子供への渇望

 ところ変わって、ここは剣城がこの時代にタイムスリップした始まりの村。もとい、今は村ではなく秘密軍事施設の形相になりつつある。


 ジュ〜〜〜〜〜〜


 「あぁ〜あ。最初は誰かと思うような男だったのにな」


 「そうだな。服すら着てなく、八兵衛の褌を渡してあげてたくらいなのにな」


 「(ハスッハスッ)滅多な事は言うんじゃねぇ〜。この焼肉だって彼奴が教えてくれた食い物だろう?」


 「ケッ。八兵衛だって最初は軽く見ていたじゃないか。だが・・・この白い米も肉もタレも全部、剣城が・・・おっと。剣城様が教えてくれたんだからな」


 ジュ〜〜〜〜〜〜


 「(ハスッ)そうだな。もうワシは赤い米なんか食えん。他にも食い物だけではなく、病院なるものまで建設して、少しでも体調が悪くなれば見舞いにまで来てくれるし、7日に1回は必ず休むようになったな」


 「おい!俺が焼いた肉だぞ!?」


 「まぁ権兵衛もそう言うな。肉はまだまだあるんだ。それはそうと甲賀の・・・今日の警備は誰だったっけ?」


 「呼んだか?」


 「うをっと!?驚いた!黒川様でしたか」


 「ふっ。いやなに・・・九州に旅立つ事となってな。野田と交代だ。その前に、剣城様のお部屋にある特殊武器をお借りしようと思ってな。だが、外でそんないい匂いをさせておるもんだからな」


 「すいません。よければ食べられますか?」


 「いや、俺はいい。部下がまだ仕事中だからな」


 「そうでしたか。いつお戻りになられるので?」


 「そうだな・・・3ヶ月後くらいか。その時にはまた新たな人が来るであろう。今回は野田が育てた若人が5人だった。俺が帰る時は10人は新たに若人が来ると心得よ。野田如きには負けられぬからな」


 「え!?」


 「いや、こちらのことだ。それより、畜産や養鶏の方はどうなのだ?好調ならば、保存肉と卵を融通してもらいたいのだが?」


 「えぇ!絶好調ですよ!始まりの長鳴き鳥から交配を行い、今は曾孫の代です。特にカレンちゃんの卵が中々に味が濃くて、朝に卵かけご飯を食べると元気が出ます!」


 「カレンちゃん!?だと!?」


 「あぁ〜。黒川様。コイツは養鶏の鳥に名前を付けるようになりましてね。気にしないで下せぇ〜。アッシが御用意いたしやしょう」


 「そ、そうか。頼む」





 〜国友製作所〜


 カンッ カンッ カンッ


 「おぉ〜!これだ!」


 「親方!!これを剣城様に納品するので!?」


 「あん?バッキャーロー!!これは輸出品だ!!こんな国友大筒なんて名前が付けられるか!!恥ずかしいだろうが!国友銃、国友大筒とはライフリング加工をし、弾は100発中97発は狙い通りに飛ぶ物にしか名付けん!」


 「すいません!ではこれはどこに輸出するのですか!?」


 「それは知らん!お館様から報せがあった。10発程で台座が壊れるくらいの大筒を作れとな。まさか壊れる事前提の物を作らされるとは、思わなかったぜ」


 「また難儀な注文ですな」


 「ふん。まぁ今頃はもう剣城も中央に居る頃だろう。上洛戦では遠慮せずに武器を使ったと報告は聞いた。上杉に浅井、朝倉、毛利・・・クックックッ。お館様がおっしゃった事は、すぐに無印大筒の注文が入るだろうとの事だ」


 「おぉ〜!やっとるか!?」


 「加藤か!どうしたのだ?」


 「いやいや。見てくれ!後装式の片手銃の試作だ!」


 「なぁ〜にぃ〜!?加藤の加工場で作ったのか!?」


 「あぁ。そうだが?これで、美濃、尾張は国友印だけではなく、加藤印も出てくるだろう。のう?善兵衛?」


 「ぐぬぬぬ・・・チッ。加藤が片手銃ならワシ等、国友は逆を行く!おい!お前!今すぐ口径の大きい大砲の設計を書け!!」


 「え!?今すぐですか!?」


 


