第146話 宴会も終わり、いつもの日常に戻った。

2日間続いた宴会も終わり、次の日は片付けをして住民全員で休むことにした。


好きなことをしていい未開の地の村の休日、趣味を仕事にしている種族以外はのんびりと過ごしている。


それと仕事に飢えていたマーメイド族は宴会を途中で抜け出してまで仕事に行っていた、しかも喜んで行ってたあたり余程仕事が出来るのが嬉しいのだろう。


待たせてしまってすまない、これからは魔族領だけじゃなく人間領でも定期的に仕事があるからうまく割り振って仕事をしてくれ。


貨幣は行商だけじゃなく魔族領や人間領で消費してもらってもいいと伝えている、マーメイド族は「村長に納める分以外はそうします!」と張り切っていた。


別に納めなくてもいいんだが、妻たちが決めたことだし他の種族は納めてくれているから断るのも不公平だろうな。


また俺の家に貨幣が増える……貨幣が100枚入る箱も新しく作って増やしたほうがいいかもしれない。




休日は何事も無く過ごして終わり、次の日からはいつもの平和な日常が戻ってきた。


最近は平和じゃなかったけど。


俺は早速シュテフィのところへ行こうとしたが、そこでふと不安が頭をよぎった。


シュテフィの家……作ったっけ……?


俺は慌てて住民たちに声をかけシュテフィの居場所を特定、ダンジョンに居ることが判明したので向かっていく。


なんでまたダンジョンに居るんだ、長年封印されていたから土中が好きになったという理由でもないだろうに。


ずっと走っていたのでダンジョンに着いたころには汗も止まらず息切れも激しくなっている、疲れた……。


中に入って辺りを見渡すと、採掘部隊に混じってシュテフィが採掘しているのを発見。


「シュテフィ、なんで採掘をしているんだ?」


「あら村長……どうしたのそんな汗だくで。

 日光に弱いから外に居るわけにも行かず、鍛錬所に行ってもウェアウルフ族にボコボコにされたから体を鍛える意味でこの仕事を選んだのだけど……ダメだったかしら?」


それを聞いた俺はびっくりした、大昔に封印されるレベルの吸血鬼を普通に倒す戦力が備わっている村の住民の戦闘力に。


ちょっと強くなり過ぎじゃないかな、話して思い出したのかシュテフィもちょっとしょげてるし。


「いや、仕事は選んでくれたのならいいんだけど……住むところを準備してないと思ってな。

 昨日とかどうしてたんだ?」


「とりあえず食堂で飲み直して食事をして、ドワーフ族が休まず料理を作ると言うからそれも一緒にいただいて……そのまま食堂で寝ちゃってたわね。

 住む場所なんてすぐに作れるわけでもないだろうし仕方ないわよ、私はノームも使役しているしこの仕事は向いていると思うわ。」


「シュテフィさんが来てから鉱石やシュムックの場所が分かるようになって非常に助かってます、無駄な坑道を増やさなくて済むのはものすごい効率が上がってますよ!」


ミノタウロス族にそう言われてフフンとドヤ顔をするシュテフィ、助かっているならそれが天職なのだろうが……俺は俺でシュテフィに住居を作った後に頼みたいことがあるからちょっと貸してほしい。


ケンタウロス族に事情を説明し承諾を得たので、2人で地上へ戻る。


「さて、住居だがどのあたりがいいんだ?

 家が建つ場所さえ空いてたらどこでも大丈夫だぞ。」


「そうねぇ……日当たりがあまり良くない場所がいいかしら。

 極力日光を避けたいのよね、それと少し大きめな家がいいわ――客人が来た時や私の趣味に便利だから。」


「趣味があるのはいいことだな、ちなみに何が趣味なんだ?」


「動物や魔物のはく製を作ることよ、強さを誇示出来ていいでしょう?

