冬の水泳!?

 少し待っていると信長さんが起きたらしくやっと呼ばれた。


 「来たか。サルにあの村で貴様が1日居ると聞いたがワシは許可した覚えはないんだがな?」



 信長さん・・・クッソ機嫌が悪い件。



 「申し訳ございません。村の人達に私が助けられて、その内2人が死んでしまいまして弔ってました」


 「ふん。まあいい。サルと貴様の後詰と殿(しんがり)に助けられたのは事実だ。此度は不問とする」


 少し沈黙が続いたがオレは声を掛け少し退出して、伊右衛門さんにカレーをよそってもらい部屋に戻った。


 「遅れてすいません。味はいつも食べてるのと変わりませんが今日は村で育てたニワトリの肉を使っております」


 「ほう。量産体制にもう入ったのか?どれ一口・・・。これだ!これなのだ!相変わらず美味いのう。かれーを食べれば戦の怒りも消えるもんよ」


 そこから信長さんは戦の事を教えてくれた。例のコシヒカリを食べ、兵士全員ではないにしても3割の兵士は今までより体が軽く力も強く感じ、実際、槍の訓練時も皆威力が凄まじいくらいに上がっていたそうだ。

 それと直接的な武器ではないにしても敵の全容が分かる双眼鏡、直ちにやり取りができるトランシーバー、これだけで後は力押しで勝てると思い・・・結果、負けたらしい。


 「抜かったわ。いや・・・貴様の技に慢心しておった。未来の物を使えば武器ではないにしてもワシは勝てると思うておったが甘かった。

 此度はワシの失態じゃ。許せ。それとあの村の者に褒美を渡す。沢彦を代理で行かせたがワシも一度村に行こう」


 「分かりました。私も今回で如何に自分が無力か痛感しました。未来は平和でほとんどの人が戦の経験がありません。勿論、私もです。

 明確な敵意、殺意を初めて感じ動けなくなり・・・村の千吉さん源蔵さんという方を亡くしてしまいました。

 もう出し惜しみせずに織田家を他家が戦をしようと思わなくなるまで大きくしてみせます」


 「ほう。貴様が言えば本当の事に聞こえるな。だがワシは貴様だけに慢心はもうせん。次の戦略も練っておる。信清の城じゃ。

 あの馬鹿の犬山の城を落とす。年明けに拠点をここ清洲から小牧山の城に移す。

 奇妙丸がここ清洲の臨時城主ぞ。貴様とサルは清洲に残り守れ。奇妙を補佐せよ!それと、国友が堺から帰り次第新武器を量産せよ」


 「分かりました。それと、大変に言いにくいのですが資金の方の目減りが凄まじく大きな物が買いにくいので村の任務と並行しながら資金調達をしてもよろしいでしょうか?」


 「ふん。貴様はワシが何も用意してないとでも思うておるのか!?受け取れ。貴様は現物が良いと言うておったがワシは未来が何の価値があるか分からん。とりあえず10貫じゃ」


 「ありがとうございます。とりあえずウナギや松茸なんかを資金にします。国友さんが戻ってくるまで村の人達と動きます」


 「ふん。良きに計らえ。それと、今一度軍議を行う。明日村に向かう。今日の夕餉は親子丼を所望する」



 そう夜ご飯の要望を聞いてオレは部屋を後にした。久々にカレー以外の料理を聞いたな。それにしても4歳の息子の補佐ってなんだよ!?まだ喋るのも儘ならない歳じゃないのか!?


 とりあえず、武器を国友さんに作ってもらい、早めに残りの実も信用ある人に食べてもらうのと、花火なんか作ってもらいたいな。それに乗り物の事聞かれると思ったが案外聞かれなかったな。

 まだ伝達がいってないのか!?まあやる事がいっぱいだ。一度村に戻ってうなぎでも探そう。




 「お菊さん居る?」


 「はっ。ここに」


 「いつ見てもどこから現れるか分からないな。今から村に行こうと思ってるんだけど、お菊さんってうなぎって分かる?」


 「ウナギとは・・・あの細長い気色悪い生き物の事でしょうか?」


 「うん!?そんなに気色悪い事は・・・人によっては・・・まあそんな事はいいか。多分それで合ってると思います。そのうなぎってどこら辺に居るか分かる?ちょっとあれを捕まえたいんだけど」


 「あんな気色悪いのなんか川に行けばどこにだっていますよ?」


 「えっ!?マジか!!!お菊さん!ナイス!!村に行って人手を借りて捕まえましょう!!!それにあのうなぎマジで美味しいから!!!」


 「え!?まじ!?ないす!?どう言う意…」


 「さあ!早く行きましょう!!」


 ご機嫌でオレは例のキャタピラバイクで村に向かった。この時、城の兵に見られて後で信長さんに詰められるとは思ってもなかった。



 

 「おう!剣城!千吉、源蔵は送ってやったぞ!今日はどうしたんだ?」


 「八兵衛村長!急で悪いんですが人手を集めてもらえませんか?かなり寒いんで申し訳ないんですがうなぎを捕まえたいんです!」


 「あんなのわざわざこんな寒い中捕まえなくてもいいんじゃないか?それにワシは他の者に頼みにくいぞ!?」



 《大容量清酒10ℓ》


 

