木下さんからの甲冑

 お市さんの部屋を後にし村に戻ろうとすると、大荷物抱えた木下さんに呼び止められた。


 「例の出陣の挨拶か?」


 「はい。木下様との練習で吃らず言えました!ありがとうございました!」


 「あれくらいはどうと言うことはない。それとちょうど良い所じゃった。普段から色々剣城には世話になっておるからのう。受け取れ」


 「マジで!?これ甲冑すか!?かなり嬉しいんすけど!!!!」


 「そんなに喜ぶ程でもないが、お主は自前の甲冑じゃなかったろう?名のある将が無銘の刀、無銘の防具じゃと笑われる」


 「ありがとうございます!早速今回から使わせて頂きます!木下さんも出陣になったのですよね!?お互い頑張りましょう!」


 「おう!滝川殿が居るから大丈夫じゃとは思うが、張り切り過ぎて死ぬなよ?お主が死ぬとぴざやぱふぇが食えんなるからのう?はははは」


 いやあんたも食べ物かよ!?これも早く食堂してくれる人見つけないといけないな。最後は少し談笑してオレは村に戻った。

 村のオレの家でオレはお菊さん達と準備をした。


 「金剛君達はそんな軽装で大丈夫なの?」


 「はっ、大膳に後方の輸送隊を任せておりますので、自分の持ち運びはこれだけで十分かと」


 いや大膳君はかなりやってくれてるよ?けどそんなにあの変な踊りする大膳君に、全幅の信頼を寄せるか!?まあ、大丈夫だろう。


 「お菊さん?甲賀衆の人達の装備は大丈夫?」


 「はっ。滞りなく、鉄砲、弓矢、槍、戦闘服、三日分の個人兵糧、応急救護用品を各1人ずつリュックサックに用意。間違いなしです」


 「剛力君達。工兵班は問題無い?」


 「麻で作った土嚢袋擬(もどき)が少のうございます。それと国友殿に規格統一した丸釘、かすがい、ステーブルが間に合っていなく不足気味です。なので強固な陣は今回は難しく・・・」


 いや、かすがいって何ぞ!?ステーブルって何ぞ!?オレより皆の方が凄くなってるんじゃないの!?


 《初めてのDIYに挑戦!色々な釘がセットになったお得品×20》¥10000


効能・・・・素人にも優しい打ち損じをしても曲がらない釘が各種勢揃い。今だけ疲れない金槌付き。



 良い物見つけたぞ!それにトップページのバナーに面白い事書いてたぞ!『春の味覚祭り!乞うご期待!』 始まり次第買ってやろう!


 他にもそうだな・・・。滝川さん達やまだ見てないけど明智さん達の軍の人達にも、簡単に食べれる物でも用意しようか。


 タブレットを見てると面白いページを見つけた。


〜夢の100円缶詰シリーズ〜



《やきとり缶詰×200》¥20000


効能・・・・みんな大好き焼き鳥が缶詰になり非常時、ソロキャンプ、ズボラ飯、どんな時にも役立つ缶詰。人類が持つ火に溶けない缶を使用。



《おでん缶×200》¥20000


効能・・・・出来立てのおでんをそのまま加工した、神界近所の居酒屋の大将が作ったおでん。特殊な素材の缶で、開けると暖かい。



 すかさず購入したがこれまた凄い缶詰めだな!?人類の火で溶けない缶って何の素材ぞ!?暖かいおでんも気になるぞ!?他にも色々あるけどとりあえずこれだけにしよう。残金も250万程しか無くなってきたしお市さん、濃姫さんや木下さんに貰った装備は売りたくないし。


 「大膳君、この缶詰を蟹江の滝川さんと明智さんに渡すように」


 「はっ。家の武器庫の装備も持ち出してよろしいでしょうか?」


 「自分達や甲賀の人達が使うならいいよ。てか他の人は使えないと思うから」


 「かしこまりました」


 「多分、大膳君と大野家の人達は長期戦になると、物資の補給で大変になると思うけどよろしくね。隼人君は今回は慶次さんの部隊に」


 「かしこまりました」


 「琴ちゃん達は各々1人ずつ、イージスに装備してあった応急処置用具とか消毒薬、止血剤やら色々持てるだけ持って、杉谷家や青木家とかに1人ずつ配置するようにしてるから、お願いします」


