第333話 タイガと分かり合うためにラウラに通訳を頼んだ。
「タイガ、俺は神になってもお前の言葉が分からない。
分かり合うためにもラウラを呼んできてくれないか?」
俺は仰向けになったままタイガに話しかける。
「グォゥッ。」と返事が聞こえて走っていく音が聞こえたので呼んできてくれるのだろう、言う事は聞いてくれるみたいで一安心。
俺が怖くて聞くしかない、と思ってるなら辛いけど……そういう声でもなかった気がする。
この星を守るためとは言え世界中が俺の事で大騒ぎしてるし、タイガに嫌われるし、妻や一部の住民に余所余所しくされるし……神になってもいいことってあんまりないな。
道理でオホヒルメノムチが神になるのなんて普通嫌がるって言うわけだ、火消しとまでは言わないがこれはこれで面倒くさい。
かと言って流澪にこの役をさせるのは可哀想だったしな、俺か流澪かの二択なら俺で正解だろう。
気長に慣れていくとするか、幸い時間はほぼ無限に出来たことだし……いずれ俺も皆も世界も慣れてくれるはず。
慣れるよな……?
慣れてほしい。
「タイガ様、早いですってぇぇぇ!」
考え事をしながらタイガとラウラを待っていると、ラウラの悲鳴が聞こえてきた。
顔を上げて悲鳴の方向を見ると、タイガの背にラウラが跨っている……結構なスピードだ。
あれは怖い。
「久々だからってはしゃぎ過ぎですよ、タイガ様。
それより開様、タイガ様と会話がしたいみたいですが。」
「そうなんだ、実はな――」
俺はラウラに事の顛末を説明。
「なるほど、それは辛いですね……。」
「そうなんだよ、実際ちょっと泣いちゃったし。
タイガが俺に対して何を求めてるか教えてほしいんだ、俺も変えれるところは努力するし。」
「分かりました、ちょっと待ってくださいです。」
ラウラはタイガと会話を始める、タイガはラウラと話す時「グォウグォウ。」と可愛らしく鳴くから羨ましい。
あれはタイガと会話が出来るラウラだけの特権だな、俺も神になって何とでも会話出来るようになればよかったのに。
神の力で何とかならないかな……と、思ったが俺一人で何でも出来てしまっては面白くないのでやめておこう。
それこそ孤独を加速させてしまいそうだし。
「開様、分かったですよ。」
「お、タイガはなんて言ってた?」
「タイガ様も不死にしてほしいそうです。
同じような存在になりたいって言ってるですよ。」
まさかタイガからそんなお願いをされると思ってなかった、というか妻達が不死になったのも分かってるんだな。
「レオとトラはどうなんだ?」
「お二人は気が向いたらだそうです。
怖いので今は逃げてるですが、タイガ様が同じような存在になれば慣れるだろうと言ってるですね。」
なるほどな、今はそれが最適解だろうか。
しかしここまでポンポンと不死の存在を増やしていいのだろうか……神の力で不死を治すことが出来ればいいんだけど。
だが今はそれで悩むよりタイガとの関係を修復するのが先だ。
出来ない事は後でオホヒルメノムチに聞けばいいし。
「タイガ、俺の力で不死にするからこっちに来てくれ。」
「グォッ!」
俺がタイガを呼ぶと嬉しそうにこっちへ寄って来てくれた、あまりに嬉しいので抱き着いてヨシヨシしてしまう。
「タイガ、ほんとにいいのか?
不死って割と辛いと思うし……意思疎通が出来るラウラは不死になってないぞ?」
「グォォウ、グォン!」
「大丈夫、村長が居ればそれでいいって言ってるです。」
「タイガ……。」
そこまで俺を慕ってくれていたのに怖がらせてしまって申し訳なくなる、気づいてやれなくてすまない。
申し訳なさと嬉しさで涙が出てきた、それに気づいたタイガは俺の涙をぺろぺろと舐めとる。
「それじゃもう戻っていいですかね?
ウルスラの世話をほっぽりだして来ちゃってるのですよ。」
「それは申し訳なかった。
すぐ戻ってくれ、そんな状態で長居させてたらオスカーとクルトにどやされてしまう。」
「村長の事だったと言えば大丈夫ですよ。
それにウルスラも、最近は少々一人にしてても大丈夫なくらいに成長してますし。」
「それならよかったよ。
でも早く戻ってあげてくれ、また何かあったら頼むから。」
ラウラはぺこりとお辞儀をして自分の家へ戻っていった――ついこの間ウルスラが生まれたと思ったのにもうそんなにか。
時が経つのは早いなぁ。
「グォォ。」
「待たせちゃったな、すぐに不死にするから。」
と、言っても
それともあれはオホヒルメノムチ特有の能力なのだろうか、そう思いその辺の石をナイフ状にして
すると流澪が言っていたようなインターフェースが頭の中に浮かぶ、使えるようで良かったよ。
俺はタイガの寿命を切って不死にした、一瞬苦しがったが流澪のようにポーションを飲まさなくても良かったのは安心。
ああなったのは魔力の関係で不完全になったのかもしれないな。
タイガは自分の中で何かが変わったのが分かったのか「グォウグォウ!」と嬉しそうに鳴きながら俺の周りを走り回る。
とりあえずタイガとの関係が戻りそうで一安心。
俺はそのままタイガに乗って村の外まで駆けだしていった、警備の人が「危ないですよぉぉ……!」と叫んでいるのが聞こえたが俺もタイガも死なないから安心してほしい。
何か来たら返り討ちにしてやろう、今まで守られていた分俺も魔物を倒してみたいぞ。
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