清洲同盟にてチビリそうな件 2

 「おまおまおまたたせしましました。こここちらカレーとコーラになりなりなります」


 「ふっはっはっはっはっ!!織田殿の台所衆は肝が小さいのう」


 「愉快愉快!大方我らの殺気にでも当てられたか!?はっはっはっはっ」


 「剣城ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ──────!!!!!」


 信長さんのガチギレの咆哮に首に刀を当てられた感覚になり尻餅をついてしまう。


 バチィィィィィィィィ─────ン!


 グーではなかったが思いっきりビンタされた。


 「何をしておるかっ!!!しっかりせんかっ!!!!」


 木下さんが駆け寄って来てくれた。オレは軽い脳震盪みたいに少し頭がボーっとしてしまった。

 でもさすがゴッドファーザーが改造してくれた体。10秒程で治った。笑い者になり信長さんにも怒られて・・・ここ1番!やってやる!


 「お館様、すいません。剣城の奴、少し・・・」


 「木下様、すいません。もう大丈夫です。信長様も松平様も見苦しいところをお見せしました。申し訳ありません。本日同盟の折の料理をお持ちしました。まずはここ"尾張"で育てている具材を使ったカレーライスです。"白い米"と混ぜて食べて下さい」


 オレは松平さんの三河と差別化を図るため尾張と白い米を強調した。白い米は珍しい事はないかもしれないし例のコシヒカリではないけどあの金色の鶏糞で作った米だ。絶対食べた事ない筈だ。


 「剣城の奴め。やっと、調子が出てきおったか。遠藤?この同盟の進行は剣城に任すと伝えよ。最悪五分。良くて八分の同盟を致せと伝えよ。それと・・笑った奴を蹴散らしてやれと伝えよ」


 「はっ」


 遠藤さんが耳打ちしてきた。


 「この同盟の進行を剣城殿に任すとの事です。悪くて五分。良くて八分との事で、さっき笑った奴を蹴散らしてしまえとの事です」


 「えっ!?私がですか!?それに蹴散らせって・・・1人ここで戦をしろと!?」


 「はっはっは。面白い事を言いなさる方。お館様の比喩です。要は見返してやれとの事です。頑張って下さい」


 おいおいマジか・・・。責任重大過ぎだろ!それに史実ではこの同盟はできるけどそれをオレがかよ!後世の歴史に名前が残るレベルじゃんかよ!!それに見返すって・・・。

 確かに腹は立ったけどもよ・・・。クソ!やれるだけやってやんよ!


 「織田殿!?この色はまさか糞を使っておるのか!?我らを愚弄しておるのか!?」


 「ふん。元康よ・・。今は家康だったか?でかくなったのう。ワシが毒味じゃ。糞なぞ入っておらん。(ハスッハスッ)」


 「織田殿。今は大事な会議故、馴れ馴れしい呼び方は遠慮願います」


 「家康に過ぎたる者とは貴様の事じゃのう。本多よ。貴様もまずは食してみよ」


 「たしかに香ばしい匂うた事ない匂いがしておりまするが・・・(ハスッ)・・・・これは・・・・」


 「忠勝っ!!!まさか毒かっ!?織田殿!これは一体どう・・」


 「殿!お待ち下さい!見た目悪うございまするが非常に美味!某はこの味の表現をする術を持ち合わせておりませぬ。どうかご勘弁を」


 「忠勝がそこまで言うか・・・。ならば一口・・・。(ハスッ)・・・まさかっ・・・・」


 「「「殿っっ!!!」」」



 「皆静まれ!忠勝が言うた事は本当じゃ。これは今まで食した事がない料理じゃ。皆の者もせっかく織田殿が出してくれたのじゃ。まずは熱い内に食らおうぞ」


 予想通りだな。絶対今の日本でカレーが食えるのは清洲城台所。もしくは清洲城オレの部屋支店だけだな。コーラも出してやるか。


 「お飲み物をお出しします。コーラという"南蛮"の飲み物です。日の本でこのコーラが飲めるのはまず織田家でしかないでしょう。少し口で暴れてゲップが出るかもしれないので一気に飲まないよう気を付けて下さい。

 もし!酒が良いなら会議の後に皆様がお飲みした事がない酒精が強い"澄み酒"をお出しします」


 「貴様っ!!!ホラを抜かすな!!この茶色い飯は中々やるし湯呑みも中々に見た事がない物の様だが、澄み酒は寺でもほんの一部の寺でしか造っておらぬのだぞ!?しかも造り方も門外不出なのじゃぞ!」


 「そうだ!そうだ!それを貴様は我らに用意しておると申すのか!!?」


 ふふふ、私を誰だと思っているのかね!?未来から来たドラえ・・・じゃなく今は昔、褌一丁だったがレベルが上がり今は下女さん曰く、清洲城料理ご意見番なのだよ!!ふはははは!


