豊風のドーピング。オレは馬に剥き歯される

 「え〜・・・皆おはよう!」


 「「「「「おはようございますッ!!!」」」」」


 ヤバイ・・・。マジで思い付かん・・・。こういう時こそ内なる自分出て来いよ!?こうなりゃ、やけくそだ!!!


 「これから滝川様の元へ蟹江城に向かいます!どのような作戦とか分からないけど、皆さんは皆さんの命を1番に考えるように!死んだら許さないですよ!?やれない事はやれないで結構!生きてこの村に戻って来ましょう!!」


 「「おぉーーーーーッ!!!」」


 決まった!これは決まったぞ!適当ではないが言えたぞ!


 「我らの殿は優しいお方だ!下々の者にまで優しくなさるお方だ。お前達は以前の生活に戻りたいかッ!?六角の草に戻りたいかッ!?戻りたくなければ足掻け!任務を遂行しろ!剣城を守れ!死ぬ事は許さんッ!!」



 「「「「「「おぉぉぉぉぉぉーーーーー」」」」」



 慶次さんが全部持っていきやがった・・・。オレの激なんかより素晴らしい言葉で・・・。なんならオレまで聞き惚れてしまうくらいに・・・。お菊さんもまた目がハートになってるし・・・。慶次!!許すまじ!!!二度とバーボン出してやらねーよ!!


 「剣城、すまねぇ。少し言霊入れ過ぎた」


 言霊とは何ぞ!?そんな自由に入れたり入れなかったり出来るのか!?


 「いえ、まだオレが未熟なだけです。慶次さん、ありがとうございます」


 「剣城?今日出陣か?」


 「八兵衛村長、おはようございます。はい。今から行きます」


 「我らもお供したいが、我らはこの村を守らないといけないからな。剣城が戻る頃にはもっと発展させておこう。だから戻ってこいよ?」


 「はい!必ず戻ってきます!村にある者は適当に腐らせない程度に食べて下さい!たまに村の警備の人とも飲んだりしていいので!」


 「分かった。武運長久、祈るぞ!」


 

 「剣城殿!!間に合った!良かった!」


 「芳兵衛さん?おはようございます!どうしたんですか?」


 「数は三丁しか作れませんでしたが、持っていって下さい!クロムモリブデン鋼で作った銃です!試し撃ちしかしてませんが、弾が従来より真っ直ぐ飛び、威力は3倍程増してます」


 「おっ!?流石、芳兵衛さん!!ありがとうございます!大事に使わせていただきます!」


 「はい!その成果に必ずや驚くでしょう!絶対死なないで下さいね!」


 芳兵衛君もオレの事を思って・・・。


 「剣城様が居なくなると雷管、無煙火薬、フラスコ、ビーカー、迫撃砲、粘着榴弾砲、色々開発できなくなるので!」


 あんたも物が作れなくなるからか!?酷い!酷過ぎるぞ!?オレのライフはもう0よ・・・・。


 「冗談はさておき、最後はこれです!剣城殿から頂いた書物に書いていた花火?とやらを作りました!ろけっと花火というやつです!ろけっとが何を意味するかは分かりませんでしたが、緊急時などにこの発火線に火を点け・・発火線は麻に油を染み込ませ火薬を擦り込みました」


 いや芳兵衛君はマジの花火作ったんか!?凄くね!?


 「殺傷能力はありませんが、一瞬の隙を突くにはもってこいです!危なくなればお使い下さい!」


 「芳兵衛さん!ありがとうございます!大事に使わせてもらいます!帰ってきたらまた色々書物出しますので、開発お願いしますね!」


 それから出発しようとしても、村の人達がオレを呼び干し芋やら干し柿、握りや漬物など色々貰い遅くなった。



 「ははは!剣城は面白いな!」


 「あそこまで村人に好かれる人も居ませんね」


 やっとの事で解放され、慶次さんは馬だがオレは大黒剣。皆はイージスに乗り出発した。部隊編成は、小泉家は4門の大砲及び皆の予備隊とし、杉谷家には全員国友銃を与えての狙撃班。野田、青木家は剛力君との溜池作りと同じで、大野家は大膳君に着いてもらい後方の支援、輸送補給をお願いした。

 本来は隼人君の役目だが隼人君は慶次さんが、『隼人は戦略眼を身に付けさせる』と言っていたので、いつかは慶次さんの後継者かな!?金剛君はオレの護衛だ。女の子達は甲賀の当主に着いて行くようにお願いしている。そして残る小川さん・・・三左衛門さんだ。


 「がはははは!腕が鳴りますな!?ご安心下さい!些か歳は食ってるが腕は鈍っておりませぬ!こしひかり、栄養どりんく、豆乳を毎日飲み鍛錬も怠っておりませぬ!」


 そう。この三左衛門さん。・・・熱いのだ!!熱過ぎるくらいに・・・。しかも歳は60歳だと言う。村に着いた時はヨボヨボだったのに、栄養ドリンクと豆乳を飲み出したら細胞が若返ったんですか!?ってくらい生き生きとし、コシヒカリを食べ筋力やらを増し増ししたのか!?ってくらいムキムキになったんだよ。

