この人の下で働きたい・・・
「血の気が多い家臣ばかりで済まんな」
座ったらすぐに信長がオレに謝ってきた。オレは信長は天上天下唯我独尊的な人かと思ってたので普通にビックリした。
「いやいや、こんな得体の知れない褌一丁男なのでしょうがないですし、私が皆さんの立場でも同じ事をしてると思います」
「であるか。・・・・・・・・・・さっきの斬っても斬れんかった上半身だけの老人だ。奴は何者だ?ワシの夢に出てきた老人と同じだった。貴様は知ってるのか?」
そこからオレはあの人が神様であれは実際の人ではなく映像という現実と同じだが実態は無いものと伝えた。八兵衛村長達と同じ説明をしたが、やはり信長だからかこの時代の人達にしては理解力が凄く、少し驚いていたがすぐに『あれも未来の技で見せられるものなのか?あれも貴様の技で買えるのか?』とすぐに戦の事を考えてそうな顔で聞いてきた。
「同じ物があるかは分かりませんが似た様な物はあると思います。それと、ここだけの話にしてほしいのですがあのさっきの神様の事です」
そう言うとオレは神様の事はあまり言わない方が良い事、神様は実際居るが天国地獄がある事は分からない事、神様は人間の事には絶対干渉しない事を伝えた。
「もし信長様が『さっきのボロを着た奴は神様じゃ』とみんなに言ったとしましょう。そうすればみんなは神様は居るものと考え、これから戦などで敵を倒す時躊躇してしまうこともあるでしょう。仮に天国地獄が無いと言っても心のどこかには神様を信じたら隙が出来てしまいます」
「ワシも今まで神は居ないとは言わんが単なる想像の者かとも思っておった。それでワシは神をさっき斬ったが罰とかは無いのか?」
えっ!?!?あの信長さんが神様にビビってるんですか!?とか内心思いつつこれはたしかに部下の前では聞きにくい事だから違う部屋に移動するようにしたのかと納得した。
「あー。多分というか、全然大丈夫だと思いますよ?神様は一見、人間のお爺さんの様に見えます。そして物凄く自尊心が高いですが普通な感じでしたよ?それにこの世界の人間はみんな我が子供とも言ってましたので気にしなくて良いと思います。なんなら私も神様の事馬鹿にしたりしてますし」
そう言うと信長は安心した顔になった。やっぱ信長さんもビビる事はあるのかな?と思った。
「であるか。して、貴様は未来から来たと申したがワシらの事は知っておるのか?」
そこでオレは知ってるという以前に歴史上の有名な人の中で織田信長という人物は未来の日の本では1番、2番目くらいに有名な事、さっき居た家臣の人達も同じくらい後世に名前が残って有名な事を伝えた。
「ほーう。何故に有名か分からぬが名が残るのはこれからワシが偉大な事を成すのか、悪行を成すのか楽しみだな。
そもそもワシはまだ家臣にも誰一人にも天下の事は伝えてなかった。貴様がワシは天下を取ると言った事で、より一層気持ちが傾いた。礼を言う」
信長がさっきと違って柔らかい雰囲気になり、不意に『あっ、この人の下で働きたい』と何故か思ってしまった。
「正直私が居た未来のまま信長様が天下統一されるなら色々な障害がこれからあります。私は未来から来たと言っても戦の事なんか知りませんし、大まかな歴史の流れしか知りません。
この時代は私が居た時代より何もかも不便です。本当は私が便利な物を開発してこの尾張国、日の本全体を豊かにする様にしたいのですがそう言った事も正直あまり出来そうもありません。けど、それでも信長様の元で奉公したいです」
最後の一言は自然と言葉が出てしまっていた。
「ワシが天下を狙うのに貴様を登用せず、よそが貴様を登用すれば障害となりそうだな。仕える事を許す。励めよ」
「ありがとうございます。一生懸命働きます。それともう一つ。私の本当の名前を言います。芝田剣城と言います。家臣の柴田勝家さんとは字が違うし何も関係は無いので気にしないで下さい」
「ほーう。名字があるという事はそれなりの家柄なのか?」
「未来ではみんなが名字を持っています。信長様に私の本当の名前を言ったとこで何も変わりはしませんが一応知ってもらっておきたくて言いました。これからよろしくお願いします」
「うむ。相分かった。して、さっき目の前に出ていた物が未来の物なのか?何があるのか楽しみだな。皆にもちゃんと説明をしよう。よし、戻るぞ」
何か余り名字の事にツッコまれなかったなとオレは思ったが信長が上機嫌にさっきの所に戻っていきだしたので気にするのをやめた。
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