第144話 シュテフィが無事(?)復活した。
今日は満月、シュテフィが復活する日だ。
正確には今日の夜を終えた朝に復活するんだが、細かいことは気にしないでいいだろう。
「シュテフィ、今日の夜が満月だが魔法陣を広場に移動させたほうがいいか?」
「気をつかわなくていいのに、でもそうね……移動させてくれるなら皆から見える場所がいいかしら?
私の復活を見れば話題にもなるだろうし、馴染みやすいと思うから――あっ。」
シュテフィの意見を聞いていると最後に焦ったような声を出した、どうしたのだろう。
「ごめん村長、言い忘れてたことがあるんだけど……日光を遮ることが出来る道具は無いかしら?
吸血鬼は日光に弱くて……原因は分かってないんだけど、どうにか出来ると嬉しいわ。」
日光に弱いか、またベタな弱点があったものだな……しかし夜が終わると朝日が昇ってきているだろうし日光を遮ってないとシュテフィにダメージが入る。
だからと言って陰に魔法陣を置いてると月光が足りず復活できないかもしれないしな、さてどうしたものか。
一番に思いつくのは日傘だな、しかし日傘なんて俺は使ったことが無いから素材がわからない。
昔母親の日傘を振り回して遊んだ時に触った感じはゴワゴワしてたから綿や麻なのだろうか……でもそれで作っても隙間なく作るのは想像錬金術でも難しそうだ。
とりあえず日傘で想像錬金術を作ろうとして、何が素材に使えるか村を散策してみるか。
「村長、どうにか出来るの?」
少し長く考えているとシュテフィに再度呼びかけられる。
「すまん、どうすればいいか考え事をしていた。
とりあえず復活までに日光を遮る道具は作っておくから、それと誰かに頼んで魔法陣も移動してもらっておくぞ。」
「ありがとう、お願いね。」
シュテフィと会話を終え日傘の素材を探すため倉庫に向かう、話せば話すほど普通なんだよな……封印されるくらいなんだから過去に悪事を働いていたはずなんだが。
流石にその爪痕は残ってないだろうし時効だろう、契約魔術さえ使えば一住民として接して良さそうだな。
そう思いながら倉庫に到着、日傘を思い浮かべてみるもやはり綿や麻しか光らなかった。
もっと日光を遮る素材は無いだろうか……UVカットなんて気にした事なかった俺が前の世界の知識を必死に呼び起こそうとすると、会社に居た女性が出勤時につけていたショールを思い出す。
他の女性社員と話していた時に「これポリ100%でー。」とか話してなかっただろうか、それならポリエステルは日光をかなり遮れるのかもしれない。
そう思い石油精製所へ、技術者に石油の場所を聞いて日傘を錬成しようとすると光った……これだ!
バケツ1杯分だけ石油を分けてもらい、持ち手やらの素材と合わせて日傘を錬成。
これでシュテフィのお願いは聞けたはずだ、妻たちに使ってもらってどういう使用感か聞いてみるとしよう。
メアリーとカタリナに使ってもらった結果「私たちのも作ってください!」と念を押されるくらい良かったらしい。
俺は男だからかあまり日焼けとか気にしないが、女性はやはり気にするものだろうし、それだけ日光が当たる感覚に敏感なのだろう。
そんな手間でも無いのでもう一度石油を分けてもらって日傘を3つ錬成、2人が欲しいならウーテも欲しいだろうと言われたからな。
女性である2人からいい意見が貰えたので日傘は成功だろう、俺にしか作れないのはネックだがそう言った物は魔族領や人間領に流通させるつもりはないので問題無い。
もし代替品を聞かれたら綿や麻でも大丈夫だと伝えることにしよう。
そしてシュテフィの復活を見るため2日連続の宴会が始まった。
「シュテフィさん、早く復活して一緒に楽しみましょうね!」
村の住民もお酒が入って楽しくなったのか、次々にシュテフィに話しかけている。
「あーもう、丸1日分の満月の月光を浴びるまで無理なんだってば!
私の事は気にしなくていいから楽しんでなさい!」
ツンデレみたいな対応をしているな、こんな言葉俺にしか分からないから胸にしまって酒とつまみをつついているが。
この調子ならシュテフィも問題無く村に馴染めるだろう、泥酔して潰れなければだが……そこまで酒に弱い人は少ないから気にしないでいいな。
「村長ひどいではないか、このような催しに私を呼んでくれないとは。」
そう言われて振り返ると、キュウビがそこに立っていた。
「え、キュウビ!?
しかも影法師じゃないし、いつ帰って来たんだ?」
そこに居るはずじゃない人物がいてものすごいびっくりしてしまった……贖罪の旅はどうしたんだ?
「いろいろ頼んで流石に悪いと思ったから、この前話した時に伝えて迎えに行ったのよ。
ダメだったかしら?」
横に居たシモーネが理由を説明する、そういう事だったのか。
「いや、ダメじゃないが一言欲しかったかな。
今度から相談してくれると助かる。」
主に俺の心臓が、本当にびっくりしたからな……。
「しかし直接会うのは久々だな、誘わなかった俺が言うのもなんだが村の食事を楽しんでくれ。
宴会は2日間あるから、終わるまで村で英気を養ってそれから旅の続きでいいからな。」
「はっはっは、贖罪の旅に再出発するのに英気を養うとは初めて聞いた。
でもそうさせてもらおう、久々美味しい食事だからな……その辺のオークやリーズィヒエーバーは飽きたところだったんだ。」
確かに贖罪なのに英気を養うって変だったな、でも他に言葉が思いつかなかったし笑ってくれたからいいか。
しかしキュウビも少しやつれているな、というか引き締まったのか?
そんなキュウビの顔や体を見た後自分のお腹を触ってげんなりする、俺も痩せるために本格的な運動をしないといけないかもしれない。
でもこう思って今までだからずっとやらないかもな……取り返しのつかなくなる前に運動したほうがいいんだろうが。
流石に太り過ぎたら妻たちが指摘してくれるだろう、運動はそれからでもいいか。
俺は弱い意思を頭の隅っこに追いやってお酒とつまみのお代わりを貰いにいく。
そうこうしていると月が沈みかけている、もうすぐシュテフィの復活が近いな。
気付いた住民が次々と魔法陣の周りに集まってきた、元々全員で見るためにこの宴会をしているからこうなるのは必然なのだが。
「こ、ここまで大勢に見られるとものすごい恥ずかしいわね……。」
いきなり大注目されたシュテフィが明らかに恥ずかしがっている、回りは「気にしなくていいよ、大丈夫!」なんて言ってるが何が大丈夫なのか俺にも分からない。
「あ、封印が消えかかってる……もうすぐよ!」
シュテフィもいざ封印が解けるとなると嬉しいのだろうか、声のトーンが上がっている。
少しするとずっと光っていた魔法陣の光が消えた……封印が解かれたという事なのだろうか。
「……シュテフィはどこに行ったんだ?」
「さぁ……。」
光が消えてもシュテフィが出てこない……まさか封印が解けてそのまま死んでしまったとかじゃないだろうな?
俺も含めて皆が慌てだしたころ、魔法陣がゴボッと取れて手が伸びて来た。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
村の住民は突然の出来事に叫び声をあげる、まさか……。
「っふぅぅ……土の中から出るのって大変ね……。
あら、どうしたの皆?」
突然のホラー展開にびっくりしてるだけだ、とりあえずお風呂に入ってきなさい。
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