間話 国友芳兵衛の閃き

 〜剣城が島津義弘と、さつま汁を飲んでいる時の、那古屋に新しく作ったドックでの出来事〜



 「一同!休憩だ!!」


 「うむ!もうあと一息ってところだな!」


 「ははは!流石、岡部殿の一門衆だ!熱田の宮大工だったとはお飾りではなかった訳だな!」


 「善兵衛!名前で呼んでくれと言っているであろう!又右衛門でいい!これからも共に仕事をする仲だ!」


 「父上!あっ!?岡部様!」


 「おう!倅殿!どうされた?」


 「尾張船1号に装備させる舷側砲が完成致しました!これを見て下さい!」


 ドォ──────ンッ!!!


 「「「「おぉ〜!!!」」」」


 「うむ!実に素晴らしい!お館様もさぞ喜びになるであろう!」

 

 「ふん。まだまだだな。こんな物1門で満足するようじゃ──」


 「右舷、左舷、共に7門ずつ装備できるように量産しております。この剣城様の兵器書によると、左右の射界が狭いと書いてありましたので、ここを回して旋回できるようにしました」


 「チッ。それだけか」


 「他には予備シリンダーや、不足の事態に陥っても大丈夫なように、潤滑油として菜種油を活用するようにしました!岡部様!如何ですか?」


 「とうとう、すたーりんぐえんじんとやらが出来たのか!?」


 「結構前から既に完成はしていました!巨大な船を動かすにはそれなりに時を要しました。ただやはり熱伝導効率が悪く思いますね。直に次代のえんじんなる物の開発を急ぐ必要があるかと」


 「そこに関しては倅殿の得意分野であろう?頑張ってくれ」


 「実は試作で作ってはあります。蒸気タービンと言うそうです。兵器書の中に書いてありまして端的に言うと、お湯を沸かして発生させた高温高圧の水蒸気を、棒などを通して噴出・膨張させながら方向を定め、それを羽に吹きつけて回転エネルギーに変換する装置です」


 「うむ。分からん!だがそれを作るのも相当な時間が掛かるのではないのか?」


 「加藤様達と共に作りました。見て下さい。剣城様が出してくれた石炭を燃料に使い、この水タンクに熱を与えます。そしてこの末広がりになっている鉄を通し、このプロペラが回る仕組みです。ちなみにこの鉄の中に何枚ものプロペラを入れて、回転力を上げています」


 「そっちの方が簡単に見えるが、何故それを採用しなかったのだ?」


 「実はこの石炭と呼ばれる燃料は、剣城様しか出せません。甲賀の人達が遠征して、越後の山から少し採掘してくれますが・・・中々・・・。この地図に書かれている、ほっかいどう?と呼ばれる所では採掘できるようです」


 「これに関しては剣城が帰って来てからだな。倅殿はじょうきなんとかってのを、実用化に向けて頑張ってくれ!それにこれだ!船はほぼ完成している!後はすたーりんぐえんじんを乗せるだけだ!ははは!」


 


 岡部様は上機嫌だけどこんな船ではだめだ。進む。旋回しかできないのは許せない!後ろに動く動作もできないと、剣城様が出した船に追いつかない!絶対に剣城様が驚く船を造ってみせるぞ!


 

 もう一度、蒸気タービンなる物をおさらいしよう。


 ふむふむ。水をこのやかんで沸騰させ、出てきた蒸気をこの風車に当てると、膨張した蒸気でこの風車が回ると・・・これが蒸気タービンなる物の原理だよな。これは分かる。そして・・・。


 うむ。圧力を上げる為にポンプなんかを使えば良いのか。うん?待てよ!?この書物によると、銅線を何重にも巻き磁石を噛ませると、電気なる物が生まれる・・・。それをこの蒸気タービンで・・・。


 分かる!分かるぞ!!だがこれは一大事業だ!革命が起きる!いや待て待て!この運動能力が使えるなら去年、皆で工事した水力発電の完成ではないのか!?剣城様!お待たせしました!もう少しで電気なる物が完成致します!これは忙しくなるぞ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る