甲斐への道のり 中

 「実に良き一晩だった!この事は必ずお館様へ報告致す!」


 「某も・・・疲れが癒えました」


 チッ。平手さんも坂井さんも楽しい一晩だったんだろうな。オレ?オレは夜通し家康さんと今後の三河の事を話し合ったさ。やれ綿花を使った布団工場をもっと大きくしてくれだの、例の金色の鶏の鶏糞を使った肥料を使い、野菜や果物の畑を増やせだの、ハウス栽培も教えろだの、製鉄工場も作ってほしいだの色々とな。

 そりゃあ、友達のような感じの人だけど、オレは言えば平社員。家康さんは小さくても社長のような人だ。気を使ってしまうからしんどい。


 そうそう。サウナの中で話している中で、那古屋で行っている防波堤の設置及び港湾事業を浜松でもしてほしいと言われた。

 この港湾事業は那古屋でもやっと成功したところなのだ。芳兵衛君が防波堤となるコンクリートのケーソンという物の指揮を取り作る。


 どうやらコンクリートを空洞にすれば海に浮くらしく、それを前方にしか走れない石炭を使ったスターリングエンジン付き船で運ぶ。


 それと同時に小石を積んだ運搬船を何度も何度も往復し、それを投げ入れ、吉蔵さん達のような漁師、主に素潜り漁をしている人を中心にチームを作り、その投げ入れた小石を平にする。

 

 その上にさっき言ったケーソンコンクリートに砂と水を入れて沈めて蓋をする。言葉で言えばこれだけなのだが、実はかなりの重労働なのだ。それをあの家康さんは軽々しくお願いしてきやがる。これは女の人1人や2人では効かない仕事だな。

 

 まぁ、色々話し合った所で最終的なGOサインを出すのは信長さんだからな。一応、要望は伝えはしとこう。


 「自分のような案内役にまで過分な接待・・・深く謝しまする。叔父貴にもお伝えしておきますゆえ」


 「お、俺にもありがとうございます!昨日のみどりさんは非常に良かったっす!」


 「あら?大膳ちゃん?朝から顔が赤いわよ?」


 「はぅ・・・みどりさん・・・」


 クソ大膳めが!!!あんな綺麗な人を抱いたのか!?許さん!許さんぞ!!


 「大膳ッッ!!お前という奴は・・・帰ったら覚えておけよ」


 「まだまだ甲斐は遠いのだろう?そろそろ出発しよう」


 「平手様すいません。徳川様。また一度帰りに寄ります。その時はまたよろしくお願い致します」


 「うむ。道中気を付けて行きなさい」


 挨拶もそこそこに早朝から出発だ。案内役の与作さん曰く、これから山越えらしい。途中開けた所があるのらしいが、そこが与作さんが仕える小さな郷らしい。普段は国境の道案内や飛脚のような仕事をしてるのだとか。


 ヘェーヘェー息を切らしながらやっとの思いで郷に到着だ。時刻は既に15時だ。だが、ただの郷と聞いていたがこれは見るからに城だ。


 「まずは本日はここまでに。直虎様に遣いを出します」


 「直虎様・・・え!?井伊直虎・・・様ですか!?」


 「え!?ご存知なので!?」


 ご存知もなにも歴史好きなら知ってる人は多いんじゃないだろうか。ここで疑問が一つ解けた。ここは井伊谷という場所だ。そして目の前に見えるのが井伊谷城だ。

 あの髪の毛フサフサおじさんになった酒井忠次さん筆頭の徳川四天王の一人、井伊直政のゆかりの地だ。今は小姓のような事をしているが、まさかここが・・・。


 「いえ、聞いた事があるってだけです。失礼しました。けど、与作さんは武田方ではなかったのですか?」


 「いえいえ。自分はどこにも属さない小物ですよ。ただの飛脚と道案内を生業としているだけです。銭さえ貰えればどこにでも付きます。かつては今川にも仕えておりました。昔からの掟で、どんな事があろうと他国の情報は話さないという決まりです。