 「これでどうですか!?」


 「・・・・・人手は何人必要か?言われた人数を用意しよう」


 チョロいな。


 「とりあえず10人くらいで捕まえれるだけお願いします。それでその後はこのウナギを食べます!かなり美味しいですよ!特に米にめっちゃ合うんですよ!なのでお米も用意しておきましょう!」


 「分かった。村の女衆に米の用意を伝えておこう。それとウナギなんかそこら辺に腐るほど居るからこんなに酒は要らなかったんだけどな。けど絶対に返さないぞ!?」


 「いや、うなぎはそれだけの価値があるんです!とりあえずお願いします!」


 そう言って八兵衛村長は男の人を集めて村近くの川に向かった。


 「みなさん、この寒い中ありがとうございます!うなぎを捕まえられるだけこの籠に入れて下さい!」


 「本来ならいくら剣城の言う事でもこんなクソ寒い中、川の中になんか入りたくないんだがな?まあ酒の為だ。八兵衛?約束は守れよ?」


 「ああ。分かってる。野郎共っ!!!!ウナギ10匹であの澄み酒、湯呑み一杯だ!励めよ!!!」


 「「「おぉぉぉぉう!!!!」」」


 いや八兵衛村長!?せこい!!せこ過ぎるぞ!!!ウナギ10匹でコップ一杯の酒とか・・・ボッタクリ過ぎだぞ!?

 

 さぁオレも一緒に捕まえ・・・ちべたっ!!糞!!川めっちゃ、冷た過ぎ!!


 「おーい?剣城?そんな所で何してるんだ?早くこっちだ!ここにいっぱい居るぞ!?」


 分かってるって!分かってるんだよ!!冷たくて中々足が進まないんだよ!!!そこでふと足元を見てみると確かにナマズかウナギかの区別は流れの上からじゃ分からないが確かに黒い長細い魚はまぁまぁ居た。

 居たが、村の人達は上手いこと器用に腕を使いながら籠にウナギを入れているがオレはどうしても頭を捕まえてしまう癖があり全然捕まえられなかった。


 「剣城!違う!こうだ!こうやって腕を使うんだ!素人か!?こうやるんだって!!」


 村の男手の1人、茂吉さんがドヤ顔で教えてくれてるが・・・あんた素人か?って・・・そりゃ素人だよ!!!ウナギ獲るプロなんか居ねぇ〜だろ!?これはあれか!?茂吉さんのオレに対する挑戦状か!?


 「こうなったらうなぎ絶滅作戦!!出でよ!!トマホークmk-2神様ver降臨!!ふっはっはっはっはっ!うなぎ如きが人間に歯向かいやがって!己らは絶滅じゃ!!うりゃっ!!!」


 パスッパスッパスッパスッパスッパスッパスッパスッパスッパスッパスッパスッパスッパスッパスッ



 「剣城、待て!顔に水が掛かる!冷たっ!」



 「ふっはっはっはっはっ!死ね死ね死ね死ね!己はオレら人間の糧になれ!ふっはっはっはっ!!」


 「「「剣城っ!!!!!」」」


 バシャ───ンっ!!


 「冷たっ!!八兵衛村長!何するんですか!?」


 「何するかじゃない!剣城のせいで顔まで濡れたじゃねーか!」


 「そうだそうだ!折角ワシが捕まえ方教えてやってるのに、そんな未来の物出しやがって!」


 「そんな事言ったらオレだって全身ビショビショに濡れましたよ!!八兵衛村長のせいで!」


 「何をっ!?これでも喰らえやっ!」


 バシャ───ン!


 「八兵衛、貴様!うりゃっ!!!」


 バシャ───ン!


 「やりやがったな!?この五条川はガキの頃からワシの縄張りじゃ!おりゃっ!!」


 バシャ───ン!


 

 

 「剣城様も男共もこんな寒い中、何やってるんだい全く・・・あっ、おつやさん!?」


 「たみこ様、たまにああやって剣城様はおかしくなる時があるのです。なんでも内なる自分が出るのでああやって発作を抑えてるらしいのです。私達に害は無いので放っておいてあげて下さい」


 「そうかい?こんな寒いのに体を壊さなかったら良いんだけど・・・ってウナギがあんなに浮いて・・・あれ!?頭が潰れてる!?」


 「男共は放っておいて私達はあの浮いてるウナギを獲りましょう」


 「そうだね。なんでも、これ捕まえたら剣城様が未来の褒美くれるって言ってたよ?」


 「本当かいっ!?なら頑張って獲ろうかい!私ゃあのちょこれーとがまた食べたいんだ!」


 「なら褒美が貰えるよう女衆も頑張りましょう!」

 



 結果・・・男衆より女衆の方が籠一つ分多くウナギを捕獲したのだった。オレ達男衆は冬の川で真夏の様に川遊びをして10人褌一丁で村まで戻ってきた。


 「あぁぁぁぁ〜さぶい!ヘックションッ」


 「各々方・・・これからはもっと考えて行動しようか。冬の寝る時も怖いが今日は馬鹿をした・・・」


 「そうだな・・・。八兵衛、済まなかった」


 オレ達は無言のまま籠の前に座り震えていた。

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