砲撃開始

 なんとまあ、こんな所に入り口というか出口があるんだな。普通にしてたら分からないな。


 「少し土塁で高さを出し、川が氾濫しても水が溢れないようにしております」


 「流石ですね。私も城を造る時、参考にしようかな」


 「芝田殿は城を造る予定があるので?」


 「そりゃいつかは欲しいですよね。男なら一国一城の主を目指すもんでしょう!?」


 「夢が大きくて宜しいですな?では、私はそんな芝田殿を、日の本に知らぬ者が居ない武将にしてみせましょう」


 調子いい人だな。けど、これが本物の軍師というやつなのだろうか。さっきまで殺しそうなくらいムカついていたが、この竹中さんの言葉には一つ一つ力があるというか何と言うか。慶次さんや信長さんとは違う何かがあるな。言霊でもない何かだと思う。上手く言えないや。


 「竹中に言われなくともこの剣城はやる男だ。俺は剣城の横で槍、刀を振るい世界の酒を飲み干す事が夢だ」


 「がははは!ワシは世界の甘い物を食べ尽くす事じゃな!」


 おいおい!一応今隠密行動だぞ!?夢合戦してどうすんの!?


 「意外に険しくない洞窟なんですね」


 「ここは道三様の時に作った道で今や知ってる者も、ごく僅かでございます」


 「殿、少しお待ちを。俺が先行してきます」


 「剛力君、ごめんね。よろしく」


 剛力君はまだ竹中さんを信用してないと。その事が分かってか、竹中さんも何も言わずに見送ったな。15分程経つと剛力君が戻ってきて、竹中さんの言う通り、城の真下の広い家の小屋に通じていると言った。


 「これで少しは信用してもらえましたか?」


 「まあ少なくとも今はな。だがおかしな真似をすると・・・分かるな?」


 「小川殿と申しましたね?そんな殺気を出さないで頂きたい。いくら私でもこの豪傑を前に、生き残る自信は無いですよ?ほほほ」


 それでも余裕のある感じだな。適応能力が凄いな。さっきまで色々びっくりしてたくせに。


 出口は石階段みたいになっており上は木の蓋?があり、開けるとそこは本当に小屋みたいな所で、隣にデカいだけの家があった。剛力君も調べたが本当に誰も居ないようで、そちらにお邪魔する事にした。


 「あまり大きな声出せないけど全員揃った!?」


 「はっ。小泉砲撃班、揃いました」「杉谷狙撃班、揃いました」「前田斬り込み隊、揃ったぞ」「芝田親衛隊も揃ってます」


 また慶次さんは直球な名前の隊だな?斬り込み隊とかカッコイイじゃないか!?親衛隊も厨二心くすぐるな!?


 「まずは、小泉さん!一の門、二の門、三の門を同時破壊。持ってきた野戦砲で出来ますか?」


 「任されたし」


 「くれぐれも西の方角は狙撃しないように。下に馬舎があるから、もし壊すと後でノアに叱られるよ!?」


 「はっ!気を付けます」


 「続いて杉谷さん!城門を壊せば城の者が何事かと見るでしょう。偵察の人を狙撃!状況を把握させないように。大軍が押し寄せたように見せて下さい」


 「了解でございます」


 「その後、慶次さん達斬り込み隊は随時城の中に潜入、酒池肉林を体現する愚か者をオレの前に連れて来て下さい。どうやって体現するのか・・・じゃない!そんな城主の風上にも置けない奴は必要ない!そうですね・・・。シングルモルトウイスキー3本!でどうですか?」


 「ははは!俺に任せろい!」


 「小川さんと竹中さんは、落ちてくる人の選別をお願いします。従わない人は容赦なくお願いします。従うと言うなら、後方の鈴ちゃん達の野戦病院に連れてって健康診断。怪我してるなら治療するように」


 「ワシも戦いたかったが仕方ないのう」


 「では・・・始めましょうか」


 俺は買ったばかりの軍配を左手に持ち、右手にはトマホークmk-2神様verを持ち、軍配を大きく振りかざす。


 「一番砲発射!続いて二番砲、三番砲発射!撃てッ!!」


 

 ドンッッッ!! ドンッッッ!! ドンッッッ!!



