久しぶりの野田さん
薩摩の夜は長い。大事な取り決めの話が終わり、皆が居る大広間に移動した。
信長さんにはオレが持って来たコーラ。慶次さん達は『底が無い男達』と薩摩隼人達の事をそう評して、早々と充てがわれた部屋に戻った。飲み比べでは絶対に勝てないと分かっているからだ。
初めて組の河尻さんや利家さん、佐々さんなんかは、貴久さんの家臣の伊集院忠倉さんって方や、種子島時堯さん達と飲んでいる。
森さんが作った尾張酒を飲み干す勢いで飲んでいる。かれこれ10樽程持って来たんだけど・・・。これを1日で飲み干せば、あの温厚な森さんブチギレ案件になりそうだ。
「皆の者、聞けッ!細かい取り決めはまだだが、おいどんと織田殿は友となった!生まれや歳は違えど名に果てはない!もし織田殿が窮地に陥れば島津兵児は何人たりとも恐れず、何としても駆けつけよ!」
「「「はっ!!!」」」
いや〜マジでカッケェっす!名に果てはなし!よし!今度何かの時にでもオレも言ってみようかな!?
「うむ。皆のような酒はワシは飲めぬが、其方等の日々の晩酌ができる程には、酒造りに勤しむか」
「殿!?では貿易を!?」
そう口を挟んだのは山田有信さんって方だ。貴久さんの側近中の側近。最初に来たオレを怪しまず、えのころ飯を『無理に食わなくていい』と、助け舟を出してくれた人だ。
「その予定である。此度もおいどん達の為に数々の品を持って来てもらった。礼には礼を返すのが島津である!よって一時、義弘を尾張の国に遣わす事にした!有信!其方は若いがおいどんの内を分かる1人!行ってくれるか?」
「はっ!喜んで行きましょう」
「すまない。後1人・・・新納!」
今、名前を呼ばれた新納忠元さん・・・この人は島津忠良・・・貴久さんのお父さんに仕える人だ。ちなみに加治田という場所で隠居?してるらしく、オレも会ってはいないが、なんでも明や琉球との交易は全て、この忠良さんが実権を握っているらしい。
「はっ」
「新納・・・其方は若き薩摩兵児達を教育したいと言っておったな?尾張の国では小さい子等は、無償で算術を教えておるらしい。この意味が分かるな?」
「はっ。おいも教わって来いと!?」
「うむ。織田殿は今しがた了承してくれた。長さや時間なども基本を決め、それで動いておるらしい。それを其方が習い、薩摩に持って帰り薩摩も合わそうと思う。おいどんは少し歳を取り過ぎた。次代の薩摩兵児達の事を考え、其方も行ってほしい」
「分かりました。大役、果たさせていただきます」
「3人で良いですかな?」
「畿内で活動するのにどれ程、銭が掛かるか分からない。まずはこの3人でお願いしたい」
「無償と言うのは島津殿の沽券に関わりますからな・・・そうですな。この3人の日々の暮らしに関しては、我が織田家が持ちましょう。ただ、尾張は娯楽がここ最近発展していましてな?そこで遊興するには少し銭が掛かるでしょう」
パン パン
信長さんがそう言い手を叩いた。すると利家さんが大きな木箱を持ってきた。
「ふむ。これは?」
「これは我が領内で作った新しき銭である。帝への根回しは完璧である。後は──」
「根回し・・・ほうほう。それで島津がこの銭を使い普及させよ。とな?」
「はは。流石は島津殿だ」
「ちなみにこれで何が出来る?」
「剣城!教えてさしあげろ」
大事なところでオレかよ!?
それからお金の価値をざっくり教えた。銭の呼び方を円と教え、100円、500円、小判、大判だ。小さいお金も既に出来上がってはいるが、今回は持ってきていない。
基本通貨という事を言い、全ての銭に金を含ませ、本来の価値があるように言った。
「尾張ではこれより下の銭もありますが、今回はこれだけ持って来ております。値段としては5000万円。一つの箱に1000枚の大判が入っております。それを5箱。これを例の城の代金とします」
「剣城君!?もう少し分かりやすく!」
「分かってます。少しお待ちを。今回の友好の品としてお持ちしたこの尾張酒ですが、1樽で尾張では、大判1枚で取り引きされております」
「ふむ。では1万円とやらになるって事かね?」
さすが教育熱心な新納さんだ。まあこれは現代なら小学生でも分かるよな。
「その通りです」
「この酒が大判1枚だと!?」「これ程透き通った酒がただの大判1枚・・・・」
「「「「「ゴグリッ」」」」」
いやいやあんた等今までも今も、しこたま飲んでるだろ!?唾飲む程かよ!?
この部屋に居る人達の声を聞きながら話を続ける。
「ちなみに他国に売る場合・・・越後と呼ばれる国ではどうもこの酒がかなり好評でして、1樽5貫でも買うそうですよ。この言い方なら価値が分かりやすいでしょう」
「な!?5貫とな!?べらぼうに高いな!?」
うん。オレもぼったくり過ぎだと思う。塩屋さんが話を纏めて、上杉とそういう取り引きしてるから任せてはいるけど。よく上杉は怒らないなと感心すらしてしまう。
まあそんなに高く買い取ってくれても、古い銭は今は尾張では使い道が無く、再利用するだけだからな。堺なんかで粗銅を買うのに使うくらいだ。まあ国友さんのお小遣いだな。
「うむ。おいどんもこの酒はそのくらい出しても良いと思う。甘くも無く雑味も無く濁りも無い。ただ少しシャムの酒よりは弱く感じるが、だが、それが良い」
いやこれで弱いんか!?25度はあると思うぞ!?しかも上杉に共感するのか!?マジで酒好き過ぎだろ!?
「島津殿も多少は分かってくれたようで」
「うむ。これは暫し勉強せねばな?さぁ!難しい話はここまでにしよう。なんせ初日から難しい話をしてばかりでも、いかぬであろう。野田君!入りなさい」
え!?野田君って!?野田さんだろ!?
「剣城様、お久しぶりにございます」
「あっ!野田さん、どうも!」
「大殿様もお久しぶりにございます。本日のデザートをこの志布志の料理人と作りました。サツマイモプリンケーキなる物を監修致しました」
「うむ。相も変わらず実に見た目の良いケーキじゃ!」
いやケーキに慣れ過ぎじゃね!?本来の時代なら、まだまだケーキは登場しないんだぞ!?
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