濃姫様の御懐妊
1時間もしない内にノアが満面の笑みで帰ってきた。いや、馬だから表情は分からないが何となく笑顔と分かった。
"おっ待たせ♪さっ、帰ろう♪"
"お帰り。用事は終わったの?"
"うん♪何をしたかは明日のお楽しみ♪きっと剣城っち♪も喜んでくれると思うよ♪"
"何か気になるんだけど?"
"いーから♪いーから♪"
オレは気になりつつも、ノアが言ってくれないのでノアと馬車を繋ぎ、岐阜に帰った。
岐阜城の支配内に着くと、城の兵の人達が慌ただしく動いていた。何かあったのか!?
「お菊さん?城で何かあったの?」
「いえ、何も存じ上げません」
まっ、いっか。早く帰ろう。
「疲れた・・・。信長様、小見様、すいません。到着致しました」
「うん?おっ、もう着いたか」
「剣城!?」 「芝田殿!?」 「剣城ッ!!!」
うん!?何だ!?何だ!?皆が駆け寄って来たぞ!?
「どうしましたか!?遠藤さん!?何かあったのですか!?」
「お館様がお見えにならんのだ!出掛けられる時は必ず言われるお方なのに・・・。この遠藤、一生の不覚・・・」
おい!まさか信長さん、城の人に何も言わず出てきたのか!?
「そう騒ぐな!夜更けじゃ」
「「「「おっ、お館様っ!!!」」」」
「ちぃ〜とばかし領内の視察じゃ」
「視察・・・でございますか!?こんな夜更けに!?」
「そうじゃ。なんともない!遠藤!ワシは寝る!寝所を用意せい!あと、お濃が起きてたら呼べ!」
「はっ。皆に伝えろ!お館様は視察に出ており今しがた帰られた!」
「剣城!大儀であった。今日はもう休め。配下の者にも伝えておけ。後日褒美を取らす」
「はっ。ありがとうございます」
「剣城殿?楽しいお役をいただいて感謝しておりますよ」
「小見様も本当にありがとうございました。お菊さん?小見様は例のドリンクお渡しして、部屋に案内してあげて。軽くマッサージでもしてあげなさい」
「はっ。畏まりました」
その後、城の兵の人達はワヤワヤになり各々が帰っていったが、オレの兵・・・甲賀の人は違っていた。夜中で真っ暗だが分かる。綺麗に整列している・・・。
「剣城?一言、締めの言葉を」
「はい。慶次さんも竹中さんも青木さんも小川さんも、皆さんありがとうございました!無事に任務終わりました!明日1日を休みにします」
「「「おぉぉぉ──!!」」」
「よし!解散だ!」
それから慶次さん達は岐阜の家・・・は無いから、清洲の村まで戻るとの事で別れた。オレは岐阜に一応仮の家があるから、そこに帰った。
「金剛が居ない今、我が君に何かあるといけないからワシは岐阜に留まる!喜左衛門!お主は戻れ!」
「父上!剣城様もお疲れでございますよ」
「ワシが癒してさしあげるのだ!構うな!」
いやもう寝るだけだし、気にしなくていいんだけど!?
