公家の旅立ち
「お、お館様様!何故にワシがこのような任務に!?」
「勝家!それはお前が勝家だからだ!お主の武は可成にも負けてはおらぬ!信用しているからだ!飛鳥井殿に付き、学び、護衛しろ!」
「ですが──」
「つべこべ言うな!この任が終われば、お前も城持ちでも恥ずかしくない将となろう!行け!」
護衛の人を付けると言ったがそれは柴田さんだった。意外な人選だ。土産に渡した物は多岐に渡る。茶器は当たり前だが荷車10台も使った食べ物、例の村で作った先鋭的な服各種、布団、塩に砂糖、真っ白な米、ガラスコップや花瓶、ボールペンや鉛筆など、他にもかなりの数を渡している。
「ほほほ。これよ!これ!この瓶に入った澄み酒と梅が浸かっておる甘い酒こそ至高。ほほほ」
「あまり飲み過ぎないように気をつけて下さいね?」
「流石に20瓶も飲み干せる事はないでしょう。ほほほ」
あんたの護衛の柴田勝家さんを舐めないでほしい。飲めと言えば永遠に飲める人だぞ!?それは贈答も含まれているんだぞ!?
「中に雅なギヤマン細工を入れております。酒瓶も入っております。人に贈る場合はそちらに入れてお渡し下さい!」
「山科殿?お返事をいただいてはおらぬが、飛鳥井殿のようになると、ワシは願っておりますぞ?」
「・・・・今一度、考えさせていただきたい」
「うむ。同じ物を山科殿にも用意しております。お役立て下さい。それと、これは帝にお渡し致す物。銭、3000貫文と栄養どりんくなる物と書状にございます。よろしくお頼み申す」
「こっちは私からでございます。銭2000貫文です」
「これは別々に・・・で宜しかったですか?」
「はい。織田家からと芝田家からで構いません」
俺のこのお金はお菊さんがもしもの時の為の、箪笥預金だ。これは言葉の意味のまま。清洲の村のオレの家の箪笥に、お金が溜まれば隠していたお金らしい。
お菊さんによるとオレの隠し預金?隠しお金?は1万貫文?くらいはあるらしく、オレはどのくらいの価値かは計り知れないが、とにかく大金持ちらしい。30日に一度数々の売り上げ?アイデア料?的な何かが、遠藤さんからお菊さんに渡されているらしい。何かで散財しないと勿体ない気はする。
「それと最後にこれが、新たなる岐阜でのみ使える通貨・・・円になります。こちらは信長様と私、剣城の連名にてお願いします。100万円入っております。書状は信長様が書いてくれましたので、帝にお読みいただきますよう」
「うむ。確と受け取りました。必ずやお上はお喜びになるでありましょう。岐阜は良い所であった。年の瀬にまた来たいのう?ほほほ」
いやもう勘弁してくれ。かなり疲れたぞ!?
「まだまだ岐阜は発展していくであろう。何か足りない物があれば言って下さい」
「ほほほ。楽しみにしておきましょう」
そう言うと、二人の公家と柴田隊と小荷駄隊の人達は消えていった。さて・・・残された俺達だが特にすぐにする事は無いが、いい加減、海に出ないと九鬼さんに怒られるからな。
「信長様?私はこれから船の建造に取り掛かります。漁船や外洋にも行ける船を造るように致します」
「うむ。貴様もこれより中央で名前が知れ渡るであろう。間者には気を付けておけ!何か不足があれば貴様も遠慮なく言え!」
船造りに関してまずは国友さんに相談しようと思い、久しぶりに仕事の話をしに清洲の村へ行く。あっ、奇妙丸君の補佐に関しては塩屋さん、沢彦さんにお願いしている。
新しい通貨も徐々にだが岐阜、尾張に浸透していき、まずは利用者は商いをしていて且つ、オレが個人的に買い物などしている店主の人や、その家族の人が温泉を利用してくれているだけだが、1日の帳簿を書くようにさせている。ちなみに値段だが10円だ。
本当は現代価格でしたかったがまだ高いと思い、皆に清潔になってもらう為、安く設定している。徐々に岐阜に住む人達にも、入ってもらいやすくする為でもある。
「おう!剣城!来たか!」
「はい!そろそろ船の方を始めたいと思うのですが、アイデアありますか?」
「試作としては考えてはあるのだ!」
見せられたのは船の設計図だ。
「最初から大型船は造れない。技も足りないからな。それに俺達だけでも無理だ。もっと人手が欲しい」
「岡部さんって人や、九鬼さんって武家の大工を工面するように伝えます。必要な物ってありますか?」
「うむ。FRPをなるだけ欲しい。そしてゲルコート塗料が欲しい。後は手探りでやっていくほかない」
「分かりました。用意しておきます。木造船ですか?」
「倅からも言われておるが、順序というものがある。まずは木造船を作り、手慣れれば倅が最近覚えた熱を利用し、冷間加工なる技術を使えば鉄甲船だってできる!」
「おぉ〜!鉄の船ですか!!楽しみです!けどエンジンが無いですよね・・・」
「それは倅の方だ。なんか色々研究と題して試しておるぞ?行ってみてくれ!俺は早速、木を仕入れておく」
国友さんに言われ、俺は芳兵衛君の研究室に行った訳だが・・・。
「なっんじゃこりゃ!?!?」
「あっ!剣城様!お久しぶりです!」
「久しぶりも何もここは何ですか!?」
「え?研究室ですよ?」
いやいや研究室ですよ?じゃねーよ!!!もうここだけラボじゃん!旋盤機やらプレス機やら他にもオレが出した物だけど、どうなってるの!?
