第145話 シュテフィも無事に受けれられ一安心、それからキュウビと話をした。

「ふぅぅ……さっぱりした。

 いきなり土埃まみれでごめんなさいね、しかしこのお風呂っていうの気持ちいいわ。

 水浴びと違って氷の季節でも冷たくなくて辛くないし。」


風呂から出てタオルで体と髪を拭きながら脱衣所から出てきた、素っ裸で。


「おい、メアリーたちが服を用意してくれてただろう。

 手前にある空間が脱衣所だ、ついでに着替える場所でもあるから用意してる服を着てきてくれ。」


「あら、そうだったのね。」


そう言ってシュテフィは脱衣所へ戻っていく、しかしめちゃくちゃ肌が白かったな……髪の毛も真っ白だし。


瞳の色は青っぽかった、これらの特徴から吸血鬼は総じてアルビノなのかもしれないと推測する。


動物や爬虫類しか見たことがないが、人間でもたまにあるというのは聞いたことがあるからな……吸血鬼はそれが先天して起こりやすい、もしくは必ず起こる種族なのだろう。


アルビノなら日光に弱いのも納得だ、メラニンが少なすぎて紫外線に対する防御が出来ないからな。


なんて考えていると服を着たシュテフィが「お待たせ。」と言って出てきた。


「よし、改めて皆に姿を見せに行くか。

 初対面は完全にホラーだったからな……。」


「何千年も固まった岩や土を掘り返してきただけ褒めて欲しいところなのに……。」


膂力は充分だということは証明出来たので大丈夫だと思うぞ。




宴会場に戻ると「肌綺麗、何してたんですか!?」や「髪の色綺麗!」と女性陣にたかられている、そうなるとは思わなかったのかシュテフィが困惑している。


「これは生まれつきだから……というか不気味に思わないの?

 真っ白な髪に真っ白な肌、私が封印される前は気味悪がられたから吸血鬼は孤立したんだけど。」


「そんな事思いませんよ、だって実際綺麗ですし!」


思わぬ歓迎だな、だが実際シュテフィは吸い込まれそうな肌をしていて綺麗だと思う。


一糸まとわぬ姿を見たことは黙っておこう、妻たちもシュテフィの肌や髪を褒めているから見たとなると何を言われたか分かったものじゃない。


さて、皆の反応もいいことだし後は任せて俺はゆっくり飲むとするか。


しかしこの世界に来て宵越しで飲み続けるなんて初めてだな、初めて不健康な生活を送っているかもしれない。


前の世界では当たり前にこういうことをしていたものだが……やはり環境が変わると違うものなんだな。


だがたまには悪くない、最近はトラブル続きで気を張っていたしこういう時間もあっていいだろう。


沈んでいく月を眺めながら酒を飲んでいると、シュテフィに日傘を渡すのを忘れていた。


慌てて倉庫へ取りに行きシュテフィに渡す、復活してすぐに日光にやられるのは可哀想すぎるからな。


「まさか吸血鬼が黒幕で、この村に住むようになるなんて思ってなかったよ。

 私も知識はあったけど存在は不明だというのが通説だったから。」


日傘を渡して飲み直しているとキュウビが隣に来て話しかけてきた、存在が不明……恐らくシュテフィは力があったから封印で済んだが他の吸血鬼は魔女狩りのような行為で駆逐されたのだろう。


「そうだったのか、でも女性が生き残っていたのは運がいいかもな。

 妊娠して産まれるのは女性の種族に寄るんだろ?」


「それもそうか……繁殖の事などしばらく考えたこともなかったからうっかりしていた。」


生物にある種を残す本能を考えたことないなんて珍しいな、俺もそこまで真剣に考えているつもりはないがすることはしているし……長らく独り身だったからだろうか?


「おっと、少し口が滑ってしまった……久々の酒だからかな?