そして岐阜の何も無いオレの家に着き、小川さんとオレは並んで寝る事になった。気分は・・・ブルーだ。寝る前に小川さんが聞きたい事があると言った。
「此度の任務でワシは思った事があります」
「なんですか?」
「我が君とゆきの事でございます」
小川さんが言ったのは、オレとゆきさんの結婚は良い事だが、信長さんにちゃんと許しは得たのか?と。個人間の結婚は良いが、オレは織田家で新参だが、それでも数々の事業に携わっているから、信長さんにちゃんと聞いた方が良いと。
「今後、他家の姫や色々な縁を持ちたい家が現れるでしょう。実は小谷の城に着き、妹君の祝言の折に何人か、間を取り持ってくれないか?と言われたのです」
「え!?間を取り持ってって、オレとって事です!?」
「そうです。勿論、断りましたが嗅覚の鋭い近江の御用商人や、馬番頭の中島直親なんかは我が君と誼を持ちたそうにしております。まあ中島何某はノア嬢が気になってるだけ、とも思いますが」
「分かりました。一度信長様にも聞いてみようと思います」
「まあ、今後女子(おなご)に関しては不自由しないでしょうな。奥手な我が君に近々、小川三左衛門48手をお教え致しますぞ!!がははは!」
う〜ん。笑いで済ませたけど、本当にオレなんかに興味持つ人なんか居るんだろうか。オレが作った物や考えた物、Garden of Edenで出した物に興味を持つ人は、かなり居る気はするが・・・。けどそれはオレに魅力がある訳ではなく、オレが出す物を享受したいだけなんだよな。
ゆきさんみたいにオレの中身を見て、本心から好いてくれるならかなり嬉しいが・・・なんなんだろうな。少し寂しい気もする。でも、秀吉さんとねねさんは恋愛結婚とも言われてたと思うけど・・・。ねねさんに今度聞いてみよう。
次の日。オレはいつもより少し遅くに目が覚めた。目が覚めると小川さんがオレの横で正座していた。
「お目覚めですか、我が君。おはようございます」
「おぉ!ビックリした!おはようございます」
「がははは!そうビックリしなさんな!ゆきが朝飯を作ってくるそうですぞ!」
「剣城様。おはようございます。大野様から教えていただいたサンドイッチでございます。本物を知らず合っているか分かりませんが」
「おっ!これはサンドイッチそのまんまだよ!ありがとう!顔洗ったら食べるから!」
ゆきさんが出したサンドイッチは、パンは少しパサパサしているが卵焼きを挟んだ物だった。味付けは塩だけだったけど。これはこれで美味しく感じる。
「マヨネーズとかハムとか欲しいけど、これはこれで美味しいよ!ありがとう!」
「がははは!ゆき!ワシのはどこじゃ?」
「小川の爺にはありません。爺はそこらへんの草でも食べて下さい」
いや、小川さん!?皆から冷たい扱いされてるね!?可哀想だな。
「おいおい!?ゆき!?それはあんまりではないか!?」
「私が爺に作る義理はありませんよ」
「折角の休みにしたし、昼から城下を散策でもしてみます?」
「おっ!良いですな!」
「ところでお菊さんは?」
「菊は小見様の城のお部屋におります」
「うん?小見様に気に入られた感じ?」
「なんでも、私達のしてる事に興味があるらしく、色々教えて欲しいと言われておりました」
なんだろう?小見さんはいつも何かしてる感じだけど、何もしない日は無いのか!?
「とりあえずオレは、信長様に聞きたい事あるから登城してくるよ。サンドイッチご馳走様!少し待っててね!」
そう言い、オレは城に向かった。いつもと変わらない遠藤さんに言い、信長さんの私室に向かう。信長さんも昨日はさすがに疲れたらしく、オレの栄養ドリンクを飲んだと言っていた。
「入れ」
「失礼します」
「何じゃ?貴様が最初から言うておった『7日に一回休みを入れろ』と言うから、ワシも今日は何もするつもりが無かったんだが?」
いや何でご機嫌斜めなんだよ!?
「お久しぶりです。剣城?」
「濃姫様。お久しぶりでございます」
「何でも剣城が考えた市の輿入れに、殿をお連れになったとか?全部剣城が考えた事とか?」
クッ・・・。無断外泊をオレのせいにしやがったな!?信長さん、オレと目を合わせようとすらしないじゃないか!
「も、申し訳ありません。浅井様がどの様な方か、信長様に見てもらう方が早いと思いまして」
「ほ〜う。浅井がどの様な方かと?これまた異な事。浅井と市の祝言に殿が必要かえ?」
これはあれか!?オレは詰められているのか!?久々のこのプレッシャー・・・。間違えるとヤバイぞ・・・。
「浅井様は近淡海、近江を治める方。重要な場所ですので水運を任せられる方かどうか・・・」
「まっ、良いでしょう。どうも剣城が出した布団で殿と寝屋を共にしてから、身体の調子がいつもと違うみたいで、妾はやや子を授かったみたいで」
「え!?ご懐妊ですか!?!?おめでとうございます!」
スパコンッ!