 「はい!分かりました!」



 その後は行軍前の日ということもあり、オレの現代の部屋で冷凍庫にあった物だが、遠い昔ならぬ遠い未来でいつ買ったかも覚えてない、賞味期限も令和という果てしなく遠い日付けの、焼きおにぎりやコロッケ餃子などを作り、皆と夜を明かした。






 「剣城は完璧に寝たか?」


 「ベルソラム系の睡眠導入剤を飲んでもらったから、今日は深い眠りだと思う」


 「剣城は圧倒的に経験が少ないからな。それにこのところ働きっぱなしだからな」


 「つまらん事をさせて悪いな。お前達を呼んだのは他でもない。とあるツテで松永久秀という男に警戒せよ、という情報を得た」


 「松永?誰ですか?」


 慶次は柴田に聞いた事を家の皆に伝えた。


 「この数々を見て驚かない人物ですか!?」


 「要警戒だ。金剛!お前は剣城から離れるな」


 「はっ!」


 「この部隊を纏める者として言おう。軍議をとか滝川の叔父貴は言ってるがほぼほぼ、北勢の奴らの示威作戦で決まりだと思う。最新の装備で行軍させ、誰かの城を軽く一当てしてからの交渉だろうよ」


 「ならこれだけ強力な武器が多数あれば──」


 「慢心はするな。何が起こるか分からんのが戦だ。桑名・朝明・員弁・三重と進むだろう。俺も慢心するつもりはないが、前の竹中何某との引きの陣と比べればな?今回が剣城の初陣だ。皆の者、役目を果たせ!」


 「「「「「はっ」」」」」


 


 


 あぁー、良く寝たな!なんかいつもより眠りが深かったように思うけど。久々にオレの部屋で寝たし、シャワーでも浴びて甲冑でも着ようかな。




 「お菊さん居る?」


 「はっ、おはようございます」


 「これ木下様に貰った甲冑なんだけど手伝ってくれる?刀はこの2本装備したい。それと先触れもよろしくね」


 「かしこまりました」


 オレは貰っただけで、甲冑なんかどれもこれも同じかと思ったが、この甲冑は貸し出しの甲冑と違い、色合いやしめ縄?とか作りがちゃんとしてるように思う。一言・・・カッコイイ!!!これぞ武将!って感じの甲冑だ!


 「ふははははははははは!!!これは良い!良いぞ!!!」


 「剣城様ッ!!!(バチンッ!!)」


 「痛っ!!うん!?何だ何だ!?オレは何してたんだ!?」


 「先日言われた、内なる自分が出れば止めるようにと言われましたので、お止めしました。お許しを・・・」


 クソ!オレとした事がまた自制出来なかったか・・・。もっとビンタされたかったような・・。ゲフンゲフン。





 「よし!これでいいな!実は今日、皆への挨拶考えようと昨日の夜思ってたんだけど、眠くなってすぐに寝てしまって考えてないんだけど・・・」


 「何も言わないのは士気に関わります!何か一言でも良いので申しあげれば良いかと」


 「う〜ん。まあ分かったよ!皆まだ寝てる?」


 「いえ、起きていつでも呼べます」


 「なら整列してもらえる?」


 さあ、なんて言おうかな。何かこう気持ちが上がるような事言えばいいんだけど・・・。ヤバイ、思いつかないぞ・・・。


 「おう!剣城おはよう!これから声掛けするんだろう?士気が上がるの頼むぜ!?がはははは!」


 クソ慶次が!!馬鹿にしてるな!?

 

 数分後。甲賀衆の人達が皆、黒装束を着て色々な装備を持ち整列した。いや、オレが与えた装備だけどマジで忍者だな!?背中にリュック背負ってるけど。



 「皆の者!聞け!我らの御大将芝田剣城からの挨拶であるッ!心して聞けッ!!!」


 いや慶次さん!?ハードル上げ過ぎだろ!?急に恥ずかしくなったんだけど!?それに戦に行かない八兵衛村長達まで出て来たんだけど!?

 

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