那古屋に帰投
志布志の港町に今は来ている。そう、帰る為だ。少々荷物が多い為、何回も小舟での往復だ。しかもなんと、島津貴久さん自らお見送りしてくれるみたいで、来てくれている。
これがどのくらい凄いことかは分からないが、貴久さんはそうそうこんな事しないらしい。
「織田殿。ゆっくりもさせられず、バタバタさせてしまいましたな?すまない」
「なんのなんの。角力や酒宴、領民の姿を見れば如何に薩摩が良い治世か、分かるもんです。ワシも見習わねばなりますまい」
「ははは。世辞でも嬉しい事よ」
「これより、大型船の造船に力を入れましょう。早急に定期船を組み、お互いが互いに利のある商いを致しましょうぞ」
「うむ。船に関しては織田殿頼みになってしまいまするが、よろしくお頼み申す。義弘を存分に使ってやって下さい。山田!新納!義弘を補佐してやれ!島津の名に恥じぬ行いをするのだぞ?」
「「はっ!お任せ下さい!!」」
各々が別れの挨拶をしながら、オレはドンペリ操舵室にて操作をする。錨を上げてボタン操作をするだけだが。
ドラマの一部分のような別れをしていたのは、山田さんだ。奥さんと人前だが熱い熱いキスをしていた。武家社会の中、周りを気にせず奥さんに一途とは羨ましい限りだ。
「お千!お主にだけ時間を取られる訳にはいかぬ。分かってくれ。よし!次はお瀧!!………次は……次は……最後はお清!お前は妻の中の妻だ!安心しろ!こんなに大きな船だ!無事に尾張国に着く!」
ふん!この人もプレイボーイか!!?何で妻がこんなに居るんだよ!?皆々に熱いキスしやがって!!しかもこれまた奥さんが皆、可愛い系ときた!羨ま・・・けしからん!!
「剣城様!!!うんまっ!うんまっ!」
オレの名を呼びながら投げキッスをするのは・・・にしさんだ・・・。
「おい!剣城!にし殿がお主を向いておるぞ!応えてやらぬか!!」
いやいや、何でここで信長さんが気付くんだよ!?
「ははは!にしめ!剣城君の事が気に入っておるな!年増だが器量のいい女だぞ?どうだね!?」
いやいやどうだね!?じゃねーよ!義弘さん!?
「ははは!まあまた仲良くなればですかね!?ははは!」
笑ってごまかすしかない。安易に冗談でも言ってしまえば、トントン拍子に話が進むのが戦国時代だ。
「うむ!全員乗ったか?荷物は積み終えたか!?」
「はっ!滞りなく!島津様の足軽達がよく働いてくれました!」
「そうか。遠藤!貴様も島津殿の兵を見習え!」
うん。ここでまた始まる遠藤さんイビリだ。遠藤さんは1番凄いと思うよ。
「では気を付けて帰りなさい!織田殿!近々必ず!!また会おうぞ!!」
「うむ!約束だ!必ず!今度は帝の前だ!!」
うん!?帝の前!?何!?
オレは疑問に思い、信長さんの方を向くが目を合わせてくれなかった。オレにも秘密の事かな?2日目の夜は2人で話し合い、白熱してたとは聞いたけど色々取り決めをしたのだろうか。
「動いた!!誠、動いたぞ!!?」
「ふん!何の此れしき!!」
新納さんは動いた事に驚いているが、山田さんは何かと戦う前なのかな?ビクついているのが分かるぞ!?
「ははは!面白い!まあとりあえず・・・島津殿よ。こちらに」
信長さんが案内したのは船室だ。
ちなみに『最短時間で帰れ』と言われている。目的地は那古屋だ。短くて早くてバタバタした旅だったと思う。
船内で話し合われていた事は、岐阜城に暫く寝泊まりしてくれとの事。早急に島津邸を建てるから待ってほしいと。そして必ず毎朝、岐阜時間・・・例の時計台の時刻で9時から始まる沢彦和尚の算術、読み書き授業に半年は皆勤で出てほしいとのこと。
それが終われば後は好きにしていい。と、かなり自由な事を言っていた。
「此奴の元で、我が領民がどのようにして過ごしておるか、気が済むまで見聞するといい」
「はっ。ありがとうございまする。なんでも娯楽が多いとか聞きましたが?」
「うむ。焼き鳥屋に駄菓子屋もあるぞ?おぉ!忘れてはならぬ!織田印のカレー屋に是非行ってもらいたい!ワシ自ら発起人となり作ったカレー屋なんじゃ!」
「かれい屋ですか!?」
「違うぞ!カレーじゃ!昨日食べてもらったあれじゃ!あれも作り方一つでだいぶ味の変わる飯よのう」
オレはまたかよ!?と思っている。まぁ確かに飯屋は増えたと思う。焼き鳥屋なんかは信長さんが許しを与えた人を筆頭に、各地でブームとなっている。
八兵衛村長を筆頭に今や各地で鳥の養鶏場を作り、かなりの高給で奔走している筈だ。特に滝川さんが治めている北伊勢の方なんかは、海産物ではなく鶏肉の方が消費が激しいらしく、急ピッチに養鶏場を作っているとの事。
だからなのか、剛力君が休んでいるところをオレは見た事がない。
駄菓子屋に関しては、オレがネットスーパーにて超超超大人買いした。一つ高くても200円までのお菓子をダース買いして、清洲城近くの村・・・始まりの村だな。まあオレが最初に行った村の、例の家の中心にある巨大な倉庫に山積みしてある駄菓子を、これまた信長さんが許可を出した人が商いしているお店だ。
とにかく、安さ重視で売る事をお願いしている為、これも連日大盛況だ。未来で駄菓子屋と言えば子供が集う所だったが、戦国時代では大人も集う所だ。
そして、この二つの仕事に携わっている人達に言える事は、誰もが皆カレーが好きという共通点がある。
信長さんは言ってなかったが、オレは未亡人さん達が経営している、生活雑貨のお店なんかを推したい。全てオレが出した物ではあるが歯ブラシや石鹸、シャンプー、どこぞで商いをしてお金がある人達なんかは、トリートメントなんかまで購入できるお店だ。
ここは完全にオレの肝入りの店だ。【生活雑貨】とゆきさんと看板を作ったが、気付けば例の村で収穫した野菜、果物なども売り出し、何でも屋さんぽくなってはきているが・・・。
「義弘さん、まあ帰ればオレが案内しますよ。織田印のカレー屋は本当に美味いですよ。遠藤さんのお兄さんが経営してるのですよ」
「なんと!?武士が飯屋とな!?」
「当初は尾張の皆もそういう反応でしたが、そうも言えないくらいの盛況振りですからね。そうですよね?遠藤さん?」
「そうですな。兄者は最初こそ『笑い者になる』と言っておりましたが、お館様自ら指揮を取るとなると、状況が反転しましたからな」
「うむ。島津殿よ。覚えておくがよい。武士なら飯炊きをしないとか、武士だから下世話な事をしないとかは、織田家には無いと思ってくれ。状況になれば織田家では身分は関係ない」
「はっ。肝に銘じておきます」
義弘さん達は信長さんがどんな人なのかを、分かってきた感じだな。あまり深く突っ込まない。答えは単純に言って、後で補足を聞いてる感じだな。人を見る目が鋭いな。
そんなこんなで1時間もしない内に、那古屋が見えてきた。
「おぉ!もう那古屋か!」
「少ししか経っておりませんが懐かしく思いますな!」
いやいや、小川さんは何で信長さんと肩並べてるんだよ!?
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