土産はかすていら?

 次の日、合同で準備をする。まるで遠足に行くかのようなテンションだ。


 「おい剣城?薩摩と言えば酒が美味い所だったよな?」


 「未来ではそうですね。後サツマイモなんかも有名かな?」


 「ふ〜ん。それで土産なんだが何にするのだ?」


 「いやそりゃもう酒しかないでしょ?薩摩人なんか酒ってイメージしか無いんだよ。それにオレの技で買った鮭、姿鏡、砂糖なんかでいいかなと思ってる。慶次さんは何か贈ったら良いと思う物ある?」


 「本来ならば刀とか贈るのだがな。まあ俺達らしいっちゃらしいな。それでいいと思うぞ?ノア嬢とかはどうするのだ?まさか向こうで歩きとかはないよな?」


 いや普通に皆の馬なんか乗せられないから、歩く予定だったけど・・・。


 「我が君?ノア嬢が表に居りますぞ?」


 "剣城っち♪あーしも連れてってくれるのよね?"


 "悪い。ノアは船に乗れないから留守番なんだ・・・ごめん"


 "あーしこんな事できるよ!"


 シュ─────ン


 「え!?小さくなった!?」


 「確か前も身体を大きくしたり小さくしたりしてたな?流石、ノア嬢だ!俺の松風もそんな風にできるのか?」


 オレの驚きを他所に、ノアは喋りこそしないが頷いている。ってかもうこのメンツなら、喋っても良さそうに思うけど。もう何が起こっても驚いたりはしないし。


 「ロザリーヌ!!お前も小さくなれるよな!?なっ!?我が愛しのロザリーヌ!!答えてくれ!!」


 パッパカパッパカ


 「待ってくれ!!ロザリーヌ!!!」


 小川さん・・・ロザリーヌの主なのか!?逃げられてるぞ!?むしろ、擦り寄り過ぎて敬遠されてるんじゃないのか!?


 "眷族は皆、小さくなれるの?"


 "あったりまえだよ?あーしの眷族だよ?"


 いや、馬が小さくなったり大きくなるのは当たり前じゃない、と思うんすけど!?


 それから各々自分のリュックに荷物を詰め込み、オレのボックスに収納してあげた。俺は米やらジュース、贈り物や水、忘れちゃいけないトイレットペーパー、缶詰やラーメン、お菓子などを買いまくった。


 「じゃあ金剛君?俺の居ない間の芝田家の事は頼んだよ?剛力君?船と護岸工事頼んだよ?ゆきさん?小見様とも連携して奇妙君と温泉や両替所、商いの事頼んだよ?」


 「はっ。お任せ下さい!」


 「剣城様?帰って来た時には驚くように頑張ります!」


 「剣城様?必ず御無事に帰って来て下さい!」


 「おう!ゆき・・・奥方!剣城は俺が守ってやる!任せておけ!」


 「剣城様?」


 「あぁ。お菊さん?どうした?」


 「小見様からでございます」


 お菊さんが持って来た木箱を開けると中には手紙が入っていた。書かれている事は単純明快。


 【剣城殿の武運長久を祈っております。御無事に帰っていただきますよう。そして、薩摩で何が起ころうとも、それが仮に織田に不利益になろうと一切の些細を許す】


 それなりに嬉しい手紙っちゃ手紙だな。小見様の後ろ盾みたいなもんだな。


 「それとこれを」


 「うん?お守り?」


 「沢彦様が48時間読経された御守りになります。土産はかすていらが良いそうです」


 いやいや重いよ!?メンヘラ並みに重いよ!?しかもカステラだと!?別にここでも食べれるだろ!?そんな人だったか!?


 「分かったとだけ伝えてくれるかな?」


 「御意」


 「よし!じゃあ行ってくるよ!!」


 

 皆で那古屋の海に向かう。やはり皆、気分は高揚してる感じだ。


 「あっ、剣城様?本日出航されるので?」


 「吉蔵さんの配下の方だったですよね?」


 「そうです。覚えていただきありがとうございます!」


 うん。名前は忘れたけど顔だけ覚えてるよ?


 それから信長さんの馬廻りの人達に挨拶し、小さい船で沖まで運んで貰う。次に帰る時はこの船も接岸できるように、剛力君達が何とかしてくれる筈だ。


 オレは少し手こずったが、なんとか縄梯子で乗り移り、説明書通りボタン一つで錨を上げる。


 「よし!出航!!!」


 「おう!構わないぞ!オレは一杯やってるぞ!」


 チッ。ここに来ても慶次さんは酒か!?