 気を悪くしたならすまない。」


「いや、そんなことは無いぞ。

 それより地図の作製はどんな感じなんだ?」


「思ったより広い、だが四方が山に囲まれているということだから、内地を未開の地と定義するなら進捗状況は3割と言ったところかな。

 気長に待ってくれると助かる、測量しながらだとどうしても時間がかかってしまうから。」


むしろ測量しながらでその範囲が終わってるのがすごいと思う、思った以上に完成に近づいていた。


やはりキュウビも必要な人材だったな、贖罪という名目で地図を作ってもらっていて申し訳ないがこの先絶対役に立つ。


というか役に立たせないと作ってもらった意味が無い、村を中心に開拓を進めるとしてもどの方向に何があるか分かるだけでも違うからな。


「大丈夫だよ、身の安全第一で続けてくれ。

 キュウビが帰って来た際には約束通り宴会をするから、そういえばキュウビの好みは何なんだ?

 まだ気が早いかもしれないが、帰ってくるときにはドワーフ族に準備してもらっておくから。」


「うーん……強いて言うなら油揚げだろうか、出汁が染みているやつが格別だな。

 あの味は人間領にある調味料が無いと再現出来ないだろうが……。」


「それなら大丈夫だ、人間領とも今後取引を行っていくことになったからな。

 とりあえず魚醬・かつお節・昆布・料理酒を取り寄せるよう手配している。」


俺が取引の件を伝えるとキュウビの目が真ん丸になった、そんな驚くことか?


「私の件があったのによく商談までこぎ着けたなぁ……。」


「最初はギクシャクしていたみたいだけど、少し時間が経つと商人との間も普通の関係に戻ったみたいだぞ。

 理由も分かっているし実質被害が出たのは人間領だけだからな、それにマーメイド族の仕事ももらっているし。」


「それを聞いて安心したよ、魔族領との繋ぎ役は今もキチジロウが行っているだろうな。

 あの者はよく働いてくれるし頭もいい、良くしてやってくれると私も嬉しいよ。」


商団連の長とは言えきっちり認知しているあたり、キュウビは真剣に人間領の施政をしていたのだろう。


実際キチジロウはしっかりとしていると思うし責任感も強そうだったので、今後もお互い良好な関係を築いていきたいと思っている。


「しかしそのあたりの調味料を知らずに選ぶとは中々勇気がいる決断だったろう、何が決め手だったのだ?」


「俺が前に住んでた世界で、俺が住んでいた国で同じ名前の調味料があってな。

 味は俺が完全に分かっているし、故郷の味みたいな感じがしてとりあえず品質と味を見る……といった感じかな。」


「そうだったのか、それはいい偶然だったな。

 施政をしていた私が言うのもなんだが、最初の取引だからかなり高品質の物を持ってくるだろう……味は私が保証するよ。」


それを聞いて安心する、俺もスーパーで売ってる物程度の味しか知らないから楽しみだ。


話ながら油揚げを使った料理について考えていたが、いなり寿司ときつねうどんくらいしか思いつかない。


「なぁキュウビ、この世界に寿司やうどんという食べ物はあるのか?」


「スシ、ウドン……?

 そのような食べ物は聞いたことがないぞ、村長が以前住んでた世界にはそのような食べ物があったのか?」


「あぁ、どちらも油揚げに合わせれる美味しいものだ。

 寿司は他にも魚を使ったものもある、キュウビが次に来るまでにドワーフ族と再現しておいてみせるから楽しみにしててくれ。」


「それは楽しみだ!

 是非早く食べたいものだな、私も本気を出して地図作成にかかるよ!」


こんなことを言ってなんだが、どちらも俺が食べたい。


ラーメンもいいし、村でチーズが出来るようになったからピザもいいな……しばらくは村の事以外は前の世界にあった料理の再現に力を入れるとしようか。


村のためにもなるし一石二鳥だろう、宴会が終われば早速取り掛かるとするか。

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