第261話 自転車とチーズの売り方について色々考えた。

魔王とダンジュウロウが村に来た次の日、俺はドワーフ族の所へ行って鉄で自転車用の鍵を作った。


よくあるワイヤーの先と先を繋げた後施錠して、鍵で開錠する安いやつ。


ワイヤーの先と先を南京錠で繋いでも良かったんだが、南京錠を落としてストレスになっても嫌だろうなと思ってこれにした。


実際そんな商品は見たことなかったので、そういうことなのだろう。


「これ、魔族領と人間領で自転車に盗難防止で付けようと思ってる鍵なんだけど……ドワーフ族の手で作り方を確立出来るか?」


「どれ、見せてもらおうかの。」


ドワーフ族は鍵を受け取ってまじまじと眺める、そして鍵を掛けて開錠を何度か繰り返した。


「魔族領と人間領が鍵を作る技術をどれだけ持ってるかじゃ。

 ワシらが作る分には問題無い、少々多い受注でも受けてやれるぞ。」


「……ということは、作り方が今の間に分かったのか?」


「鍛冶を請け負ってるドワーフ族なら遊びのようなものじゃぞ?

 これだけ作ればいいのなら1日100個でも作れるわい。」


流石というか何というか……村の技術のほとんどを担ってるだけある。


もう少し先の事になるかと思っていたが、その数量作れるなら自転車を流通させてもいいかもしれない。


「ありがとう、とりあえず10個ほどお願いしていいか?」


「任せておけ、昼過ぎには完成させておいてやる。」


鉄を加工するはずなんだが、冷える時間とかは大丈夫なのだろうか?


だが、ドワーフ族にこういった物を任せて失敗したことが全くと言っていいほど無いんだよな。


俺はドワーフ族の技術力を信用というか、最早ある意味崇拝している。


なので今回も信じることにする、頼んだぞ。


自転車の鍵についてはほぼ解決したので、魔王とダンジュウロウに話をしに行くことにした。


クズノハと魔王は邪魔しちゃ悪いし後で訪ねるとして、ダンジュウロウの所へ行ってみるとしよう。


リッカの家に泊まるって言ってたし、昨晩リッカの叫び声が村に響き渡ったので家にいるはず。




「村長、父上が来られるなら事前に教えてくれ!」


「いや、俺だって知らなかったんだよ……。」


リッカの家を訪ねると、開口一番怒られてしまった……。


一度村に来てだらけた父の姿を見ても、威厳のある父の姿が離れないのだろう。


単純に父親に一人暮らしの姿を見られたくないのかもしれないけどな。


多分後者だろう、何か慌てて物を寄せて片付けたような場所がちらほらあるし。


「それより、私の家に来たという事は父上に用事か?」


「そうなんだが、居ないのか?」


「寝てる。」


ダンジュウロウ、ほんとに村に来たらだらけるな……もう朝になって大分経ってるんだけど。


「それじゃ起きたら俺が探してたと伝えてくれ、そんなに急いだことじゃないからさ。」


「分かった、そうするよ。」


そうしてリッカの家を出る、やることが無くなってしまったな。


とりあえず牧場を見に行くとしよう、チーズの生産量について話したいし。




牧場に足を運ぶと、ケンタウロス族が忙しそうにタンクを持って走り回っていた。


乳牛が居る所と作業場を往復しているので、牛乳が目当てなのだろう……これは村の消費分だけで交易に出す物までは作ってもらえないかもしれないな。


人員を補充出来ればいいのだが、それに関してはハインツに相談しないと流石に俺の一存では決めれない。


「忙しそうだな、チーズの生産か?」


「えぇ、そうです!

 今までこんなに忙しくなかったので、ちょっとはしゃいじゃってますよ!

 しかもあのピザとハンバーガーに使われるっていうじゃないですか、牧場が無いとあれが食べれないとなると頑張るしかないでしょう!」


忙しくて疲れ果ててるかと思ったが、思いのほか元気にやってくれていた。


「かなり汗をかいてるが大丈夫か?

 それに馬の部分から白い液体が出てるし……何か不調があったら早く休むんだぞ。」


「あぁ、この白いのは汗ですよ。

 馬の汗ってこんな感じなんです、あまり汗をかくほど興奮したり本気を出したりすることって珍しいんで見慣れないかもしれませんね。」


それって汗だったのか、そういえば馬の汗って見たことなかった……そうなるんだな。


ちょっと興味が湧いてじっと見てしまう、すると少し恥ずかしそうにケンタウロス族が汗を拭き始めた。


すまない、別に変な趣味を持ってるわけじゃないんだ。


「ところで、チーズの量産ってこれ以上は難しいよな?

 魔族領と人間領に交易で出すことになるかもしれなかったんだが。」


「え、そのためにこれだけ働いてますよ?

 村で食する分はドワーフ族から頼まれていたので、向こうがしている量を全て作り終えて今は倉庫で寝かせているはずです。」


「じゃあこれは完全な余剰分ってことか?」


「そうなりますね、売れなければ村でピザとハンバーガーの宴会チーズ尽くしが行われると思いますよ。」


酒の消費も凄そうだしカロリーも凄いし、何より次の日絶対に胃もたれしそうな名前の宴会だな。


チーズの種類が沢山あればいいんだろうが、そこまでたくさんの種類を作る技術は無いだろうし……あっても数種類だろう。


頑張って交渉しなければ、というかピザのレシピも買ってもらいたいな。


……待てよ?


各領に村から人員を派遣してピザを売ればいいんじゃないだろうか、デリバリーは無理にしても持ち帰りくらいは対応出来る。


それに生活魔術を使えば保温もばっちりだ、問題としてはピザを作る技術と焼く設備をどうするかだが。


それにピザだけでは飽きるかもしれない、せめてフライドポテトのようなサイドメニューもないとダメだな。


鮮度に関してはシュテフィの能力で解決するし、ピザのレシピを売るのとどっちがいいか交渉してみるか。


それにドワーフ族とも相談しないといけない、厨房は結構カツカツっぽいからな……他に出来る人がいるかどうか聞かなければ。


「村長、どうしましたか?

 すごい険しい表情をしてましたが。」


「あぁ、考え事をしてたんだ。

 このチーズを魔族領と人間領に売らないと頑張りが無駄になってしまうからな。」


「ありがとうございます、ですがピザとハンバーガーの宴会チーズ尽くしもそれはそれで楽しみなので無理はしないでくださいね?」


それは出来れば回避したいから考えているんだ、ただでさえ最近太って来てるのに。


とりあえず帰って魔王とダンジュウロウとの交渉と、ドワーフ族との相談について企画書でもまとめるか。


前の世界では事務仕事もこなしてたし、実は俺に向いた仕事なんだよな……他の人は嫌がってたけど。


でも出来ればパソコンが欲しい、ペンだこが出来て結構辛いし。


……タイプライターくらいなら作れるかもしれないな、今度試してみるか。

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