カレー戦争

 村に歩いて向かってる途中、お菊さんに家が完成した事を伝えた。


 「お菊さん?オレの家が完成したみたいなので、オレはまだ城勤めですが甲賀の人呼んでくれますか?それと給金は払いますので松茸やウナギなど、3日に一回くらい獲ったりしてくれませんか?」


 「とうとう完成したのですね。おめでとうございます。分かりました。年明け、落ち着いた時にでも呼ぶように致します」


 「ありがとうございます。では前金でいいのかな?オレの残りのこの時代のお金です。5貫ありますのでこれで準備してくれますか?」


 「準備の銭を頂けるのですか!?しかも5貫もですか!?」


 「いや何をするにもお金が要るでしょう?そうですね・・・。服は確か高いって言ってたんで、さっき言ったウナギや松茸などを獲ってきて頂いたら、着心地が良い未来の服や椎茸栽培のキット等、他にもまだ簡単に銭になる方法があるのでそれを任せたいです。それと皆さんに3日に一度、学問を習ってもらいたいです」


 「きっと!?学問ですか!?それに椎茸とは少し前、滝川様にお渡しした物でしょうか!?進捗は聞いてないのですが・・・。それにやはり銭は私共には勿体ないのでお返しします」


 「はい!ストップ!そのお金はもうお菊さん達のなので返されても困ります!ちゃんと自分達にもお金かけて下さい!」


 「そう言われましても・・・」


 「それにオレも本当に無一文なので、しばらくは獲って来てくれても給金がすぐには難しいので、それでやりくりをしてほしいのもあります」


 「こんなに、沢山の銭なら1年は働きます」


 「いや、そんなにオレは無一文で居るつもりはないから・・・。とりあえずそれは受け取って下さい」


 「分かりました。ありがとうございます」


 「それと椎茸は正月明けくらいには、第一陣が出来上がってるんじゃないかな?」


 「そうなのですね!椎茸が自分で育てられるのは快挙です!それと・・・学問は・・・我々は草の者。戦働きや情報収集は出来ますが頭の方が・・・・」


 「正直オレはこの時代の人達の文字が分からないんです。なんすか?あのミミズが這った様な文字は!?もっと活字で書けよ!間違いが起こるだろ!?と思うのです。

 まずは沢彦さんに未来の本でも見せて、先生になってくれないかと聞いてみる予定です。断られたらオレがしばらくは教えます」


 「はぁ・・・。まあ何とも言えませんが分かりました。後で代わりの者に伝えておきますので、甲賀から呼び寄せるように致します。剣城様、本当にありがとうございます。この5貫も、大切に使わせて頂きます」


 「いえいえ。こちらこそ不甲斐なく頼りない様に見えますが、宜しくお願い致します」






 村に到着したオレ達はすぐに八兵衛村長の元へ向かう。広場がやたら汚れてるように見えるが何かあったのか?


 「八兵衛村長、おはようございます!」


 「おう!剣城!護衛の嬢ちゃん!おはようさん!かれーは美味かったぞ!皆で奪い合いが起こったんだ!」


 いや、奪い合いが起こったんだ!って何で嬉しそうなんだよ!!!可笑しいんじゃねーの!?


 「奪い合いですか!?皆、一杯分ずつくらいは作ってたと思いましたが?」


 「剣城は甘い!ちょこれーとより甘い!あのかれーは至高なる食べ物。何人(なんぴと)たりともワシのかれーを今後食わす事は許さん!」


 おい!狂い過ぎだよ!カレー如きで!


 「はぁ〜・・・。そんなにカレー食いたいなら作るの簡単なのでカレーの素だけお渡ししますよ」


 《業務用カレー粉50kg》


効能・・・・質より量、変化自在のオーソドックスなカレー粉。入れる具材により更に昇華する。肝機能低下を抑え自律神経の働きを高める。



 まぁ効能はそれらしくカッコイイが普通だな。これなら信長さんも怒らないだろう。それに、そろそろ城のカレー粉も無くなりそうって言ってたから、今度はこれにしようかな。


 効能に書いてる通りゴッドファーザーも入れる具材により昇華するって書いてるし。伊右衛門さんに任そう。


 「この茶色いのがかれーの素なのか?」


 「はい!これを水で溶かして食べたい具材を入れて煮込むだけですよ!簡単なんで試してみて下さい!ちゃんと村の人に分けて下さいね?」


 「おい!ワシがこれを独り占めにするとでも思っ….」


 「思いますね。八兵衛村長、食べ物の事になるとガメツイですよ!!」


 「ぐぬぬぬぬ・・・。分かった分かった!ちゃんと分けるよ!おーい!各々方!剣城がかれーの素なる物をくれたぞ!早い者勝ちだぞ!」


 そこからは男に負けじと・・・否!むしろ女の人の方が強く奪い合いになりそうだったが、そこはちゃんと『皆、公平にしないと没収する』と伝えたら皆並んでくれた。


 「朝からかなり疲れましたね。これで皆に行き渡ったかな?少量になってしまいましたが、まずはこれで勘弁して下さい。私も本当に無一文になりそうなのです」


 「確か未来に価値ある物が要るんだったよな?今どのくらい残ってるんだ?」


 「えーと・・・さっきのカレー粉が¥25000だったから・・・10貫も銭に替えて・・・300万程か・・・。一時は1000万近くあったのにな・・・」


 「どの位の価値かは分からんが、だいぶ少ないんだな。だが大丈夫だ!剣城が飯を食えなくなったら、またワシが食わしてやるからな!がっはっはっはっ」


 「あっ、はい!ありがとうございます!確かに分かりませんね!暫くは大丈夫ですがどの位とも言いにくいです。が、贅沢はできないです。戦の準備や装備にも金が要るし、正月の料理でも使うので・・・」


 「まあもし何か売れそうな物があったら、ワシが集めておいてやろう!それで今日は何か作業するのか?」


 「あっ、そうです!オレもとうとうあの実を食べて閃きが凄いんです!国友さんはまだですが少し作業しようかと思ってるんです!」


 「あっ、いやすまん。もう村の皆に今年は作業はしないと思うと伝えたんでな・・・。炭の方が少なくてな・・」


 「炭は自分が購入するので!」


 「いきなり全開とは言わないので銃一丁だけ作らせて下さい!それに火薬を作ろうとしてたの覚えてますか?あの糞尿に例の肥料混ぜたのを!?」


 「あぁ。覚えてるが確認してなかったな。よし!じゃあやるか!だが剣城はその正月料理の事は大丈夫なのか?」


 「正月料理の事は大丈夫です!!」


 「そうか。分かった!では始めるとするか!伝兵衛!太助!手伝え!」


 そう3人の村の男とオレは、国友さんが作った高炉に向かい鉄砲作りを始める。これが試作第一号となり、稲葉山城の戦いで大いに役立つとはオレはまだ知らない。

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