 例え捕らえられたとしても、今川家でも武田家でも徳川家にも話しません。それは城主の直虎様も分かってくださっていますし、そうしなければ、おまんまを食べて行けませんので」


 「そうなのですね。つまらない事聞いてすいません」


 「いえ。ではこの家でお休みください」


 「時折り、剣城は込み入った話をするのだな。それが誰にでも分け隔てなく仲良くなるコツか?」


 「いいえ。平手様はどうかは分かりませんが、少しですが一緒に旅する仲です。少しくらい相手の事知りたいと思いませんか?」


 「いいや?俺は利にならない事は嫌いだ。無駄な事は極力しとうない。それにいくら相手の事をしろうと、現に剣城は何も言ってはこないが、このような話し方になってしまう。お館様も俺のこういうところは許してくださっている」


 まぁ確かに高校生くらいの年齢の男にタメ口を言われるのはオレも少し気にはなるけど、この人に関しては憎めない何かがあるのも事実。史実では三方ヶ原の戦いで討死する人だしな。この世界線でそれが起こるかは分からないけど。


 「邪魔するぞ」


 オレ達が少しダラけていると野太い女性の声が聞こえた。所作は男のような感じだ。


 「はい?どちら様ですか?」


 「ふむふむ!今宵の相手は其方か?与作も中々気が利くではないか!」


 「チッ。気安く商売女と思うでない!遠江 井伊谷 領主!井伊直虎である!」


 「ま、待ってくだせぇ〜!何も直虎様が向かわ・・・あれ!?平手様!?まさか変な事を・・・」


 井伊直虎・・・まさかこの人も女説が本当だとは思わなかった。それに与作さんの慌てようは・・・。


 「おい!与作!此奴等が殿が懇意にしているという奴等なのか!?あん?」


 「は、はっ!その通りにございます!昨日、岡崎の城にて、特にこの剣城様という方は三河殿と裸の付き合いをしておりました!」


 おいおい!裸の付き合いってなんぞ!?サウナに入ってただけじゃんかよ!?


 「お、おう。すまぬ。お主があまりに綺麗で喜んでしまっていたようじゃ」


 「ふん。私は貴様のような優男は嫌いだ。それに元服を済ませたくらいだろう。二度と商売女と間違えるでない。お前は剣城と言ったか?殿とは随分なようだな。ここは武田との国境で山の中だ。下界がどうなっているか教えてほしい」


 「え!?い、いや、オレは家康様とはそんな仲では・・・」


 「ふふ。隠さなくとも良い。殿は男色はあまり嗜まないと聞いている。が、まさか殿が其方のような者が好みとはな。体型も似ているみたいだしな。城へ着いて参れ」


 「ふん。剣城殿は城でゆっくりしていいぞ!俺達はここで泊まるから!クックックッ」


 クソ!平手のガキんちょめ!


 城へ案内され、与えられた部屋は・・・まぁ殺風景だ。これは仕方がないだろう。本当に山の中だからな。織田家が異常なだけで、どこもこれが普通なんだ。織田家に連なる人の城へ赴くと誰が豪華に飾り付けているのか競っている節があるようだからな。


 「失礼致します。長旅の中お疲れでしょう。お召し替えの前にお身体を清めさせていただきたもう」


 クッソ!昨日のあの裸の付き合いがあったせいか、世話役が中学生くらいの男の子なんだけど!?オレは女の子がいいんだけど!!


 「ゴホンッ。自分でするから大丈夫だ。下がっていいよ」


 「はぁ〜。ですが、直虎様に一晩の疲れを忘れさせるよう言われているのですが・・・」


 「みんな間違えているようだけだ、オレは男色は好まないんだ。決して君が嫌とかそんなんじゃないからね?君はこの城の城主の側仕えとか小姓とかなんだろう?他の子達も居るんだろう?皆で分けて食べなさい。これは飴玉といって砂糖を固めた物だよ。美濃では子供達も買えるような物だから気にしなくていいから」


 「はっ。いいのですか!?これが・・・砂糖・・・(ゴグリッ)」


 「あ、うん。それが砂糖ではないけどね。こっちが砂糖だよ。一泊のお礼にこの砂糖を直虎様に渡す予定だから城中の料理人にでも言って、何か作ってもらいなよ」


 こんな事もあろうかと、武田家に贈り物で渡す砂糖以外にも5キロで一袋の砂糖をかなり持って来ている。いや、タブレットで直に買えば目の前に出るし、タブレットの収納に入れておいてもいいんだけど、クソ大膳の筋トレだ。岡崎の城のことは許さんからな。一人だけ満足しやがって。

 それにこれより先は・・・ってか、ここもだけど武田と付き合いがあるかもしれないからな。物が出せるってバレて攫われたくないからな。

 あ、いや・・・直虎さんなら攫われてもいいかもしれないかな?声は野太いし、所作は本当に男のようだけど普通に可愛らしい感じの人だしな。


 それから濡れたタオルで身体を拭き、ジャージに着替える。その着替えている途中で直虎さんがやってきた。


 「(カタンッ)何やら私が用意した者を追い返・・・失礼をした」


 「あ、いや・・・こちらこそすいません。あ、もう着ましたので、大丈夫ですよ」


 「相すまぬ。うむ。それにしても中々にふくよかな体型だな?其方は有力者と聞いてはいるが武士か?」


 「武士・・・なんですかね?商人・・・って事はないかもしれませんが、自分でもよく分からないんですよね」


 「そうか。巷ではそのような服が流行っているのか?南蛮の服か?」


 「あ、これですか?これは配下の女性達が作ってくれた物ですよ。こっちはダウンジャケットって言いまして、羽毛や三河産の綿が入っている上着です」


 「初めて聞く名の物ばかりだ。与作のような者達から外の事を聞く以外に知る方法がここにはないからな。夕餉はどうすれば良い?できる限りの物を作らせる予定ではあるが、お主のような者を迎えた事が今までなかった故に・・・」


 「何でもいいですよ。もし迷うようでしたら食事は自分でどうにかしますけど」


 「それはいかん!井伊家の沽券に関わる!それに殿にも申し訳が立たん!」


 「別に気にしなくていいんですけどね。本当に。あ、多分配下が居ると思うので呼んでも?」


 「うむ」


 「ミヤビちゃん居る?」


 「はっ。ここに」


 「やっぱり着いて来たんだね。大膳に言って、荷の一部分を井伊家に渡してあげて」


 「構わないのですか?」


 「いいよ」


 ミヤビちゃんはオレがすぐに補填できる事を知っている。これは演技だ。敢えて、大袈裟に言っているのだろう。オレも打算的な考えだが、恩を売るような感じだ。


 「ちょ、ちょっと待っておくれよ!武田家の荷を井伊家で使わせるなんてダメじゃないのよ!」


 急に女性のような言葉使いになったな。本当にビックリしているのだろう。


 「いや、いいですよ。武田家の贈り物は第二陣、第三陣と用意してありますし」


 そこから押し問答が続くがこういうのは面倒だからさっさと目の前に見せた方が早い。まずは砂糖一袋5キロ積めを10袋。白米100キロ俵2つ。真空パックに入れた薩摩豚や、尾張鶏肉・・・今は尾張コーチンって名前に変えたブロック肉、美濃牛肉ブロックを各50キロ、織田印 森醤油50リットル、農業神様から購入したビール2ケース。これだけ目の前に持ってこさせたら・・・、


 「ななな、なんだい!?この量は!?これをあの下っ端の男は一人で荷車で運んでたのかい!?」


 「えぇまぁ。とある物を食べると力が増すのですよ。オレが昔、マウンテン富士という山奥にて開発した薬でしてね。10人力くらいになれるのですよ」


 うん。やはり説明できない時はマウンテン富士に限る。


 「まうんてんふじ!?富士山・・・」


 おっと・・・。まさかその名前が出るとは思わなかったぜ。


 「それは、御公儀の秘密ってやつでさ」


 眼鏡はかけていないが、かけている風で目頭を人差し指でクイッとする。まぁ御公儀とはなんぞや!?って思うけどな。

 けど、まぁ、貧しいのは本当ぽいし、家康さんも今はまだここを重要視していないぽいし。普通に考えて南アルプスを超えて武田が攻めてくるなんて思わないんだろう。それが三方ヶ原なんだけどな。


 「そこまで言ってくれるなら頂くけど・・・」


 「えぇ。別にこのくらい・・・とは言いませんが、納めてください。その代わり、下心とかはありませんが、帰りにもう一度オレは岡崎に寄ります。その時に徳川様にここもちゃんと面倒見るように言っておきますよ。あなた方が過去にどのような政争に巻き込まれたかは知りませんが、今は徳川家に仕えているのでしょう?」


 「はい。けど、殿はあまりここを気にしていないようですし、何分、国境とはいえ生産性のない地だから」


 「そこは何もオレも言えませんが、やり方によっては潤わす方法があるんですけどね。例えばこのダウンジャケット。これは織田家で作った物ですが、徳川家にも作り方は教えていますし、元々の原材料は三河です。これをここ、井伊谷でも作り、装飾品やら染め付けを行い、井伊谷のダウンジャケットという名前で売り出し、ブランド化すれば銭が入って来たりすると思うんですけど。まぁこれは追々ですね」


 「・・・・・・・・」


 「難しかったですか?」


 「あ、いや・・・何が何やら分からない言葉が多くてな・・・」


 「あ、すいません。まぁ本当に稼ぐ気があるなら助言はしますよ。ただ、徳川家の領土ですからね。オレは織田家の人間ですので、いくら同盟で仲は良いと言っても線引きは大切です。あなたが徳川様に言って許可が出るなら人を連れて来て技術交流的な事をしても良いかもしれませんね。さて・・・どうせですので夜飯はオレが作りますよ。こう見えて、その昔、織田家では料理ご意見番と言われたくらいですからね」



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「なんと!?うどん!?ではないがこれは・・・」


 「これはパスタという麺でして、まぁ南蛮の食べ物ですよ。ペペロンチーノと言います」


 「(チュルチュル)美味い!本当に美味いッ!!」


 「美味しいでしょう。この中にも猪肉が入っております。織田家では肉食を推奨しており、特に兵達に食べさせて、増強しております。肉にはタンパク質というものが含まれており、筋肉の作りを補助する役割がありますからね。その分、食べるだけならブクブク太ってしまいますけど」


 「そうか。肉なら野鳥や猪はたまに兵の訓練がてら獲らせて食べる事はあったが、料理一つでこんなにも化けるとは思わなかった」


 「臭みを取り、焼き方一つで色々と変わります。料理の本も置いておきますので、料理頭にでもお渡しください。与作さん達、一派を使い砂糖なんかは外国に売ってもいいですよ。これは飽く迄、オレが個人的にあなたに贈ったものですので」


 「・・・・・これが他の男からなら打算的な何かを感じるだろう。いや、お主からも多少は思う事を感じるが、これほど嫌味のない贈り物をこんな辺鄙な所に持って来た者は初めてだ。そんな貰い物を売るなぞ失礼な事なんかはこの私はしない。恩には恩を返す。直ぐには返せないが必ずな」


 「昔からここで住まわれているのですか?」


 「まぁな。かつては今川家に与していたのだが、色々とあり、父上と母上は早死し、井伊家が纏まらず方々にかつての臣下は散ってしまってな。父上に男子は居らず、父の従兄弟の直親を私の婿養子に・・・と考えていたのだが、今川家に謀反の疑いをかけられ自害させられてな。それから私を慕ってくれる者も少なからず居て、今は臨時で私が城代となっている。

 だが、女城主ではこの通りだ」


 「確かに人は少ないですね」


 「あぁ。それは私の人望がないだけだ。と言いたい所だがそれだけでもあるまい。殿の小姓に出仕している直親の子の万千代を元服したら私の養子として迎え入れようと思っている。そこで万千代に政務を教え、城を返し私は引退しようと思っている」


 聞けば中々にヘビーな人生の人だ。ってか、この人何歳なの!?顔はかなり若く見えるのにそれなりの歳なのか!?