 「剣城、顔に出とるぞ」


 おっと!!木下さんの指摘で我に返れたが危うくまた内なる自分が出るとこだった・・・。このところ制御を覚えたと思ったけどオレもまだまだだな。


 「はい。このコーラ然り酒の方も皆様が浴びて飲める程用意しております。心して同盟の取り決め方考えて下さいね」


 「其の方。ただの台所衆、料理頭じゃないな?ワシは安祥松平家9代当主松平蔵人佐家康。お主の名は?」


 「私は清洲城勤め芝田剣城(つるぎ)と申します。料理頭はまた別に居ます。この今日お出しした料理とここ最近の信長様の料理をお出ししてるだけです。あっ、あとお代わりするなら言って下さい。まだまだありますので」


 「剣城!もう一杯よそってこい!間違えるな?大盛りじゃ」


 こんな時でも信長さん大盛りお代わりですか!?流石だな。


 「ワシもお代わり貰おうかのう」


 「ワシも」


 「某も大盛りで頼む」


 「ワシも大盛りじゃ」


 「それより各々方!この湯呑みを何も思わんのか!?」


 「いや、中々に良い。見る角度によって色が変わる珍しいびーどろだとは思うが・・・」


 「どうせ織田殿が我らに見せつけるため大方、堺から銭で取り寄せたのだろう」


 ガラスの事をビードロと言うのか?ギヤマンじゃなかったっけ!?まぁどっちでもいいか。


 「あっ、言い忘れましたがそれは割れないビードロです。正式な名前はグラスと言います。1人1個ずつですがどうぞお土産に持って帰って下さい」


 「何!?このびーどろを我らにくれると申すのか!?」


 「殿!これで酒を飲んだら美味そうですな!!」


 「確かに美味そうだ!某は母上にでも渡してやろうかのう」


 「クッ・・・・。このままでは織田殿の思う壷じゃ・・・。あの芝田とやらは中々やりよるのう」


 それから暫くはお代わり合戦が繰り広げられた。オレを笑った最初の2人はお代わりをせずに下を向いて何か考えていた。


 「皆さん。そろそろお腹も満たされてきたかと思います。そろそろ取り決めの方始めていきたいですが、よろしいでしょうか?」


 オレは現代で生きてた時の仕事で大物重役にプレゼンする時と同じような気持ちで進行を始めた。


 「まずこちらの要望としては織田家は稲葉山城を年内に落とす予定です。そのために後方を気にせず戦いたいので、その間に松平様は三河の平定を提案いたします」


 「そう言いつつ斎藤を攻めきれなかったら我らに援軍を頼んでくるのか?」


 おっと、兵士の事は分からないぞ!?八分ってどのくらいが八分なんだ!?こちらが戦の時援軍を貰って松平の戦の時はこちらは兵を出さず物資のみとかでも良いのか!?分からないぞ!?

 信長さんは目瞑ってるだけなんだが!?何か言ってくれても良いんじゃないか!?もうどうにでもなれ!好きな様に言ってやろう!


 「こちらが斎藤、その次の戦の折は松平様の兵の援軍を頼む事もあると思います。ですがこちらから松平様の戦には援軍は出しません。その代わり兵糧、武器の輸送などはこちらが面倒を見ましょう」


 「貴様!我らを格下と申すかっ!?同盟じゃなく従属ではないかっ!」


 「その様な事が罷り通る訳がなかろう!貴様もこの場を仕切るならまともな事を申せ!ただですら殿と貴様で身分が違うのが分からぬのかっ!!!」


 家康さんの隣の2人がめっちゃキレてる件。いやオレでも家康さんの立場なら多分キレるよな。どうしよう・・・。







 「ふっはっはっはっはっはっ!剣城、もう良い。竹千代、それに榊原、酒井、お主らが笑ったこの剣城はお主らより優秀ぞ」


 「織田殿まで我らをコケにしますか。我ら父祖の代より憎みし間柄。石川殿と水野殿の苦労が水の泡となりますが最早それ以前の話。大概になされませ」


 「ふん。竹千代、これを見てみよ」


 「何ですか?この黒い箱は」


 「その四角いボタンを押して待っていろ。剣城!貴様教えてやれ」


 「織田殿、どちらへ!?」


 「隣の部屋じゃ。暫し待たれい」







 「聞こえるか?」


 「ななな何とっ!!喋りおる!箱が喋りおるぞ!?」


 「殿!危のうございます!後ろへ!織田の糞共よ!もののけを操り我らを害するつもりか!?」


 「その声は酒井か?お主も忠義のもんよな。我は織田信長ぞ」


 「この声は織田殿!?どういう事だ!?」



 「ふっはっはっはっはっ!愉快愉快!」


 部屋に戻ってきた信長さん。最初オレを馬鹿にした人の真似をしながら戻ってきた。家康さんは少しビビった感じになっている。


 「これはとらんしーばーという道具じゃ。清洲から三河くらいまでなら話が出来る」


 えっ!?三河がどのくらい離れてるか分からないけど出来るのか!?何で信長さんが知ってるの!?


 「そ、それがどうしたと言うのじゃ!そんな物で従属同盟になる筈がないではないかっ!」


 後ろの人が叫んだ。


 「囀るな!小童が!」


 ゲームで聞いた事ある様な柴田さんの言葉をリアルで聞きました!ありがとうございました!カッコいいぞ!ここにお市ちゃんが居たら良かったな!ぜってぇ〜オレが柴田さんにはやらないけどな!!


 「貴様っ!何を・・・」


 「夏目!良い!喋るな!」


 「あの人が三方ヶ原の戦いの時、家康の為に討死にした人か」


 「お主らに問おう。今日用意した食い物、飲み物、皿に至るまで見た事があるか?ある者が居るなら申せ」


 「・・・・・・」


 「・・・・・・」


 「居る訳がないよな。用意はこのお主らが笑った芝田剣城が全部用意した。それに、このとらんしーばーも此奴が用意した。この意味が分かるか?竹千代」


 「ワシをまだ竹千代と呼びますか信長殿。榊原、酒井、他の者も席を外せ。信長殿、良いか?」


 「殿!?何を考えて・・・」


 「可成、一益、お主らも下がっておれ」


 オレも下がった方が良いと思い、皆と隣の部屋に行こうとしたら『貴様がおらんでどうするのだ!』とゲンコツ貰いました。

 信長さん、石墨氏のコシヒカリ食べてるせいかゴッドファーザーが改造してくれた体でも痛いんですが!?

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