 俺はすかさずトランシーバーで状況を聞く。


 「小泉さん!?状況は!?」


 『はっ。三番共に命中!一撃で門を破壊いたしました!』


 「よしっ!野戦砲は下がらせて、小泉さんは乱戦装備に切り替えて、予備隊に回って下さい!」


 『了解です。通信終わり』


 「なっ、何事かッ!?」「雷みたいな音が鳴ったが!?」 「まさか織田の兵かッ!?」


 パンッ!  パンッ!  パンッ!


 「ウッ・・・(バタン)」 「おいお前!どうした・・・。死んでい・・る!?」


 パンッ!


 「そのとらんしーばーは素晴らしいですね。即座に状況が把握でき臨機応変に対応ができますな?」


 「まあそのように作られた物ですからね。竹中さんは心苦しくありませんか?一応、元味方でしょう?」


 「そりゃ裏切り者と思われるでしょうな。ですが、さっきも言った民を盾にする者は人に在らず。城主なら誰よりも先頭に立ち皆を鼓舞し、皆を励まし、責任を取る者。それが出来る者は自ずと周りが進んで矛となり盾となる」


 深い言葉だな。オレも頑張って目指そう。たが、どうやって酒池肉林を始めたのかだけは聞かないと!!


 『杉谷狙撃班。順調に敵を屠っております』


 「流石です。城の方は騒がしくなってるけど慌ててる感じは?」


 『敵の長槍隊の槍の刃先が壁から見えていますが、こんな城を守るのに長槍隊を配置するのは竹中殿が言ったように、斎藤龍興は戦の素人のように思えます』


 「油断はしないように。そのまま狙撃をお願いします。もし余裕があるなら、何発かだけ国友さんから渡された太い銃でも撃って壁も壊してしまいましょう」


 『よろしいので!?』


 「杉谷さん・・・。やってしまいなさい!」


 『ありがとうございます。通信終わり』


 「慶次さん、聞こえますか?」


 『おう!聞こえるぞ?思ったより人が少ない城だな』


 「敵は状況が分かっていないのでしょう。それよりもう少ししたら、あの一丁だけ用意した太い銃で壁を破壊するように言いました。その後、突撃お願いします」


 『了解!良い報告を待ってろよ〜!通信終わり』


 よし!指示は問題なく出せたぞ。初めてな割に上手くいってるな。


 「言葉巧みですな?芝田殿はいつもこんな感じで?」


 「いえ、指揮するのはこれで2回目ですよ。1回目は私は何もしなくて、慶次さんやこの小川さんや大砲を撃っている小泉さんが散々敵を掻き回しましてね?あっ、敵は中伊勢の関なんとかさん?って人だったかな?」


 「殿、関成重様です」


 「そうそう!その関成重さんです!」


 「芝田殿くらいになると敵の名前すら覚えていないと!?では私は名前を覚えて頂いてた辺り、喜んでもいいですかな!?ほほほ」


 「我が君!?ワシは待つのは合わん!殿もそうでございましょう!?あの斎藤何某の酒池肉林を止めたいのでしょう!?ここはこの小川三左衛門にお任せ下さい!慶次とは違う道から向かいましょうぞ!?おい!ヒヨッコ!?お主は元斎藤家家臣なら、他の入り口も知っているだろう!?殿に早く教えんか!!」


 いや誰も突撃するつもり無いんだけど!?小川さんが戦いたいだけだろう!?けど・・・斎藤龍興・・・。オレはまだ知らん女体を堪能して・・剰えオレは苦労してるのに、自分の立場を利用していい思いをしていると・・・。クッ・・許せん!!今すぐ女の子だけを助けに行かないと!!