「馬鹿!声が大きい!まだ決まった訳ではない!貴様の配下の医療班を一人回せないか?」
「はい。琴と言う者は如何でしょう?民達の面倒見が良く、未来の医術も学んでおります」
「良し。その者を本日からお濃の側仕えに致す!前金だ!」
「はっ。お渡ししてすぐに登城させます。それと個人的な話ですが良いですか?」
「お濃?」
「分かりました」
そう言うと濃姫さんは下がった。
「してなんぞ?あぁ、昨夜の事はすまん。あぁ言う以外なかったのじゃ」
「いえ、その事は構いません。とにかくおめでとうございます。それで自分の事なのですが、私も今すぐではございませんが──」
「ゆき・・・と申す者との事か?」
え!?知ってるの!?まだ何も言ってないよ!?
「本来なら昨日の馬車で、彼奴を無断で隣に乗せた事は許される事ではないが、ワシは目を瞑った。貴様には負担ばかり掛けておるからのう」
「え、いや別に負担とは思っていません」
「その事は別な事で報いるとしてだ。そのゆきと婚姻するのか?それは正妻としてか?」
「私としては正妻としてと思っております」
そして配下の菊という女が側室を許してくれません!と言いたいが言えないな。
「それは甲賀と誼を深めるのに良い事ではあるがな・・・・。どうしたものか」
「何かまずい事がありますか?」
「婚姻には問題ない。だが貴様を今後表に出すと言ったであろう?ゆきと申す者を呼べ。ワシが許可致す」
そう言われオレはゆきさんを呼びに行き、部屋に戻る。
「お、大殿様。こ、この様な場所に私なんかが──」
「構わん。顔を上げい!正直に申せ。お前は剣城の隣に居るだけでは不満か?側室では不満か?」
「いえ、何番目でも構いません。私は剣城様をお守りできれば・・・」
嘘だな。お菊さん達と話していた時オレが側室取らないと言ったら凄く笑顔になってたからな。
「正直に申せと言った。もう一度聞く。側室では不満か?」
「畏れながら、側室では不満でございますが剣城様の今後の事、織田様の今後の事を思えば私なんか草の者が、正妻の座をいただくのは無理がございます。ただ、側室だとしても婚姻の許可がいただけなくとも、剣城様のお側に居させていただきますれば・・・」
「クハハハハハ!良い女子(おなご)ではないか!貴様よりよっぽど先を見ておる!婚姻を許そう。正妻でも側室でも好きな方にするが良い」
「え!?構わないのですか!?」
「なんじゃ?許可が欲しかったのじゃないのか?」
「いや案外難しい事と何かあるのかと思いまして」
「ふん。貴様を表に出し、有力者と誼を通じる時に使えると思うておったが、わざわざ貴様の正妻にしてやらんといかん義理は無いからな」
信長さんが言ったのは今後織田と誼が欲しい、オレと誼が欲しいと思い、娘や親族の女をオレに差し出してきたとして、その誰かを正妻にするとどうしてもその者が強くなるからと。
側室でも良いならと先に言うと立場はこちらが・・・織田やオレが上になり気を使わなくてもいいと。
「もし側室で文句を言う者が居れば、そんな者との誼は願い下げじゃ」
「分かりました。ありがとうございました」
「ただ一つだけ・・・・。うえでぃんぐけーきはチョコレートにしろ!貴様の祝言はワシも出向いてやる!」
いやケーキ食いたいだけだろ!?
「日取りは落ち着いてからと思うております。肉と、海運の方が安定してからと」
「良きに計らえ」
その後は一度家に戻り、ゆきさんに琴ちゃんを濃姫様に付ける話を言い、岐阜に呼び寄せた。琴ちゃんは物凄く喜び『医術書の出産のページを何回も読み直す』とも言っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます