賭け事大好き山科言継
それから夜まで色々話をした。京の生活や一乗谷での生活の事、飛鳥井さんも色々他国を回った事があるらしく、相模の事なども教えてくれた。
「して、芝田殿はどちらの出身でおじゃるかのう?」
「えっと、出身は伊豫国で、育ちは相模でございます」
「なんと!?そんな遠い所からと!?」
うん。本当は時代を跨いだもっともっと遠い所からっす。けど未来から来たと言っていいとは、信長さんに言われてないからな。
「少し・・・一乗谷に居る折に澄み酒を飲んだが、どうも尾張産と聞いている。今宵はそれをお願いできるか?酒が入れば話しやすい事もあろうよ」
「山科殿は無類の酒好きですからな?麿は酒よりこの地の飯を所望したい」
飛鳥井さんは見ての通りオレよりポッチャリしてるから、食べる事が好きなのは分かります、はい。
「飯は城の料理人に任せておりますが、期待して良いかと思いますよ。夕餉まで時間がありますので、少し遊戯と致しませんか?まずはこれを・・・」
「な、な何ですか!?これは!?えらく精巧な・・・」
「とりあえず続けますね。ここをこうやって押すと光りまして、4つの色がこのように変わります。そしてこのサイコロを振り、紙の上を出た数だけ進み・・・」
「双六かッッッ!?!?」
いや、目の色変わり過ぎだろ!?山科さんやっぱやばいわ。
「そ、そうです!双六にございます!このようにサイコロを振り・・・試しにしてみた方が早いですね。私がやってみます。見てて下さい」
見てもらう方が早いので適当にサイコロを振り、出た数は3だった為、駒を3つ進める。
「山科様の駒がこれで、飛鳥井様の駒はこれです」
「何と!?我らの家紋を彫った駒を用意しているのか!?麿達の事を調べていますな?」
うん。農業神様達が用意してくれたからな。多分この出来事も、神界かどこかのモニターで見てるんだろ!?
残る駒は織田木瓜紋と何故か丸に鍵十字・・・島津さんの家の家紋の駒だ。
「とりあえず続けます。今3で止まりましたので3マス進めます。そしてこれに書かれて・・・・・」
「うむ。どうしたのじゃ?3つ進めてどうするのじゃ?」
クッソ!これに書かれている事はなんだよ!?
「これに書かれている事をやります・・・。ちなみに今止まった所に書かれている事は、コーラ一気飲みです」
「ふん。こーらとは何ぞや?」
「失礼致します。剣城様、どうぞ」
何でこんな時まで金剛君は動きが早いんだよ!?用意しなくていいよ!
「これを一度に飲みます。そして飲み干せば横に分けられている場所に、予め決めておいた自分の色の光を灯します。こうやって・・・」
「「おぉぉぉぉ〜〜〜!!!」」
「なんと幻想的な火か・・・これはどうやって!?」
はい!電球だと思います!恐らくマナという物質で光っていると思います!と言えれば早いが何て言おうか・・・。
「これには色々理由があるのです!そこはまた追々言いますので勘弁して下さい。とりあえず飲みますね」
「その泥水を飲むのか!?さすがにそれは酷いというか何というか・・・お試しだからしなくてもよいですぞ?な?山科殿?」
「いやだめであるッッ!!勝負事は試しもへったくれもない!男に二言はあるまいな?芝田殿?」
くそ山科が!覚えておけよ!?この紙に書かれている事はヤバイ事ばかりだ。農業神様も変な事書くなよ!?
「ゴグッ ゴグッ ゴグッ ゴグッ (ブッ・・・ブボォォッ)」
「うっ・・・ば、ばっちぃ〜」
「おいこれ!芝田殿!?行儀が悪いですぞ!?」
じゃああんたらも飲んでみろよ!?ぜってぇ〜飲めねーよ!!!
