離れるな!厠の時もだ!女の私はそこまで剣城様に付きっきりになれんッ!」
「了解」
いや皆、何そんな怖い顔になるの!?なんなら金剛君じゃなくお菊さんに付きっきりに・・・。トイレの時も風呂の時も・・。ゲフンゲフン。
「失礼致します。何も無い所ですがもう暫しお待ち下さい。白湯にございます」
「ありがとうございます」
「剣城様、私が毒味を。琴?一応準備しておいて」
「いや、ゆきさんがそんな事しなくても・・・」
「いえ、これは大事な事です。剣城様にもしもの事があれば・・・私は・・・私は・・・」
ゆきさんどうしたんだ!?もしもの事なんか何も無いよ!?ゴッドファーザーが作ってくれた体だよ!?
「ゆき!任務中だ」
「菊様、申し訳ありません。では・・・」
ゴクッ、ゴクッ。
「琴ッ!タイムは!?・・・・30秒・・・・120秒!大丈夫です!」
「さっ、剣城様もお飲みになって下さい」
いやあれは何なの!?少しカッコイイとは思ったけど警戒し過ぎじゃない!?
「致死性の量を混入されれば、今の時間で症状が現れます。少量だとまだ分かりませんがまずは大丈夫です。清洲に帰ってから剣城様も検査します」
「え!?そこまでしなくていいよ!?それによくそんなに琴ちゃんは知っているね!?てか、そんなゆきさんがしなくていいから!これからは、そんな無茶はしたらダメ!」
「いえ、私にはこれくらいしか出来る事が・・・」
「だからダメだから。何かあってもとりあえずは大丈夫だから!それでもし、ゆきさんに何かあればオレは一生立ち直れないし」
「ありがとうございます。剣城様・・」
こんな事しなくてもいいくらいに、松平さんと仲良くならないといけないな。
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