「ごめん。驚いてしまった。聞きたい事あるのだけど・・・ってかその芋の山は何なの?焼き芋がそんなに好きなの?」
「またまたぁ〜?ご冗談を!これは例の肥料にて育ち過ぎて、腐らせてしまうのは勿体ない為、この書物に書かれているサツマイモ燃料、というのに挑戦しているのです!」
いやいや、サツマイモ燃料ってオレが居た時代でも、まだ確立されてない技術だったよな!?それに挑戦しているのか!?
「いやぁ〜、流石に凄過ぎますよ!それで成果は!?」
「なんとなくは分かってはいるのですが、メタンガスを発生させるには、時間が掛かります。ただしバイオエタノールは出来上がりましたよ!」
は!?バイオエタノールだって!?
「バイオエタノール・・・・」
「そんな驚かなくてもいいですよ!意外にも簡単ですよ?芋に水と麹とイースト菌を入れて、細かく粉砕し、後は、容器に移して常温で発酵させるだけですよ?1週間程で発酵が終わるので絞り汁を2、3回蒸留してアルコール濃度を高め
た物がこちらにあります!」
隣の蔵に案内され、蔵の中に並べられていたのをオレは初めて見たが、バイオエタノールらしい。
「ってかそんなにサツマイモ使って大丈夫なの!?」
「むしろこれでもまだ、腐らせてしまうくらい実ってるのです。他に利用方法ありませんか?」
どんだけだよ!?サツマイモと金色の鶏糞の相性良すぎだろ!?これはあれか!?勘助さんにでも言って焼き芋屋さんでもしてもらうか!?
「このバイオエタノールはかなり凄いけど、これをどう利用するの?」
「よくぞ聞いてくれました!!!このバイオエタノールと脂肪酸メチルエステルを混ぜると、でぃーぜる燃料なる物に変化するのです!」
ヤバイ・・・・またスイッチが入ってしまった・・・。
「この脂肪酸メチルエステルとは牛の脂肪から………だから放牧している児玉様にお願いし、暴れ牛の捕獲から………伊吹山やら恵那山を小泉殿にお願いし…………」
いやかなり凄いけど止まらない止まらない。喋り出せば最早、誰にも止められない芳兵衛君である。そもそもディーゼルとか単語出たけど、ディーゼルエンジンも作ってるのか!?ここだけ21世紀か!?
「剣城様!?聞いておられますか!?大事な事ですよ!革命が起きるのですよ!?」
「え、あぁ。ごめん。何となくだが分かるよ?」
「いや、何も分かっておりません!こちらへ来て下さい!簡単にお教えしましょう!」
うん。回避失敗してしまった。そして外に連れ出され、石を組みだした。
「まずこれを天秤のようにして、紐で代用します。本物はチェーンを作る予定です。そしてこちらの燃料容器に先程のバイオエタノールを入れ、下から燃やします。そうすると熱の力により上へ上へ押し上げる力が発生し、この滑車反対側はピストン運動になります」
ただ漠然と説明を見て聞いていたが、これは本当に凄い事だ。何もない手探り状態から、よくぞここまで理論立てできたもんだよ。
「これな・・・オレがタイムスリップした時代でも、普通にしている工程だと思う。このピストンのところにシリンダーを入れて、カムシャフトを咬まして回転運動を均一化するのでしょう?」
「おぉ〜!流石、剣城様!分かりましたか!?」
「うん。さすがに全部じゃないけど車と似ていると思う」
「まだまだ燃料ポンプや、精密機器の製造に時間はかかりますが、剣城様の時代へ近付いていっていると自負しております!」
「間違いない!よくやってくれたと思う!けど、オレはすぐに海に行かないといけないんだよ。やっぱ今は人力の船しか作れないよね?」
「スターリングエンジンと呼ばれる物は、もう用意してありますよ?以前言ってませんでしたっけ?船を造るからエンジンが欲しいって?」
いやマジか!?この芳兵衛君こそ日の本一重要な人間だよ!!スターリングエンジンだぞ!?最早これは、芳兵衛エンジンと言えばいいんじゃなかろうか!?
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