1561年のリア充

 朝起きて約30分程でバタバタと昨日の夢?みたいな出来事があったがなんとなく分かった気がする。


 「おーい?起きたか?」


 外から八兵衛村長から声が掛けられた。


 「今さっき起きたとこです。昨日から色々ありがとうございました!」


 「そうか。そうか。あまりに具合悪そうに寝てたもんで、卯の上刻(夜明け前)には起こさなんだ」


 卯の上刻って何時頃なんだよ!?


 「えぇ。はい!お陰様でゆっくり寝れました!」


 実は背中痛いし、藁チクチクするし、神様とお喋りしたせいで寝れた気がしないんだけどな。


 「もう巳の中刻だで、今日は遅くなったが朝飯の時間だ。大公家さんだとしても、働かぬ者にタダ飯は食べさせられない。今日は構わないが明日からは少しでもいい。畑を手伝ってくれ」


 オレももさすがにここまでしてもらって何もしない、タダ飯食らいはできないと思った。


 「はい!勿論、手伝わせて下さい。迷惑掛けてすいません」


 「家族を紹介しよう。妻の、おつやだ。その後ろに居る5人が大きい順に、一郎、二郎、三郎、四郎、五郎だ」


 「八兵衛の妻おつやです。此度は村にお越しいただきありがとうございます、狭き家にてすみません。何も出来ませんがごゆるりとお過ごし下さい」


 めっちゃ、丁寧やん!この奥さん、どこか武家出身の方ですか!?と聞きたくなるくらい綺麗な姿勢で綺麗な受け答えだった。


 「芝田剣城と申します。この度は八兵衛村長に助けて頂きました。大変助かっております。できる限り早く自立できるように頑張りますのでもうしばらくだけ面倒をお掛けします。八兵衛村長から聞いてるかとは思いますが自分、記憶があやふやなので出身も右も左も分からず困惑していたところでして唯一名前だけは覚えてる感じです」


 「左様でございますか。いつまでも狭い家ですが使って頂いて結構ですので記憶が戻るまで養生して下さいませ」


 なんだ?この女性?本当に村長の嫁か!?うらやま………けしからん!!!


 「嫁凄いだろ?本来ワシみたいな農奴とは家格が違って婚姻は結べなんだがおつやの父上は織田軍の物頭だった方だ。そして凄い面倒見の優しい方だった。先代の殿様の時に加納口での撤退戦にて、お亡くなりになられ、その時は小物も小物で、とてもじゃないが守りきれなんだ。今際(いまわ)の時、他の小物達と皆で後を追おうと思い敵に突撃しようとしたところを・・・グスンっ」


 八兵衛はここで涙を流した。それを妻のおつやが優しく背中を撫でる。


 「そこで頭は小物にも分かりやすく『ワシは後を追われる人間ではない。主達はこれからも、先の世を大殿様、若殿様の手となり足となり支えよ』と申され果て申した。

 そして命からがら、途中、同村の小物達が沢山脱落したがワシはその時の村に帰ってこれた。その報告を。ワシがおつやの家に報告に行った。それから迷惑かとは思うたが、おつやの家に米を持って行ったり雑用や使い番などをしておったら、おつやの方から婚姻の事言うてもらって…………………………etc」


 途中までオレも、お涙ちょうだいするとこだったのにむしろ奥さんのお父さんめっちゃカッコイイ最期やし。やのに!やのに!!最後、八兵衛村長さんよ?あんたの甲斐甲斐しい努力。大変尊敬するよ?ただ……………。


 うらやま……けしからん!!!!人が、しかも父さんが死んでるから違うかもしれんが最後ノロケかっっ!!リア充かっっ!!!!!

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