第7話 久しぶりの塩味と、スキルレベルアップ。

2人を家に連れてくると、肉を忘れたことを告げタイガと取りに行く。


貴重な食糧だからな。


ラウラは家に着くなり眠ってしまった。


よほど疲れてたのだろう。


肉を取ってきて、地下室にしまうとメアリーに声をかける。


「じゃあ、弓を見せて。

 直せるかどうか見てみるよ。」


「あ、はい。

 よろしくお願いします。」


弓を受け取ると、メアリーがキョロキョロと家を見渡している。


面白いものは何もないぞ?


弓はいわゆるコンポジットボウだった。


にかわが剥げかかり、弦が切れている。


学生時代こういう武器を色々調べたから構造はわかる、何がどこで役に立つかわからないものだ。


さて、素材になるものがあればいいが。


想像錬金術イマジンアルケミーを使い、何の素材が光るか探す。


レシピは頭の中に表示されるが、代替品があればそれで光ってくれるのに気づいたからだ。


剣は光っている、鉄の部分に使うんだな。


どうせ使わないし素材にしてしまおう。


想像錬金術イマジンアルケミーは発動できるので素材は近くにあるはず。


素材の確認のため外に出る。


近くにある麻らしき植物と、木から垂れている蜜と……平原で光ってるのはさっきのオークの骨か。


感覚だが、俺の視界に入るものは恐らくすべて素材に出来る。


確認せずに発動して、何か不都合が起きたら怖いから目視で素材は確認するのは徹底しよう。


さて、発動っと。


「開様、外に出てどうされたので……え?」


メアリーの声と同時にスキルレベルアップの通知が来る。


<作成物へのエンチャント付与が可能>とのこと。


メアリーが俺を追ってくると、直ってる弓を見て啞然としている。


ちょうどよかった。


「お、直ったぞ。

 よかったな、素材が足りて。」


「え、!?いつ!?いつ直したのですか!?」


メアリーは混乱している。


「さっきだよ。

俺のスキル、神の特別製の錬金術だからな。」


「世の技術者が泣きそうなスキルですね……。

 でも開様がそのスキルをお持ちでなければ、私たちは助かりませんでした。

 授かった力と神に感謝します。」


よかったな神様、思惑通りになってるぞ。


「お、そうだ。

 さっきスキルレベルが上がってな、エンチャントとやらが付与出来るようになったらしいんだ。

 試しにその弓に何か付与していいか?」


「エンチャント付与!?」


何かすごいことなのか?


俺としては異世界感が増して楽しくなってきたんだが。


「開様……エンチャント付きの武器は、ダンジョンの奥深くから手に入る武器でもついてないのが普通というくらいのものです。

 手に入れた者は効果にもよりますが、世界で重要人物になるでしょうね。」


「え、多分スキル発動するだけで付与出来るぞ。

 俺の作成物に限るがな。」


「さっきの弓の修理の速さ、恐らく素材があればこの弓と同じものが簡単に作れるはずですよね?

 そのレベルで武器を製造出来る者が気軽にエンチャントを付けれるのがものすごいことなのですよ。」


確かに、俺のせいで戦争が起きたりするのは嫌だな。


自重しなければ。


でもどんなものかやってみたい、したくても作った武器がないし。


「試したい気持ちは確かにあるが、メアリーとラウラの身を案じての提案だ。

 弓の修理代としてエンチャント付与、試させてくれないか?」


「わかりました……修理代と言われれば払えるものが体しかないのでとても有難いです。

武器の悪用はしないと私が誓っておきますね。

ですが……エンチャントが付与されるなんて思ってなかったので、正直ワクワクしてます!」


ものすごいワクワクしてるメアリー。


「何のエンチャントが付くのかなぁ、私に合ったものだといいなぁ。」


弓を選択すると、頭に付与出来るであろうエンチャントが表示された。


「好きなのを選べるみたいだぞ?」


そう言うと、メアリーは驚いた顔のまま気絶した。





メアリーが気絶してしまったので、エンチャント付与をしないまま2人が起きるのを待った。


そろそろ日も暮れるし、泊まっていくだろう。


そう思い、3人分とタイガの分の肉を持ってきた。


地下室の氷も解けかけてるな、追加しておこう。


外で火を起こし、肉に串を通してると2人が起きてきた。


「ゆっくり休めたー、魔力回復したのです。」


「先ほどはお恥ずかしいところを……。」


ニコニコのラウラと、へこんでいるメアリー。


「ちょうどよかった、もう日も暮れるし泊まっていくといいよ。

エンチャント付与は明日でいいよな?」


「はい、お言葉に甘えさせていただきますね。

何から何までありがとうございます。」


「お肉焼いてるのです?」


ラウラの口からよだれが、お腹空いてたんだな。


「味付けがないから、素材の味しかしないがな。」


「塩でよければ、ありますよ?」


なんだと!


でもまぁ旅をするなら塩は必須だろうしな、1食分でもありがたくいただこう。

 

「頼む、かけてくれ。

 この世界に来て素材の味しか味わってないんだ……。」


「いいですよ、ちょうどドワーフ族の里に行くつもりなので補充も出来ますし。

 はい、どうぞ。」


待て、ドワーフ族の里では塩が取れるのか?


「ドワーフ族は食とお酒と鍛冶に命をかける種族なので、塩を含む鉱石から精製してるんです。

 私も狩りをして食料と塩を交換してもらってるので、よくお世話になってるんですよ。」


食とお酒!


塩以外にも調味料が絶対にある!


「頼むメアリー!

 俺をドワーフ族の里に連れて行ってくれ!」


「えぇ!?

 お連れするのは大丈夫ですが、タイガ様が来ると里が大混乱する恐れが……。」


そうか、恐れられてる種族なんだっけ。


もう慣れてるしかわいいから、つい忘れてしまう。


「なら、ドワーフ族をここに連れてくることは可能か?」


「えぇ、弓も直ってますしラウラも回復してるのでそれは可能かと。

 ドワーフ族は戦闘力も高いので、里からここまでなら問題ないですよ。」


よかった。


「そうだ、その時に野菜や酒に使う植物の種なんかを一緒に頼む。」


「え、種から育てるのですか?

 今は稔の季節なので、もうすぐ氷の季節が来ます、作物を育てる時間はないので物々交換をしたほうがいいかと。

 ですが現物だと荷物になるので、ドワーフ族に利が無いと持ってきてすらくれませんね……。」


「俺のスキルを見ただろ?

 あれを使えば、土と水と種があれば即収穫まで育てられるんだ。」


「はぁぁぁぁぁぁ!?」


「開様すごいですー!」


メアリーは女の子が食事中にしてはいけない顔になってるが?


ラウラは最初大人っぽいかと思ったが緊張してただけなんだな、今は子どもらしい反応で癒される。


「エンチャント付与も含めて、それも明日見せるよ。

 食事も終わったし今日は寝ようか。」


「そ、そうですね……。

 開様には驚かされっぱなしなのもあって疲れましたし……。」


それは申し訳ない、だがこのスキルは俺の生命線なんだ。


タイガのお腹で3人くっついて寝ることに。


メアリーは無理ですと震えていたが、ラウラに大丈夫と宥められて折れた。




「メアリー、タイガは怖くないから安心してくれ。」


「タイガ様あったかいし優しいですよ?

 メアリー姉、怖がらないでいいです。」


「ラウラ……あなたの肝の太さすごかったのね……お姉ちゃん負けたわ。」


半泣きになるなメアリー、慣れるさ。

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