信長が作る未来

 次の日の朝、家臣一同呼ばれて今後の方針を伝えると言われた。


 「皆の者、昨日はご苦労。言っておった通り松平との同盟は相成った。あの剣城が出した美食のかれー、至高の水。またの名をこーら。それと奇跡の甘味けーきのお陰でな」


 「殿!こんな奴が居なくとも同盟はお館様が居ただけで相成っておりました!何もこんな褌野郎なんかにっ・・・」


 滝川さんは何でオレの事そんなに嫌いなんですか!?マジでオレ何かしましたか!?しかも、褌は好きで褌になった訳じゃねーよ!!!


 「ふん。お主らもこれを見てみろ。とらんしーばーとそうがんきょうだ!あと他にもあるがこれだけで戦が変わると思わんか?信盛!」


 「えっ?あ、はっ。これが昨日松平殿に見せた物ですか・・・。お館様も人が悪い・・・。我らにも先に説明してくれても・・・」


 「勝家!」


 「はっ。某は使い方は分かりませぬがとらんしーばーがあればお館様の命令に寸分違わぬ活躍を見せて参ります」


 「可成!」


 「この入れ物が肩に背負えて楽でしょうな。小荷駄隊に頼らずとも己の食い扶持、装備は己だけで運べそうですな」


 「サル!」


 「はっ。これを精鋭だけにでも装備が回せればあの堅城で有名な稲葉山城も全方向総攻撃で楽に落とせそうですな。いや!落としてみせます!」


 「ふん。甘いな。これだけでは稲葉山は落ちぬ。親父ですら落とせなかった城だぞ。剣城!」


 えっ!?オレすか!?何言えばいいの!?それとも他にも何か武器になる物出せと!?


 「えっと・・・とりあえずこの装備は私が思い付いた物を出しただけですので、他にも役に立ちそうな未来の物があれば部隊全員分はさすがに無理ですが、武器になる様な物も用意致します」


 「ほう。貴様は最初武器は無いと申してたが武器もあるという事なのだな?」


 「いや、探してみないとなんとも言えませんが私の技で未来の技術の書物を購入して、最初は私が装備を用立てしますがこの時代の皆様でも作れるように産業、工業を私が推進します」


 「その心は?」


 「私は見ての通り未来から来て少々歴史を知ってるくらいで、皆さんと同じ人間です。いつか死にます。もし私が今度の斎藤との戦で死んだとしたら私の技は使えなくなり、ここ尾張の発展は遅くなるでしょう。

 あの例の米も育ちにくくなるかもしれません。そうならない為にこの時代の人達に作り方を教え波及させれば良いかと思います」


 「ふん。たしかにお主が居た未来とやらの道具はどれも素晴らしい。食べ物もじゃ。だがそれより良い物もここ尾張で作れる可能性もあるという事じゃな?」


 いやそこまでは言ってないすけど?食べ物は作れるかもしれませんが双眼鏡とかどう考えても頑張っても無理じゃないすか?ワンチャン農業神様がくれたクソ不味い辛い苦い金色の実を食べさせたら有り得そうだが・・・。


 「はい。可能性としてはあります。とりあえず私はすぐに準備にかかりますので、普段の仕事を代わってくれれば助かります」


 「貴様っ!お館様に与えられた仕事を誰かに代わってもらうだと!?」


 「一益!構わぬ。ついでじゃ。お主の里・・甲賀だったのう?その下忍の手が空いてる奴を何人か剣城との伝令に回せ。とらんしーばーがあれば楽じゃがまだこれは秘匿せねばならぬ」


 「お館様!何故ワシの里の者が此奴なんかに・・・」


 「一益!ワシの意見に歯向かうのか?」


 いやマジで滝川さんオレの事嫌い過ぎるよ・・・。軽く凹みそうだよ?チョコレート、前に食べてたじゃん・・・。


 すると滝川さん、急に土下座して話し出した。


 うん。まあ現代の土下座ニスト、土下座のプロと有識者の間で有名なオレからしたらまだまだ滝川さんの土下座は甘いな。頭を床に擦り付けてるだけじゃ3流だな。


 「歯向かうつもりはございませぬ。ただ、この褌野郎に日々の糧も貧しい下忍を馬鹿にされれば某は此奴を斬ってしまいそうです。

 お館様に過分な配慮を頂き精一杯ご奉公しております。

 ですが、某は里の者を馬鹿にされれば黙っておられませぬ。此奴もどうせ草の奴らを馬鹿にするに違いありませぬ」


 えっ!?滝川さんてあの伊賀と甲賀の甲賀出身なの!?知らなかったぞ!!!


 「えっと・・・発言よろしいでしょうか?私は下忍さんがどんな仕事をしてるかとか分かりませんが、仕事で人を馬鹿にしたり蔑んだりはしませんよ?寧ろ尊敬します」


 「滝川殿?某からも。この剣城がワシの家に居たのは2日程じゃが確かにワシの家の者も透波、乱波を蔑む発言をしたら剣城は怒ったそうじゃ。詳しくは聞いておらぬが此奴は人を見た目や位で判断する奴ではない」


 「であるか。一益がそこまで言うのも珍しい。面(おもて)をあげい!ワシに楯突いた事は不問とす。もし此奴が人を見た目で判断する奴ならワシが里の奴ら皆を面倒みよう」


 「お館様!?そんなにこの褌野郎を信用しておるのですか!?」


 いや、だから今は褌じゃねーじゃん!


 「信用?いや違うな。此奴が行う事は理に適っておる事が多い。それに誰も成し得ん事を既にしておる。

 ワシは此奴が活躍し過ぎて譜代の家臣共と軋轢が生じようともワシは成果を出す奴を使う。

 そこに家柄や身分、容姿は関係ない。身分に胡座をかいて何もせん奴なんぞ片腹痛いわ」


 「はっ。浅はかな某の考えを聞いて頂きありがとうございまする。我はこれより里の者に渡りをつけまする」


 「ふん。励めっ!それと、ワシは年内に稲葉山を落とす。何回も言っておるがこれはワシが作る歴史じゃ。皆の者!!ワシに着いて来い!未来を見せてやろう!」



 「「「おーーーーっ!!!」」」










躑躅ヶ崎館



 「先程松平に潜ませておる間者から織田と松平が同盟を結んだと報告がありました」


 「織田?あのうつけと同盟か?」


 「はっ。あの今川治部大輔殿を運だけで討った男と同盟です」


 「義元も大概うつけじゃのう。あの雨の中長い隊列で馬廻りも疲弊しておった様じゃが討たれて当然じゃ」


 「でもそのお陰で我らも勝機が見えました。治部大輔殿の倅、あれは本当の馬鹿です」


 「そうよな。間を置かず織田を攻めれば良いものを。松平の坊ちゃんには今のまま監視を続けよ。刻が来たら駿河を取るぞ」

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