しかも・・・かなり武闘派なんだよな。


 「御当主殿!?どうなされた!?元気が無いようじゃが!?なーに!敵は所詮土豪じゃ!ワシがこのハルバートとメイスで、近付く敵を薙ぎ倒しますぞ!」


 この三左衛門さん・・・忍びの筈なのに、バリバリ前衛で戦う様な武器を選んだのだ。しかも選ぶ時・・・『甲賀の小童共は誰もこのはるばーととめいすを選ばんときた!天啓じゃ!これはワシがこの二振りを使えとの天啓じゃ!』と言い、その日は徹夜で大膳君が演習に付き合わされていた。


 「はは。三左衛門さんに期待していますよ!」


 オレはそう言う以外、言葉を掛けられなかった。余計な事を言えば全て熱く返ってくるからだ。約10倍増しで。


 それにしても皆のイージスマジで凄いな!?50キロ位のスピードで走ってるけど、皆疲れた顔してないんだけど!?けどこれはこれでいいけど、やっぱ慶次さんみたいに馬の方がカッコいいよな・・・。


 途中慶次さんが馬なので休憩を挟み、慶次さん自身が馬に水と村で作った飼料を与えたんだが、オレは思い浮かんだ。


 馬のチート飯作ればいいんじゃね!?

 

 あのニワトリだってオレ並みに・・・。いや、オレには勝てまい。オレより少し落ちるくらいに盛ってるんだから何とかなりそうな気がする。とりあえず今は馬の栄養ドリンクが無いか探そう。

Garden of Edenを起動する。そして動物の栄養剤と検索をかけた。


 あっ、いっぱいあるじゃん!!でも餌に混ぜるサプリメントみたいなのしかないな。

おっ!?良い物発見!!


 《神様印(じるし)の動物用栄養剤飲ませるタイプ》¥10000


効能・・・・人類が発展する時、馬、犬は人類最大の相棒(とも)なり幾度となく活躍した。その最大の相棒(とも)を労う逸品。飲ませた種の体力、筋力、瞬発力、皮膚組織、骨密度大幅up。


 これだよ!これ!!!オレは迷わず購入して慶次さんに渡した。


 「馬用の餌だぁ!?」


 「そうです!正確には餌じゃなく飲み物ですが飲ませてもらえませんか?」


 「別に信用してない訳ではないが、変な物じゃないだろうな?この豊風は老齢だが、俺と昔から共に育ってるからな」


 「多分大丈夫です!」


 「分かった。剣城を信じよう。おい、豊風!良かったら飲んでくれるか!?」


 慶次さんはオレ達に接するように馬に語り掛けていた。あんな風に接したりするから馬に乗れるのかな?オレは乗る馬乗る馬全てにフラれてるけれど・・・。今度清洲の馬にちゃんと話し掛けてまた試してみよう。心なしか馬の豊風?の顔も優しいような気もする・・・。オレと目が合ったら剥き歯してくるけど。



 「おっ、飲んでくれるか!!さすが豊風だ!」


 「ヒヒィィィィィィーーーーーーンッ!!!!」


 えっ!?あの動物の栄養ドリンクって即効性なの!?なんか足とかみるみる太く筋肉が盛り上がってきてるんだけど!?


 「豊風!?どうした!?大丈夫か!?」


 「ブォォォォ───────」


 いや明らかに馬の鳴き声じゃない件。力強い鳴き声に変わってるんだが!?


 「慶次殿!大丈夫か!?」


 「おい!善住坊!見てみろ!お前も覚えてるだろ!?あの豊風だぞ!?」


 「なに!?あの豊風がこんなに・・・」


 「慶次様・・・・。大きい・・・」


 1人卑猥な言葉で、何故か慶次さんを褒めてるお菊さんが居るけど・・・。現代のサラブレッドには到底見えないが、ポニーにすればかなりデカいんじゃなかろうか!?


 「剣城!すまん!ありがとうよ!この豊風がこんな風に若返るとは・・・」


 「良かったです!老齢と聞きましたがまだ大丈夫そうですね。ではそろそろ向かいましょう」


 慶次さんとの話の流れでごく自然に頭を撫でようと、馬に近付いたら馬に後退りされたけど・・・。

けど、オレのドーピングの考えは間違いないな!もう少ししたらフロイスだったかな!?その辺の人と出会い貿易で海外の馬を用意してもらおう。あの荷物運ぶデカい種の馬は何だったかな!?あれとかカッコいいよな!また本でも見てみよう!


 休憩が終わり蟹江城に向かって走り出したが、豊風さんや!?早過ぎじゃないすか!?


 「豊風!!良いぞ!!!無理はしない程度に走れ!!」


 慶次さん1人狂喜乱舞しとる!


 あんなに変身したかのように変わるの!?清洲の馬全部にあのドリンク飲ませてもいいんじゃねーか!?

慶次さんは本当に友のように馬と話すんだな。オレも覚えておこう。


 それから暫くの間は皆はイージスを必死に漕ぎ、オレはハンドルを握るだけだが、夕方前に蟹江城に着いた。清洲の城下程は綺麗じゃないが、普通におかしくない程度に人の往来があり、城は盛り土?にポンっと上物を置いたような城で、あまり飾りっ気も無い様な雰囲気だった。

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