 「それは本心でしょうか?」


 「ふっ。腹を痛めて実の子を産む事はできなんだが、それでも私は女だ。男に産まれていれば・・・と思った事はあるが後悔はしていない。万千代を養子に迎えいれる事が叶えば私は井伊家の役に立ったと胸を張って父に報告できる」


 「そうですか・・・。帰りの時にオレから徳川様に口添えしておきますよ。そして、見事そのお役が終われば一度、岐阜の城下にでもお越しください。

 オレが招待しますよ。外の世界は案外女性も働いております。特にオレの配下は女性が多くてですね。

 この贈り物の塩も兄妹ではありますが、女性が頭の家でしてね。

 この服も女性が作りました。治安はまだ不安な所はございますが、夜も普通に出歩けるくらいには岐阜は安全です。今は日々の暮らしを良くするために色々と衣食住の仕事を1番にしておりますが、そろそろ町作り第二段階へと移行するところでしてね」


 「町作り!?第二段階!?」


 「えぇ。案外、織田家の当主からオレは信頼されていまして。この旗印のように先日オレも親族衆になったのですよ。実の子ではございませんが、織田信長様と濃姫様の娘子 ナギサを養子に迎え入れたのです」


 「え!?って事は・・・」


 「城なんかないですし、官位もなんかそこそこの貰った気はしますが、尾張、美濃ではそこそこのポジション・・・失礼。そこそこの所に居るのがオレです。 そのオレが徳川様にあなた様の願いを伝えておきます。で、その第二段階とは娯楽が少ないので何か作ろうと思いましてね。劇なんか良さそうじゃないですか?歌舞伎や能は分かりませんが、下々の人も楽しめる何かが作れればと考えているところです」


 「い、いやちょっと待っておくれ・・・待ってください!それなら貴方様は・・・」


 「そんな急に畏まらなくてもいいですし、今まで通り話してくれていいですよ。平手様ですらオレにでもあんなですし。寧ろ、美濃では畏まってオレに話す人の方が少ないですよ。まぁとりあえず、本日はお近付きにという事で。偶に文のやり取りでもしましょう。そのくらいなら問題ないでしょう?」


 「えぇ。まぁ・・・そのくらいなら殿にとやかく言われる事はないかと」


 「ここだけの話・・・娯楽の中に男にも女にも春を売るお店を作ろうとかと思っているのですよ。実はそういう要望が多くてですね。特に安芸の国人の人から・・・」


 風俗を要望されてるのは本当だ。安芸の国人も本当だ。まぁ要望が多いというのは嘘だけど。


 「春町かい?」


 「まぁ・・・端的に言えばそうですね」


 「ふっふっふっ。ちょうどいいところだよ。ここは国境だから情報が命。男に酒を飲ませて情報を吐かせる置き屋があるのさ。名目は床屋だけどね?」


 「床屋!?置き屋!?」


 「ふふふ。それ以上は勘弁してほしい。この城の生命線だからね。与作達も知らないはず。知ってても行けない掟だからね。なにも情報を生業としているのは個人だけではないのさ。武田も下っ端の草までは掌握できていないからね。それにしても女の春町も考えているの?まさか巫女の事を知っていて・・・?」


 「あぁ、武田の歩き巫女の事ですか?話は聞いた事ありますよ」


 「確信を持っているのね」


 「まぁ、その巫女相手ではありませんが、尾張や美濃では女性も銭を稼ぎますからね。一晩だけでも姫のようになれる環境があれば楽しめるかなと思っているだけですよ。女性第一の飲み屋的な感じですか。主役は女性。もてなすのが、カッコいい男性にしようかなと」


 「面白そうな考えね。その店が出来たら教えてちょうだい。私も行ってみたいわ」


 「ははは。内緒で教えますね」


 「分かったわよ。夕餉はありがとう。この後、その秘密の者を数人連れてくるからゆっくりしてちょうだいね」


 キタコレ!ゆきさんごめん!これも仕事だから!

 

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