 「剣城様!御免ッ!(バチンッ!)」


 「はっ、お菊さん!?」


 「いつもの恒例のやつでした。申し訳ありません」


 「いや、オレの方こそごめん」


 「チッ。菊が。余計な事を」


 「今のは何だったのですかな?」


 「いや、竹中さんすいません。忘れて下さい。これには深い深い、海より深い理由があるんです」


 「ほほほ。いつか理由を聞いてみたいですな?では前田殿の反対から向かいましょうか。その代わり・・・私に兵を預けていただきたい。私もただで死にたくありませんからね?ほほほ」


 「まあ裏切り者と分かれば、せめて竹中さんだけでもとは思われますよね。うん。ダメです」


 「うん!?今なんとっ!?」


 「だから兵は預けられません。オレはこの甲賀の人達を死なさずに帰す約束をしています。竹中さんはそりゃ凄い軍師でしょう。オレなんかよりも素晴らしい作戦、陣営、画期的な攻撃方法を知っているでしょう。ですが、この隊は誰にも預けません。例えば信長様にでもです。私の配下です」


 「・・・・・・・・・」


 「お気付きでしたか・・・」


 うん!?いや別に気付いてないけど!?本当に小川さん達や大野さん一族の人達を、殺させたくなかっただけなんだけど!?


 「私の作戦には少なからず何人か犠牲になるだろうと予測して立てております。芝田殿はこの戦で死者を出したくないと思いですね?」


 「そうですね。一対一で戦うな。卑怯と言われても気にするな。少しでも相手の力量が上なら撤退せよ。と伝えてあります」


 「ほほほ。芝田殿と敵だった時は私はしくじりましたが、奇遇ですね?私も芝田殿と同じ考えですぞ?死んでは何も意味が無い。使える手は使えと私の配下には毎回伝えております。だから、斎藤の殿達からは私は嫌われ者だったのでしょうな。まあ良いでしょう。また道案内致しましょう。付いて来て下され」


 『杉谷隊。国友大筒砲、発射致します。剣城様?カウントダウン、よろしくお願いします』


 「了解。あのデカさだからかなり反動あるし、火薬の量もかなり入れてると聞いたから、気を付けて撃つように。5、4、3、2、1!撃てッッ!!!!」






 ドゴォォォォォォァ───────ンッッッ!!!!






 いやこれはやべーわ。野戦砲より小さいのに威力が4倍くらいあると思うんだけど!?壁の周りに居た槍持った人達可哀想だな。あれは助けられないな・・・。


 「芝田殿!?あれは一体・・・・」


 「私の村で開発した国友大筒砲とでも申しますか・・・。城門を破壊した野戦砲より小さいですが、威力はご覧の通りです」


 「・・・・・・・・」


 ふん。竹中に勝ったな。ビックリして無言になってるわ。国友さん!サンキュー!


 『杉谷隊。目標命中。戦果、大と推定します。ただ、申し訳ないですが2発目は難しいです』


 「お疲れ様。お見事です。下がって鈴ちゃんに見てもらうように。多分肩がやられたんじゃないかな?とにかくありがとうございました!通信終わり」



〜同時刻東側〜


ドゴォォォォォォァ───────ンッッッ!!!!


 「なんだなんだ!?」「何だ今の音は!?」「野戦砲の音じゃないぞ!?」



 「前田斬り込み隊諸君!待たせたな!やっと戦らしい戦じゃないか!負け戦程は楽しくないが、この人数で城攻めは古今東西聞いた事ないッ!見事我ら芝田隊!前田斬り込み隊で稲葉山城を落とそうぞ!」


 「「「オ─────ッッッ!!!」」」




〜西側〜


 「何やつッ!?貴様!?竹中か──」


 「うるさいですね?(スパッ!)」


 いや今どうやって斬ったの!?初動が全く見えなかったんだけど!?この人自分で軍師とか言ってるのに、やっぱりバリバリ武闘派じゃん!?


 「さっ、芝田殿?首級を」


 え!?オレ首いらないんだけど!?


 「我が君は首に興味ないそうじゃ。覚えとけ!ヒヨッコ!」


 「そうですか・・・。今の人物は龍興様の文官の方だったのですがね。要らないなら先を急ぎましょう」


 今思い出したんだが、このままオレ達がこの城制圧したら、木下さんの墨俣一夜城の話が無くなるんじゃないの!?

木下さんの出世が・・・・。


木下さん!ごめん!手柄奪ってしまったかもしれない。別の機会で埋め合わせするから許してチョンマゲ!!

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