 〜国友芳兵衛 製作所〜


 「ドゥフッ・・・ドゥワッハッハッハッ!!!」


 「芳兵衛親方!?どうされましたか!?」


 「見てほしい!剣城殿が彼の『農業神様から授かった』と、言われていたこのヒヒイロカネ鉱石を、この100tハンマーなる金槌で叩いて出来た代物だ!」


 「へ!?それは何に使う物なのですか?」


 「よくぞ聞いてくれた!苦節2年・・・ようやっと完成形まで辿り着いた!加工場の銅線のコイルを巻き付け、長良川のダムの水力を使い、エレキテルなる力を使った光があるだろう!?なんとこのヒヒイロカネを触媒にすると・・・光の力が更に増すのだ!お前達!これから忙しくなるぞ!」


 「何が何やら分かりませぬがやりましょう!」




 〜剣城邸〜


 「ゆき様。昨日の売り上げにございます。234万円になります。ここに大判234枚入れております」


 「御苦労様。温泉宿が好調のようね?」


 「はっ。越後商人なんかが最近は出入りが多いみたいです」


 「塩屋様が宣伝してくれてるのよね?」


 「はっ。このパンフレットなる物を使い、有力者に宣伝してくれているようです。ですが、銭が掛かりますからね。それなりに銭を持っている者しか来れないようです」


 「慈善事業じゃないからね。私は剣城様に任されているだけの立場だから・・・」


 「ほっほっほっ。ゆき?芝田家の財をどう使おうが、あの方は何も言わないと思いますよ?」


 「小見様!」


 「いや、そんな頭なんて下げなくとも良い。ゆきは、ゆきのやりたい事をしなさい。その事であの方が怒るようなら妾が・・・おっと失礼。私からも言いましょう」


 「確かに剣城様は『ゆきさんの好きなようにして構わない』って言っていましたが・・・」


 「ほっほっほっ。ならば、あなたは深く考えない事ね。さて・・・私は娘のところに参ります。そろそろ、やや子が産まれてそうですからね」


 「もうそんな時期なのですね・・・」


 「あなたもそろそろですね。焦ってはいけません。人は人。子を産む事だけが幸せではありませんよ」


 「はい!」





 「剣城様。野田殿がお見えです」


 「えぇ〜!?次は野田さん!?通して!」


 「剣城様!いきなり押し掛けてすいません!なんでもそろそろ子供をとお聞き致しまして・・・」


 「野田さんもですか・・・」


 武衛陣にて、信長さんと将軍を待っているこの2日程の間に、従軍してくれている甲賀隊の色んな人が、オレに子供の事を聞きに来る。


 先日、小川さんに軽く言った事が今や、周知になるつつある。


 「はぁ〜。金剛君?甲賀の人達はどのくらいの人が子供の話を知ってるの?」


 「多分、ほぼ全員かと。けど、いい事ではないですか。俺も剣城様の御子をこの手で育ててみたいです!」


 「いや育てるもなにも・・・金剛君は教育係じゃないよ!?多分それは、自称筆頭家老の小川さんになるんじゃないかな?そもそも子供が出来た訳ではないからね?」


 「まぁ皆は、剣城様に御恩がありますし、喜びたいのですよ。あっ、それはそうとそろそろ大殿が着陣されますよ。先触れが参りました」


 「了解」



 その後、とりあえず甲賀の人は持ち場に戻るように言い、1時間もしない内に信長さんは颯爽と現れた。


 「おぉ〜!剣城!励んでいるようだな!見事な変貌の武衛陣だ!将軍もさぞお喜びとなろう!」


 「信長様からお褒めのお言葉、ありがとうございます。将軍はいつ来られますか?」


 「すぐに来るだろう。武衛陣の事を末端の者が色々言っていたから、ワシが先行して来ただけじゃ!剣城!案内致せ!」


 「分かりました」


 オレは例の隠し通路を先に言おうと、迷路みたいな部屋と部屋を案内し、信長さんに教える事にした。

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