 「本当にこのウコンは良い!何杯飲んでもこれを飲めば酔いから覚めるからな!」



 あのウコンは今や酒飲み達の必須アイテムだ。以前、森さん達が造った味もクソも何も無い、純粋に蒸留し沸騰しない程度に熱して蓋に付いた水滴を戻し、と他にも色々やっていたが、かなり強い酒を造り試飲をさせてもらった時の事だ。


 「強ッ!!?森様!?これは強過ぎじゃありませんか!?」


 「そうか?大した事はないと思うぞ?ヒック・・・」


 森さんも飲んでいて、受け答えは普通だが顔が真っ赤なのだ。そして次の日も酔いが残り、しんどそうなのでGarden of Edenで調べて買ってあげたのが、この《神様印のウコン聖》という名前の飲み物?薬?だ。


 何でも神界でも有名らしい大酒豪、バッカスさんって人?神?が作ったらしい。たちまちに酔いが覚めるとの事で、試しに渡したら『秒で酔いが覚めた』と言っていたので、今はたまに暇潰しで小見さんが営業している商店に、一つ1000円で売っているのだ。


 飲み過ぎに注意するようにとの意味で、値段設定を高くしているのだが、普通に名のある人達は買っているのだ。



 「慶次さん?だからと言って飲み過ぎはだめですよ?」


 「ははは!分かってるって!」


 オレは操舵室にて発進させる。航路なんか分からない為、モニターにある自動操縦機能を使ってだ。場所は坊津という場所に勝手になっていた。うろ覚えだが確か、倭寇や遣明船などが入れるくらい栄えている港だった、と覚えている。


 そしてモニターを見て驚いた事がある。到着時間なのだが、何と自分達で決められるみたいだ。最短15分とあり、そこから1時間、2時間……と最大240時間まであった。


 早いに越したことは無いが、折角の船旅なので24時間後に設定した。後は決定ボタンを押すだけだ。


 「ポチっとな」


 ブォォォォ─────ン


 船は加速し揺れなんかも全然ない。なんなら陸地を走ってるかのように動いている。ちなみに皆の馬は本当に小さくなってもらい、下の居住区域に一塊りになってもらっている。


 ノアが言うには『小さい身体の方が低燃費であまり食べ物が要らない』らしい。それでも世話役に焼いてもらったであろう、ニンニクたっぷりの焼き肉を食べている。隼人君に皆の馬は任せてるから与えられている。


 本当に肉食の馬は初めてだ。あんな口で甘噛みされたくないな。


 "剣城っち♪これ美味しいよ!食べる?"


 "いやいいよ。ノア達で食べてくれ"


 "キャハッ♪"


 ガジガジガジガジガジガジガジガジガジガジ


 "痛い!臭い!何で甘噛みすんだよ!?"


 "え?何となくだけど?"


 いやいや、何となくで甘噛みしてくるなよ!?くっせ〜・・・。


 「流石、剣城様の愛馬ノア嬢ですね?剣城様と一時も離れたくないようですな?」


 「うん。確かにそうですねって・・・・は!?何でここに居るのですか!?」


 普通に場に溶け込み過ぎて気付かなかったが、竹中さんが居た。


 「ほほほ!私に掛かれば造作もありませんよ?」


 「いやいやいや!大丈夫なのですか!?」


 「大丈夫も何も他の方は知ってましたよ?てっきり剣城様も私の変装くらい気付いていたのかと?いやまさか・・・ぷっ!いや失礼」


 クッ・・・竹中が!!!馬鹿にしやがって!!海に落としてやろうか!?


 「薩摩に行くのでしょう?この中で初対面でも失礼ないよう、相手と話せる方はおりますか?」


 いや確かに慶次さんは・・・。


 「おい!隼人!この星桂冠飲んでみろ!松風にも少し飲ませてもいいぞ!」


 あんなのはダメだ。相手がブチギレる。小川さんは・・・。


 「おう!次郎左衛門!ワシのハルモニアのスーツを足置きにするな!」


 「ならば金輪際、三左衛門の飯は作らないぞ?」


 「おう!やれ!海の上の決闘だ!今すぐ雌雄を決せ!!」


 小川さん、大野さん、野田さんは更にだめだ。すぐに戦になりそうだ。


 鈴ちゃんや鞠ちゃんは・・・。


 「私は戦う衛生兵よ?鞠もちゃんと銃の整備しなさいよ?」


 「・・・・もうしてる」


 「お!?鈴達は分解作業が早くなったな?」


 「馬鹿にしないでね?杉谷様だろうが馬鹿にしたら風穴あけるわよ?」


 「こら!鈴は『口の聞き方に気を付けなさい』と何回も言っているだろう?」


 「舐められない為です。望月頭領も命令するなら、隠れて食べてるバナナラスクを取り上げますよ?あれは糖尿病の元です!」


 「いや・・・それは・・・」

 

 「あっ!?頭領!?隠れて菓子持って来ておるのですか!?はぁ〜なんとまぁ・・・」


 「貴様!小泉!貴様も剣城様に隠れてブラックトルネードチョコを食べてるの知ってるのだぞ!?」


 「なっ・・・何故知っておるのですか!?」


 「ふん。甘いわ!甘いのはチョコだけにしておけ!!」


 1番だめな人選だ。


 「悔しいけど居ません」


 「ほほほほほ!!私しか居ないでしょう?いやぁ〜!私が'たまたま'船に乗り込んで'たまたま'出航してしまいました。らっきーだったですかね?まあラッキーでしたね?」


 クッ・・・またオレがたまに話す英語を覚えやがって!!


 まあ実際居てくれて良かったわ。やたら、たまたまを強調して言ってくるところがムカつくけど。


 そんなこんなで始まった船旅・・・どうなる事やら。

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