妖怪退治 後

 「ぬぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜!!!!顔が崩れた女が居るぅぅぅぅ〜〜〜!!!!」


 「我が君!お下がり下さい!!大殿の上洛、我が君の覇道の為、ここはこの芝田家 筆頭家老の、この小川三左衛門に任せてお退き下さい!」


 「そうもいかんでしょう!!小川さんや金剛君の主君はオレだ!オレが退く訳にはいかん!今こそトマホークMK-2の出番だ!さぁ!妖怪め!かかって来い!!」


 これはいかん!!ミヤビが懸念していたように、剣城様が片手銃を取り出してしまった!!


 シュシュシュシュシュシュ


 「ぬぁっ!?逃げただと!?」


 「うん?あれは甲賀に伝わる飛脚に似ているな?まさか!?甲賀の妖怪か!?」


 ここに居るのが小川の爺で助かった・・・。野田様や黒川様なら、一瞬でミヤビだと気付かれただろう。ここは俺が追跡を辞めるように持っていかないと、本当に剣城様が撃ってしまいそうだ。


 「剣城様!!妖怪は逃げました!逃げたということは、剣城様には敵わないと思ったからです!あの勢いは京からすらも逃げる勢いでした!」


 「いやいや、そうもいかんだろ!?金剛君!大黒剣を出して!追い掛けるぞ!」


 なんと!?大黒剣まで出すと!?マズイ!非常にマズイ!剣城様が本気になられている・・・。




 〜神界モニタールーム〜


 「我が兄弟の子達が慌てているんだなぁ」


 「農業神様!仮装の御用意が済みました!」


 「お主は分かってきたんだなぁ。ならあの我が兄弟の子飼いの女を助けるんだなぁ」


 「皆の者ッ!!農業神様が降臨なされる!!今すぐ後光フラッシュの用意を!今回は農業神様の、ほぼ眷族に近い人間を驚かせる作戦だ!!」


 「では手前の出番ですな。我は元は地の精霊。それとお前だ!お前は元は火の精霊だったな?我と和協せよ」


 「はいよ!分かったわよ!で、アタイは何をすればいいんだい?」


 



 ブォ─────ン


 「どこだ!?妖怪!どこへ行った!?」


 「剣城様!もういいのでは!?そろそろ大和国に入ってしまいますよ!?」


 「いや、ここが妖怪の棲家かもしれない。見てみろ!金剛君。地面から湯気のようなものが出ているじゃないか!怪しいぞ!うん!?あそこが光っている!?」


 「我が君!!ワシが魁となりましょう!トウッ!!」


 「あっ!小川さん!?」


 え!?あれは!?ミヤビじゃない!?何だあれは!?大きな蜘蛛だと!?まさか・・・本当に妖怪か!?


 「金剛君!?あれが妖怪の本当の姿か!?土でできた蜘蛛のように見えるぞ!?」


 「土蜘蛛・・・」


 「知っているのか!?」


 「神武天皇のお話で出てくる妖怪かと・・・ですが、まさか・・・」


 「はぁ〜!?神話の妖怪だと!?」


 キャッシャッシャッシャッシャッ!


 クッ・・・。妖怪め!気持ち悪い鳴き声しやがって!けど・・・なんか、農業神様の匂いがするような・・・。


 「我が君!御照覧あれ!妖怪!覚悟せよ!」


 ブォンッ スカッ


 「小川さん!!」


 ピカ───────────ンッ


 「なに!?消えた!?」


 「小川さん!!大丈夫ですか!?」


 「いや、ワシは何ともないですが、奇妙ですな。手応えはありました。が、露と消えました。今の大きな蜘蛛は・・・」


 「なんとなくだけど・・・心当たりがある。今度その心当たりがある人?に聞いてみるよ」


 「そうですか。まぁとりあえず、我が君の威光に恐れを成した妖怪でしたな!がははは!さて・・・ゲルテントに戻り休みますか!」


 「そうだね。明日も忙しいだろうし、今日は休もうか。金剛君?何を惚けているの?帰るよ!」


 「あ、いや、この蜘蛛の牙らしき物が落ちていまして・・・持って帰りますか?鉄のような、そうじゃないような感じが致します」


 「加藤さんのお土産にでもすればいいんじゃない?岐阜に帰れば金剛君が渡しておいてよ。国友さんは普段から色々してるから、お土産なんていらないだろう」


 「分かりました」




 〜神界モニタールーム〜


 「農業神様がお戻りになられた!!」


 「帰ったんだなぁ」


 「「「「お疲れ様でございます!!」」」」


 「やはり人間界では力を抑えるのに疲れるんだなぁ。これで我が兄弟の子供が守られたんだなぁ。人間界も楽しくなってきているんだなぁ」


 「がははは!面白い事をしたようではないか!盟友よ!」


 「戦神なんだなぁ。今回はすぐに戻ったんだなぁ」


 「そうだろうよ!我が盟友のマナが人間界にある事に気付き急いで駆けつけたが、もう盟友はここに戻って来ていたんだからな。で、今回は何を貰ったんだ?」


 「今回は何も貰ってないんだなぁ」


 「あら?男2人で何してるのかしら?」


 「ん?芸術神か。久しいな」


 「戦神ね。この辺、武器臭いから貴方達は後で消毒しておきなさい」


 「なぬ!?我が武器臭いだと!?そりゃエルダードワーフ共が武器ばかり寄越してくるから、多少自覚はあるが久しぶりに会った割に、酷くないか!?」


 「嘘は言ってないわよ?遠回しに言うよりいいでしょう?」


 (盟友よ。あれが本当に良いのか?尻に敷かれるぞ?)


