第332話 村を見回っていると、俺にとって重大な問題が発生していることが分かった。

星の核と話が終わり村へ帰宅。


俺が神になった騒ぎはまだ続いているようで、再び宴会を開かなければとなっているらしい。


それはいいけど、仕事は大丈夫なんだろうか……皆がいいならいいけどな。


「村長、話があるのじゃが。」


俺はこの前消費した作物の補充と次の宴会に使う作物を想像錬金術イマジンアルケミーで作っていると、クズノハに声をかけられた。


「どうしたんだ?」


「この宴会が終われば魔族領でも盛大に宴会を開きたいそうなのじゃ。

 村長が建てた神殿で2日ほどとの事じゃが、神として参加してもらえるかどうかお願いされておる――どうかの?」


「構わないぞ、魔王に詳しい日程が決まれば教えてくれと伝えてほしい。」


「うむ、それは我が聞いておこう。

 それとリッカ殿が村長を探しておったぞ、後で話を聞いてやってくれ。」


「分かった、ありがとう。」


俺はクズノハと話を終えてリッカを探すため村を巡回。


この前村の見回りをしている時に低空飛行をすれば楽なことに気付いたんだよな、自転車を漕がなくていいし歩かなくていいし。


……神って太るのだろうか。


もし太ったらちゃんと運動することにしよう、ドリアードの力を借りない限り俺の身体能力は人間程度なんだし。


色々考えながら巡回、住民の対応をしているとリッカを発見。


「おーい、リッカ。

 クズノハから聞いたけど俺を探してるんだって?」


「村長、良かった早めに話すことが出来て。

 父から神として式典に出てくれないかと打診が来ているんだ、どうだろうか?」


「村の宴会が終わったら魔族領の宴会がある、その後で良ければ大丈夫だぞ。

 ……だが式典か、何かお堅い事をするのか?」


「恐らくはそうだと思う。

 村に来た父はだらけきっているけど人間領では厳格な人だから。

 本物の神がおわす場で宴会を開く村と魔族領が異常だと思うけど……いや、多数決で言えば人間領が異常なのか?」


リッカは自分で考えだして混乱しだす、多数決ってある意味理不尽の塊のようなものだからそうなるのも仕方ない。


昔から思っていたけど、重要な事ならともかく感性を多数決で決めるのはおかしいんだよな。


リッカが悩んでるのは感性についてだし、そこまで悩まなくていいと思う。


「あまりお堅すぎることのないようにと伝えてくれ。

 いくら神になってもそのあたりの感じ方は人間と一緒だから。」


「分かった、そのように伝文を送ろう。

 それと個人的な質問をしてもいい?」


「どうしたんだ?」


「村長が神になってからデモンタイガー達が怖いのか逃げちゃってるんだ。

 今度大丈夫だと宥めてやってほしい、タイガが怖さと必死に戦ってるのが見てて可哀想で……。」


道理で見回りしてても見ないはずだ、まさか俺を避けているとは思わなかった。


タイガを始めデモンタイガーは相手の力量を計る感覚が優れていた気がするから、俺が神になって混乱しているんだろう。


「それはすぐ対応する、俺は神になって誰かの上に立ったつもりはないからな。

 タイガ達とだって今まで通り接したいし。」


「ありがとう、結構前から背に乗せて村の外で遊んだり一緒に戦ったりしてたから何とかしたかったんだ。」


リッカとそんなに仲良くなっていたのか、話せるラウラじゃないのは意外だな。


恐らく外に出る・戦う・遊ぶという利害が一致したんだろうな、ラウラは育児で忙しいし索敵魔術を常時展開してくれているから離れづらいのもある。


陸空の両方から哨戒をしていたら要らない気もするけどな、それに最近は魔物も村を避けるようになっていると聞くし。


本能で恐怖を感じてるんだろうな、ドラゴン族があれだけ蔓延っていたら魔物じゃなくても怖いだろう。


――なんて考えるのは後でいい、タイガ達に今まで通り俺と接してくれと伝えなくては。


「それじゃ俺はタイガ達を探してくる。

 リッカはダンジュウロウに返事を頼んだぞ。」


「分かった、よろしく頼む。」


俺はリッカと別れてタイガ達を探しに行く、逃げてるから簡単に見つけれるかどうか……。




探し出して1時間、全っ然見つからない。


本格的に避けられているな、ちょっと傷つく。


使いたくなかったけど、最終手段を使うとするか……俺はタイガの背の上に移動したいと念じて瞬間移動を試みる。


その直後ストンとタイガの背中に乗ったが、相当ビックリしたのか即座に振り落とされて尻もちをついてしまった。


タイガが俺に気付いて逃げだす。


「タイガ、待ってくれ!」


俺は大声でタイガを呼び止める、するとタイガはピタリと止まり振り向いて俺を見つめだした。


「俺が前と変わって怖くなったんだよな?

 大丈夫、神になっても俺は俺だから……今まで通りにしてくれよ。」


俺はタイガにお願いしながら少し泣いてしまう、最近はあまり構えてなかったけどタイガは命の恩人であり俺にとってなくてはならない存在だ。


妻達とは違う親愛を感じている、これはペットとは違う俺と対等の立場としての親愛。


レオとトラはちょっとペット寄りだけど。


そんな俺を見たタイガは少しずつ俺に近づいてきてくれた、前みたいな距離感じゃないのが悲しいけど逃げられるより全然マシだ。


「タイガ、とりあえず横になって話そう。」


俺は仰向けで地面に寝っ転がる、大の字になって何も危害を加えるつもりはないと精一杯アピールした。


タイガはさっきより近づいて少し離れた位置で香箱座りになっている……デモンタイガーの香箱座りって初めて見た。


そうやってするのって猫だけだと思ってたよ。


だが少しリラックスしているってことだよな、ちょっと安心。


「グォゥ……。」


タイガは不安げに鳴きながら俺を見る、また分かり合えるといいんだけど……。

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