第331話 星の核と契約について話をしてきた。
朝。
目が覚めたので起きようとすると、体に重みを感じる。
何かと思い視線を落とすとウーテが俺に抱き着いて眠っていた、何時の間に忍び込んだんだ……。
言ってくれれば一緒に寝るのに、ペトラとハンナの目が覚めたら寂しがられるぞ。
と言っても、親が寂しくて仕方なかったのでこうなっているんだろうけど――とりあえず頭を撫でてあげよう。
「んん……村長?」
「おはようウーテ。」
しばらく頭を撫でているとウーテも目を覚ました、ウーテは寝起きからシャキッと動けるタイプなのですぐに体を起こす。
羨ましい、俺は神になってもダラダラ眠気が続くタイプなのに。
「ごめんね急に押し掛けちゃって。
夢で村長がどこかに行く夢を見ちゃったから不安になって……。
そんなことはないと分かっててもさ、やっぱり神様になってるし。」
「大丈夫だ、俺は何があっても村を離れないよ。
ここを拠点にこの世界の神としての仕事もするつもりだから。」
「ありがとう、神様の言葉を聞いて安心したわ。」
ウーテはニカッと笑って朝の身だしなみを整えるため部屋を出ていく。
核との話もあるがホントに事務手続のようなもので終わりそうだし、後はいつも通りの生活が始まるだろう。
心配なのは俺がこの世界に干渉することによって文明の発達がどの程度遅くなるかだ……そのあたりどうやって調整してるんだろうか。
核に聞いてみるとするか。
とりあえず俺も着替えて朝食を食べに食堂へ行こう、核を待たせるのも悪いし。
「おそーい。」
「すまないって……ちょっと村の住民に捕まっちゃったんだよ。」
朝食を食べ終わり、星の核のところへ行くと開口一番文句を言われた。
目の前には光る球体、これが恐らく星の核だろう。
星の核の場所まで移動したいと念じたらここに来たし、間違いないはずだ。
俺が送れた理由は食堂へ行くと俺が神になった噂が瞬く間に広がっており、質問攻めを受けてしばらく動けなかったんだよな。
ピザトーストが冷めてちょっと悲しかった、今度食べ直さなくては。
「さて、それじゃ今は仮契約になってる神の座の契約について話そうか。
そうは言っても内容としては不干渉の約定を結ぶかどうかと、今後の進化の路線についてだけどね。」
「そのあたりまで調整出来るのか……というか、文明発達の速度もそうだけどどうやって調整してるんだ?」
「君が居た星で、過去の偉人が良く物凄い閃きをして世界に多大な影響を与えた人が居たはず。
そういった閃きや啓示は星の核が抽選して啓示をしてるんだ、もちろん条件はあるけど。」
「抽選って……もし動物や魔物が当選したらどうするんだ?」
「文明を持ってる、もしくは技術が一番発達してる種族に限るよ。
その種族の誰が啓示を受けるかは完全に運だけどね、だから子どもがそれを受けて世に広まらない事だってある。
それは仕方のない事、この抽選回数を増やすのが不干渉の約定と思ってもらえばいいよ。」
そう言われると納得、だからこそ前の世界でも人類だけが加速度的に文明を発達させれたんだな。
進化論とかそういったのもあるんだろうが、大半は星から与えられた知識を昇華させ発展に繋げたに過ぎない。
だが、一つ疑問が残る。
「何で不干渉の約定を結ぶとその抽選回数が増えるんだ?」
「神が知的生命体を引っ張っていけるなら、技術を必要とする機会は少ないじゃないか。
それに思いついたことを直接伝えて発展を促すことも出来る、神というのはそれくらい発言力も影響力もあるんだよ。」
納得、確かにそれはそうだ。
なら前の世界も不干渉の約定を結んでたんだろう、同じ名前の人が世界を引っ張ってるなんて聞いたことがないし……そもそも人類の発展に大きく寄与した偉人はほぼ全員亡くなってたからな。
「さて、不干渉の約定の説明はこれくらいでいいかな?
それじゃ先にここから片付けよう、君は不干渉の約定を僕と結ぶかい?」
「結ばない、俺はこの世界に干渉してこれから生きていく。」
「君の概念で言えば不労所得として神の力が転がり込んでくるんだよ?
そしてこの契約を変更することは出来ない、それでも不干渉の約定を結ばなくていいかい?」
滅茶苦茶念を押してくるな、しかし変更が出来ないのなら当然か。
昔の神は星の核にクレームを入れたのだろうか、ちょっと世知辛さを感じる。
「大丈夫だ、俺は不干渉の約定を結ばない。」
「分かった、それならそのように契約魔術をかけさせてもらうね。」
星の核がぱぁっと強く発光すると俺に契約魔術をかけたのが分かる。
先ほどの内容だったのでそのまま承諾、ちなみに破棄した場合は今後一切この星に関わることが出来ないそうだ。
絶対嫌だ、ちゃんと干渉するし無理矢理破棄なんてしないようにしなければ。
「それと今後の文明発展の方向性についてだけど、あまり高度な発展をさせると星の命が縮むしイフリート君が破壊しちゃうよね。
これに関しては相談してくれれば対応出来るから安心してほしいけど、とりあえず今の方向性だけ決めてほしいな。」
「エネルギーに関しては俺の村で賄える……と信じたい。
だからそのエネルギーを使った技術やその応用に関する啓示を頼もうか。」
「うん、分かったよ。
この星の情報は全て僕に流れてくるから、君が伝えた技術と啓示が被ることはないから安心してほしい。」
それを聞いて安心した、後で聞こうと思っていたからな。
「さて、とりあえず話すのはこれくらいかな?
新米神様ということでちょっと長くなっちゃったね、オホヒルメノムチの時はすぐ終わったのに。
まぁ前の星が結構速く滅んでろくに神の力が得れてなかったみたいだけど。」
そんな事があったのか、だがそのあたりを聞き出そうとするのは流石に失礼だし何もしないでおこう。
文字通り触らぬ神に祟りなし、だ。
星の核と会話を終えようとして、ふと疑問が出てきたので聞いてみる。
「そういえば俺が言う技術や、他の技術なんてどうやって思いつくんだ?
いくら全ての情報が流れ込むと言っても、閃きだけじゃ無理だと思うんだけど。」
「星の核をなめないでよ、と言えたらかっこいいんだけどね。
実はこの全宇宙全ての文明や歴史が記されているアカシックレコードっていうのがあるんだけど、星の核はそこに接続できるからそこから使えそうな知識を拝借してるのさ。」
アカシックレコード……名前は聞いたことがあるが実在するんだな。
今度念じてそこに飛んでみるか俺も接続してみて――
「ちなみに星の核以外の接続は宇宙の理として禁止されてるからね?
もし破れば存在が抹消されるよ。」
滅茶苦茶怖い事を言われた、素直に思いつく事と星の核の抽選でいい技術が啓示されることを祈るとしよう。
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