 (姿体が美しいんだなぁ。あの冷たい言葉がまたソソられるんだなぁ)


 (そ、そうか。ならば良し)


 「農業神!最近、貴方が傾倒してる人間から注文が少ないけど、何でかしら?」


 「今は遠征してるから仕方ないんだなぁ」


 「ふ〜ん。あっ、この世界線に居るのね。そろそろ天照ちゃんの子孫の子と会うじゃないの。なら貢物として何か注文してくれないのかしら?ね?農業神?」


 ヒラッ


 「わわわ、分かったんだなぁ!!!おぉ〜・・・その姿体を今一度・・・」


 「クッ・・・我はやってられんわ。帰るぞ」





 「クァ〜〜〜〜。変な時間に寝たせいか、起きるのも早朝に起きてしまったな。寝起きで疲れているとはこれ如何に」


 「剣城様。おはようございます」


 「あ、ミヤビちゃんおはよう。隠れずに居るのは珍しいね。あれ?金剛君?何でそんな顔が腫れてるの?」


 「あ、いや・・・俯せで寝たので腫れただけです!」

 むぎゅ


 「痛ッ!」


 「あぁ〜!2人はそういう関係だったんだ!?気付かなかったよ!別にとやかくは言わないから仲良くしなよ?結婚するならお祝いするから、ちゃんと言ってくれよ?」


 「いやいや!剣城様!私はこんな男なんて――」


 「剣城様!俺もです!こんな性格の悪い女なんか――」


 「いやいや、若いって素晴らしいな!朝からイチャイチャするなよ?ははは!!んで・・・、この荷物は何なのかな?」


 「あっ、我が君!おはようございます!」


 「小川さん。おはよう。この荷物は何かな?」


 「朝方、変わった法衣を着た御老体と芸者のような女が、我が君に『渡してくれ』と言っておられましたよ。初めて見るのに懐かしいような、怪しさがあるのに疑えないような者達でした。気付けば消えていたので先に改めさせてもらいましたが、中身は服とか貝殻の首飾りのような物でした」


 「小川さんがそのまま帰すなんて珍しいね」


 「隙があるようで修羅を潜ったような何かを感じまして、無理に敵対するよりかは良いかと・・・。申し訳ございませぬ。それと、『これを見せると分かる』と言われまして」


 「手紙?見てみるよ」


 オレは小川さんから手紙を受け取り、外に置いてある瓶の水で顔を洗いながら読んだ。うん。やはり農業神様と芸術神様だ。


 《我が兄弟よ。疲れているだろうから起こさずに人間界に来た。おいの彼女の芸術神が最近、注文が無いからと嘆いていた為、これらを買って欲しい。少しすれば必要な時が訪れる。我が兄弟なら何の為に、誰の為に、渡す物か分かってくれるんだなぁ。入り用で金額は許して欲しいんだなぁ》


 クッソ!新手の訪問販売か!?いやまぁ、農業神様が『買ってくれ』と言うなら買うけどよ!?だが高過ぎじゃないか!?


 手紙の最後に、Garden of Edenのクレジットから、自動引き落とししておくって書いてるけどよ!?金額が着物とアクセサリー数点だけで、150万円なんだが!?しかも何が入り用なんだよ!?農業神様と芸術神様は、またヴァルハラ宮殿にでも旅行に行くのか!?


 「剣城様。本日は何をされるので?」


 「あ、うん。今日は武衛陣でも監督しておこうかな。後は、今日も京の町の見回りかな。未だに犯罪を犯す馬鹿が居るからな。それに、あの首級の報酬も用意しないといけないし」


 「分かりました。では片付けて武衛陣に向かいましょう」


 何故か妖怪の事を誰も口に出さない。聞きそびれたが、あれは絶対に農業神様だとオレは思っている。

 



 オレは昨夜、金剛君が武衛陣へと帰らさなかった意味が瞬時に分かった。分かったというか理解した。


 「なっんじゃこりゃぁぁぁぁ〜〜!?!?」


 「あっ!剣城様!おはようございます!どうですか!?俺が突貫工事にて、何人(なんぴと)たりとも攻められぬ御所に致しました!」


 「いやいや、剛力君!?誰がこんな魔改造していいと言った!?」


 「え?剣城様ですが?」


 え?剣城様ですが?じゃねーわ!確かに『好きにしていい』とは言ったが好きにし過ぎだろ!?


 「いや、まぁ『好きにしていい』とは言ったけど、この鉄門の真横に設置してある大砲なんて、明らかに一点物だろ!?大砲に何で鳳凰!?みたいな装飾がしてあるんだ!?そして櫓だが、あれは国友銃の口径の大きな、ほぼ大砲に近い鉄砲だろう!?」


 「がははは!剛力!よくぞやってくれた!これで将軍も我が君を褒めるに違いない!」


 「小川の爺は分かってくれますか!」


 「わしゃまだ爺ではない!」


 「ふっ。さぁさぁ、剣城様!お入り下さい!将軍を迎えるまでの間だけ、特別に剣城様のお部屋を作りました!そこで色々、報告をお聞き下さい!」


 オレは半ば強引に剛力君に引っ張られて、武衛陣へと入った。

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