「剣城様、お二人へ」
「さすが金剛君!分かっているな?」
「はっ」
「お二人もお飲み下さい。私の辛さが分かるかと思います」
「何故このような泥水を麿達が──」
「あ、ちなみに甘い水ですので驚くと思いますよ。まずは騙されたと思いお飲み下さい」
ふん!飲め!飲め!山科さんには絶対に飲ませてやる!
「ゴグッ・・・・え?甘い!?そして口の中で動く!?」
「おっ!?これは美味い!初めて飲む水じゃ!!」
お遊びはここまでだ!
「山科様?公家が見せる一気飲み・・・見せてくれますよね?ね!?」
「お、おう・・・これを一気とな!?よかろう!ゴグッ ゴグッ (ブッ ブボォォッ・・・・)」
ほら見た事か!!勝った!オレは公家に勝ったぞ!!
ゴツンッ
「この阿保が!少し席を外せば、貴様は御公家様に何をしておるのじゃ!!山科殿?飛鳥井殿?許して下さい」
気付けば退席した信長さんが戻ってきて、早々にゲンコツもらいました。どうもありがとうございました。
「ほほほ。良い!良い!ちょうど良い余興じゃ!そもそもこれは山科殿が芝田殿を煽った結果。のう?山科殿?」
「(ガァー) ウップ・・・失礼。うむ。これは麿が仕掛けた事。そう咎めなさんな」
「ならば良いですが・・・飯までもう少し掛かります。お待ち下さい」
そう言って信長さんはまた退席した。
それから少しの間だが、要領が分かった双六合戦が始まった。
「遠藤?剣城を接待役にして良かったのう?勝家もあの場に居ろと言うたのにな。のう?勝家?」
「そ、某は公家相手には・・・」
「ふん。彼奴も公家は初めてだとは思うが聞いてみろ!」
『あっ、ちょっと山科さん!?取れるのは一国だけですよ!』
『よし!次は麿の番だな!?ぬぅおっ!?なになに!?渾身の短歌を一首、即興でだと!?ぐぬぬぬ・・・』
「公家があのような言葉遣いで我を忘れ、本気で遊戯を致す・・・。山科は双六が殊の外(ことのほか)好きらしいな?よく調べている」
「で、ですが某が接待役と聞いたのは先日でして──」
「黙れ!彼奴も配下を使い上手く立ち回っておる!戦働きだけではいかんのだ!勝家はもっと京の事を知れ!いつか中央に出向く事になれば、お主を連れて行くつもりだ!田舎者と笑われたくはないであろう?」
「はっ。申し訳ございませぬ。今宵に挽回致しまする」
「うむ。飛鳥井は酒と美食に拘っておるらしいぞ?織田のカレー、ウナギ、この地で取れたカボチャのスープ、野菜の天麩羅、ケーキ、鮭の刺身、シビの・・・マグロの刺身を醤油を持って接待してみろ!澄み酒を浴びるほど呑むであろうな?剣城は飯は凄いが酒はそこそこしか飲めぬ。無論ワシもだ。酒は勝家が相手してさしあげろ」
「はっ。畏まりました」
「度々言うがワシが言う事は、できる事と思うて言っておる!遠藤に公家の相手をしろと言わないのは、できると思うてないからじゃ!勝家!期待しているぞ」
「え!?と、殿!?それはあんまりな──」
「うむ。ならあの輪の中に入れるか?山科は賭け事の為に褌にまでなれる男ぞ!褌が似合う者は織田家では一人しか居るまい?」
「・・・・申し訳ございません。某は外周がお似合いでした」
「うむ!よう分かっておる!これぞ適材適所だ!ふははは!冗談はさておき、飯は今後、ここ岐阜と尾張に足を伸ばす目玉にする!その宣伝役に公家がなりそうじゃな?勝家?」
「はっ。間違いないかと思います!」
「ふん。澄み酒は既に熱田の酒蔵で量産しておる!抜かるな!」
「「はっ!」」
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