第48話 プラインエルフ族の里が危ない。
シモーネがオスカーを連れて俺の家に来た。
巨悪の魔人と戦って勝ったというオスカー、長く生きてるとは思ったが相当な長生きだな。
「文献で見た世界を救ったドラゴンがこの村に住んでいるなんて……!」
グレーテが感動と尊敬のまなざしを向けてそう言うと、「そんな風に言われていたのか。」と少し照れ気味に反応するオスカー。
そんな照れてるオスカー初めて見たぞ、ほらグレーテもすごいびっくりしてる。
でも、ウーテが言ってたグレーテの気配に似ていると言うのはなんだったんだろうな。
巨悪の魔人とグレーテが似ているとはとても思えないが。
「あぁ、それは巨悪の魔人が魔族だから似ていたのかもしれませんね。
基本魔族は平和主義なんですが、あまりに力を持って生まれてしまったばかりに、歪んでしまったのが巨悪の魔人だと言われています。」
なるほどな、種族が同じだから似ていると感じたのか。
原因は分かった、情報もある……だが実際どう解決すればいいかわからない。
「復活させて吹っ飛ばせばいいんでは?」というオスカーの意見は保留。
遠方から気配を感じ取れる以上復活は近いかもしれないが、プラインエルフ族の里に被害が及ぶ可能性があるからな。
「復活する前に神の樹に対して何かしらの対処をすればいいのでは?」というシモーネの意見も保留。
ザスキアが神の樹に何かさせてくれるとも思えないし、メアリー・ラウラ・カタリナもそれに同意見。
「巨悪の魔人を崇めていると伝えて理解してもらい、すぐにやめさせて村に移住させては?」というウーテの意見も保留。
宗教や信仰っていうものは他者の意見で簡単に変わることは出来ないんだ、説明をしても取り合ってくれないか、激昂する場合が大多数だからな。
しかし、この3つの意見が今俺たちに出来る候補だとも思う……それぞれに保留にせざるを得ない理由がある以上動きづらいな。
「グレーテさん、巨悪の魔人に関した文献は魔族領に行けば簡単に閲覧出来ますか?」
メアリーがグレーテに質問する。
「冒険者ギルドの資料室に行けば可能です、私が居れば簡易の手続きで資料室に入ることも出来ますよ。」
しかし、文献を再確認してもグレーテが知っている以上の情報は得られないんじゃないか?
それにもし文献を持ち出したとしても、外部の情報のほうが正しいと宗教のトップに納得させるのは難しいと思うが……。
「おばあ様に説明してその文献を直接魔族領で読んでもらえば納得してくださるんじゃないかなと思いまして。
こちらから情報を持っていくと信じないでしょうが、完全第三者の土地にある文献を見たなら納得せざるを得ないでしょうから。
頭は固いですが、やるべきことはやる族長だと信じてますし。」
なるほどな、こちらから文献を持っていくんじゃなく向こうにあるものを読ませるのか……それなら信じてくれる確率は高いだろうな。
他の皆もそれに同意した、ザスキアを魔族領に連れて行くことは決定。
カタリナとグレーテ、ドラゴン族はクルトとウーテがプラインエルフ族の里に寄ってザスキアを連れて行き、魔族領に向かう。
オスカーとシモーネはもしもに備えてプラインエルフ族の里で巨悪の魔人に備えようということになった。
突然のことだが、急を要する事態だ。
すぐに出発してもらい、後ほどプラインエルフ族の里にも魔族領にも食料などの物資を届けるようにするか。
確認したいことがあるから、俺もプラインエルフ族の里に連れて行ってくれと頼む。
ラウラにはローガーとハインツに事の説明を頼み、村の管理を任せる。
メアリーはラウラの補佐として意見があれば出してやってくれ、お腹の子どものためにも無理はするなよ?
役割分担も終わり、それぞれが限りなく急いで準備をして行動に移った。
プラインエルフ族の里に到着した、ちょっと前にドラゴン族が調査に来て、そのあとすぐに村の住民がこちらに来てびっくりさせてしまっている。
すまないが緊急事態だ、ザスキアのところに通してくれ。
「どうしました、先日調査に来たと思えば今度は大人数で……どうしても移住させたくて侵略でも企てているのかしら?」
ザスキアが冗談に聞こえないイヤミを言ってくる、そんなことはないから安心してくれ。
「おばあ様、ちょっと確認してほしいことがあるの。
プラインエルフ族どころか世界に関わる問題だわ、使者として選んでくれた私を信じて一緒に魔族領まで来てくれないかしら。」
カタリナがザスキアを魔族領に連れて行くため説得する、ザスキアは訝しいような顔をしているが。
「ザスキアさん、私からもお願いします。
名前を聞いたことはあるかもしれませんが、巨悪の魔人に関する問題なのです。
村の総力を挙げて解決に向かって動いています、プラインエルフ族も関わっていることなので、ぜひ協力を。」
「ワシからも頼む、プラインエルフ族は関わっているどころかこの問題の中心というべき存在だ。
長であるザスキアどのが納得してくれないと事を前に進めることが出来ない、ワシらを信じてくれ。」
ドラゴン族のトップ2人に頼まれて、ザスキアは折れてくれた。
「わかりました……ただし条件がありますよ。
私が居ない間、里の安全をあなたたちに確保していただきます、普段は私が魔よけの魔術を使って魔物を寄せ付けないようにしていますから。
村に魔物が来たら守ってくださいね?」
「あぁ、任せろ。」
オスカーが頼もしい返事をしてくれた、よろしく頼むぞ。
クルト・ウーテ・ザスキア・カタリナ・グレーテの5人は魔族領に向かっていった、ザスキアはドラゴンに乗るのがわかるとすごく嫌がっていたが、カタリナが無理やり乗せて出発。
大丈夫だろうか……暴れたりしなければ落ちることはないだろうが。
俺は木材を思い浮かべて神の樹が光ってくれるか確認……よし、光るな。
「オスカー、巨悪の魔人が復活する前に俺が神の樹を木材に加工しても大丈夫だと思うか?」
「今の状況は、巨悪の魔人が触媒である神の樹を崇めさせて復活の力を蓄えてると考えるのが妥当だ、完全復活は阻止できるが……宿っている巨悪の魔人が不完全な状態で復活してしまうと思うぞ。
まぁその場合はワシが討伐してやる。」
ほぼ同化していて木の部分だけを錬成するようなものなのか。
思ったより面倒な状況だな……まぁ自身の復活をかけているのだからそう簡単に突破はさせないようにしているか。
しかし触媒となると、巨悪の魔人の本体はどこにいるんだろうな。
「神の樹の中にあるだろうな、樹と体を直接繋げて、吸い上げたエネルギーを送っているのだろう。」
なるほどな。
あー……すごく嫌だが解決策は思いついたぞ。
「なぁ、魔族の体って人間やエルフと基本構造は変わりないのか?」
「あぁ、ヤツと戦った時も装備や魔術で強化や変化があったが、構造自体は変わらんはずだ。」
それなら俺の
とりあえず今は、魔族領に向かった5人の帰りを待とう。
いくら世界の危機とは言えここはプラインエルフ族の里、神の樹に俺たちが何かしていいのはザスキアの許可をもらってからだな。
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