 ……この村の住民には負けたけれど。」


またしょげさせてしまった……すまん、まさかそんなことが趣味だとは思わなかったんだ。


しかしはく製か、男としてそういうのに一度は憧れるから興味はあるな。


今度出来たら見せてもらう事にしよう、本物のはく製ってまだ一度も見たことがないし。


とりあえず希望通り日当たりの悪い森の近くに大きめの家を建てる、立地的には色んな施設から離れてて不便だが本人は喜んでくれたのでいいだろう。


「それじゃ着替えや体を拭くタオルなんかはケンタウロス族に頼めばもらえるはずだから。

 洗濯は籠にまとめて広場の近くにある小屋へ、籠に名前を書いた札を置いておくとプラインエルフ族が生活魔術で洗濯してくれてる。」


「至れり尽くせりな村ね……使用人も無しにここまで村全体で生活を賄えてるのはすごいと思うわ。」


実際助かってる、各々が得意分野の仕事で村を支えてくれているからより良い生活が送れているからな。


「それと、シュテフィに聞きたいことがある。

 指定した時空に干渉することは可能なのか?」


「それは可能よ、じゃないとあそこまで同じ魔物を連続して呼べないし。

 どうしたの、何か欲しいものでもある?」


「欲しいのは欲しいが、それだとその世界に迷惑がかかってしまうからな……窃盗になってしまう。

 俺が欲しいのは情報だ、前の世界でありふれた調味料が欲しいんだが原材料が分からなくて再現出来ないんだよ。」


指定した時空に干渉出来るならチャンスはある、問題はどうやって干渉するかなんだが……こればっかりはシュテフィに聞かないと分からないので俺の要望を伝えた。


それを聞いたシュテフィは少し悩んだ様子をした後に口を開く。


「村長の住んでた世界って、魔法や精霊なんかと所縁のある世界だったの?」


「全く無いな、作り話や逸話なんかでしかそう言った単語は出てこない。

 普通に過ごしている分にはそういう物と関わることは無かった、原理が分からなくて魔法のように感じる技術は多々あったけど。」


よく考えれば前の世界では便利だからという理由で使ってたが、生活に関わるほとんどの物が魔法みたいなものだったな。


「それだと少し難しいかも、世界の指定は出来ても座標の指定までは出来ないし……突然誰かが目の前に現れたら大騒ぎになるんじゃないかしら?

 よしんばうまく行っても私はその世界のルールを知らない、村長に行ってもらう手もあるけどその世界に縁が残っているならそれに引っ張られてここに帰って来れない可能性もあるわ。

 私が他の世界の魔物を連れて来れてたのは、その世界には魔物しか住んでないからよ。」


前の世界を考えるとそれだけで大騒ぎだし、武力行使をしようものならもっと大変なことになる。


それに俺も人付き合いが少なかったとは言えもしかしたらがあるかもしれない、俺が行くことも不可能になった……そもそも洋上や外国に飛んでしまえば計画自体が頓挫してしまう。


潔く諦めるか……人間領に似たようなものがあるのを祈りつつ、少ない記憶をドワーフ族に伝えて再現を頑張ってもらうことにする。


「分かった、その線は諦める……もし何か欲しいものがあればまた頼むことにするよ。

 それはそれとして、食糧の保存をするためにシュテフィの能力を使ってほしい。

 今は冷やしたり凍らせたりしているが、時を止めれるなら鮮度が落ちる心配もないからな。」


「分かったわ、食糧庫に案内してくれればすぐに取り掛かれるわよ。

 簡易の術式にして、鍵さえあれば解除出来るようにしておいたのでいいかしら?」


「そんなことが出来るなら願ったり叶ったりだ、是非ドワーフ族にその鍵を渡しておいてくれ。」


そうしてシュテフィを食糧庫に案内し、シュテフィの能力で食糧庫の時間を止めてもらう。


鍵は高品質のシュムックを要求されたが、アラクネ族にお願いして分けてもらい作成してドワーフ族に渡した。


シュテフィは採掘の続きをするらしく、その足でダンジョンへ戻っていった。


前の世界の情報が手に入らないのは残念だが、何でも思った通りに行くわけでもないし仕方ない。


それに今の世界でも充分いい食事が出来ているし、満足していないわけじゃないからな。


既存の物に頼らず新しいものを作り出すのも1つの楽しみだろう、そう思いながらも寿司とうどんはキュウビとの約束なのでカレーと同じ要領でドワーフ族に見せて再現してもらおう。


その後、寿司の再現に俺とドワーフ族で必死になり妻たちに帰りが遅いと怒られてしまった……今後気を付けます。

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