第210話 ザビンが村に到着したのでイザベルと作業をしてもらうよう頼んだ。
今日はデパートの最終日、昨日もトラブルは無かったらしく大盛況だったそうだ。
この3日でものすごい量の荷物は増えたけど、流石に倉庫を建てたほうがいいかもしれない……というかこれ本当に必要なのか?
村にお金を残しておくより行商を通じて各領に還元していると思えばいいんだけど、流石に買うものが多すぎるような気がするぞ。
最終日も3人でウキウキしてデパートに向かったし、今のうちに倉庫を作って片付けておくか。
倉庫から材料を選別して荷車に運んでいると、ケンタウロス族とミノタウロス族が手伝ってくれた。
「いつものように声をかけてくださって大丈夫ですよ?」
「女性がデパートに出かけてるから人手不足だろうと思ってな、完全な私用だったし。」
「これは我々の仕事の一つなのですから気にしないでくださいね。」
村の事ならそうだが、私用だとどうしても頼みづらいんだよな……妻達がたくさん買い物しなければ建てる必要のなかったものだし。
だが遅かれ早かれ作るつもりではあったからちょうどいい、一人で材料を積み込むなら最低限で済ませるつもりだったが、手伝ってくれるなら少し大きめに建ててしまおう。
色々しまいたいものもあったんだよな、それと簡単な書斎も作ってしまうか……今は目の前の事をやっつけているが、やることはどんどん溜まっている。
教育施設のノウハウが届くまでの準備や冒険者ギルドの報告のまとめ、それに村の収支なんかも今後の為につけたほうがいいだろう。
現状一番手が空いてるのは俺だろうし、貨幣を入れる箱の在庫を一番抱えてるのも俺だから適任のはずだ。
作りたいものを伝えて使う資材の積み込みと運搬をしてもらい、家の隣に想像錬金術で倉庫を錬成。
その後家の壁を一部改修して倉庫までの通路を作り、家の中から行き来出来るようにした。
通路も少し広めに作ったから大きな荷物も運びやすいはず。
俺はミノタウロス族とケンタウロス族にお礼を言って書斎の準備をする、とりあえず筆記用具とランプ、それに金庫と貨幣を入れる箱だな。
これだけあれば仕事が出来るだろう、後は書類をどうやってまとめるか考えなければ。
この世界にクリアファイルなんてないし、クリップもないのでひとまとめにすることが出来ない。
石油を借りてクリアファイルを作ってもいいけど、主に羊皮紙だからすぐにいっぱいになってしまうだろう。
それにA4サイズより大きいし、前の世界とは規格の違う大きさだからきちんと作れるか分からない、多分大丈夫だろうけど。
そこでふとこの前アルミニウムを作れるようにしたのを思い出した、それを素材にクリップが作れるかもしれない。
挟んだところが痕になるかもしれないが、それくらいは大丈夫だろう。
そう思いドワーフ族のところへボーキサイトを分けて貰いに行くと、加工がされてないままのボーキサイトが大量に保管されていた。
使わないのか聞いてみると「これの加工の仕方が分からん。」と匙を投げている様子……そういえばアルミニウムって化学薬品を使ってボーキサイトから精製するんだっけ。
いくらドワーフ族でもそれは現状無理だな、ボーキサイトは俺だけが使う素材になりそうだ。
俺はボーキサイトを想像錬金術用資材の倉庫に運ぶようお願いした、一区画分満タンになれば採掘はしなくていいというのも同時に伝える。
そんなにアルミニウムだけあっても使い道が無いからな、商用として使うなら別だけど……今のところそのつもりは無いし。
俺はボーキサイトからクリップを直接錬成出来るか試す……うん、出来そうだな。
俺は100個ほどクリップを錬成して書斎に持っていった、これである程度書類が増えても安心。
書斎出来たので子ども達と散歩がてら見回りをしているとハーピー族が俺を見つけて近づいてくる、何かあったのだろうか。
「定期便で村を訪れたザビンさんという魔族の方が村長を探してますが、知り合いですか?」
「知り合いというわけではないが、俺が短期雇用した人だ。
すぐに向かうと伝えてくれ。」
「分かりました。」
ハーピー族は定期便と停留所に向かって飛んでいく、子ども達をどうするか考えたが……イザベルのところへ連れて行くだけだし一緒でも問題無いか。
停留所に行くとザビンが結構な大荷物を抱えて村にやってきていた、服のデザインってそんなに仕事道具が多いんだろうか。
頭と紙とペンがあれば出来そうなイメージなんだけど。
「すみません大荷物になってしまって、どれくらい滞在するか分からず家にある服を全て持ってきてしまって。」
ほぼ全部服だった、だがそれは仕方ない。
「一応主にデザインをしてもらう人の所へ案内するよ、魔族の人なんだけど訳があって公に出来なくて……それが商人ギルドで話さなかった理由なんだが。」
「そんな方がいらっしゃるんですね。
私も雇われた身ですし、雇用主のいう事はきっちり守らせていただきますよ!」
ザビンは良い顔をして返事をする、受付の人の言う通り誠実そうな人で助かるよ。
俺はそのままミハエルの家までザビンを案内、道中子ども達を非常に可愛がってくれたので3人ともニコニコだ。
未婚だが子どもには憧れているらしい、自分の子どもはいいものだから早く相手を見つけるといいぞ。
「イザベル、居るかー?」
家のドアをノックすると「はいはーい。」と返事があった、ミハエルも家で仕事をされると邪魔かもしれないし仕事場を作ってもいいかもしれないな。
「え、イザベルってあの伝説の服飾造形師のイザベルさんですか!?
依頼したい人がごまんといる状態で突如引退宣言をしてから音沙汰が無かったのに……まさか未開の地の村にいらっしゃるなんて!」
伝説にまでなっているのか、そんなにすごいデザインなのだろうか……さすがに奇抜過ぎるのは勘弁してほしい。
ザビンが驚いていると家のドアが開いてイザベルが顔を出す。
「村長いらっしゃい、そちらの魔族は?」
「先日頼んだ服飾造形の助っ人だ、商人ギルドを通じて短期で雇用させてもらったよ。
流石にミハエルの家で2人が仕事をするのも申し訳ないだろうし、後で作業場を作っておくよ。
とりあえず食堂か広場で休憩をしながら仕事内容の説明に移ってくれ。」
「どっちも助かるわ、ありがとう。
一応ある程度案は練ったけど現役の人に見てもらえるのは助かるわ。
しばらくはどっちかに居ると思うから、作業場が出来たら呼びに来てほしいのだけど。」
「分かった、そうするよ。」
俺はザビンに頑張ってくれよと声をかけて作業場の土地の選別に向かう、ザビンはイザベルを見たまま固まってるけど大丈夫だろうか。
村のお金を使って雇わせてもらってるし、頑張ってもらわなければ困るんだけど。
その後土地の選別が終わりイザベルの作業場を錬成、服飾造形と黒魔術の研究の両方を行えるようにした。
これでミハエルの家も広くなるだろうと思いながらイザベルを呼びに行くと、ザビンが食い入るようにイザベルの案が描かれている紙を見ている。
「イザベル、作業場が出来たけど……調子はどうだ?」
「この子使えるのかしら、肯定しかしてくれなくて困ってるんだけど。」
酷いことを言うなよ、商人ギルドからもオススメされた人なんだから。
「何を言うんですか、細部までこだわられた造形に装着者の事も考えた設計……引退されてからでもやはりイザベルさんが最高の服飾造形師ですよ。
助手として一緒に働けることを光栄に思います!」
「適当に考えただけなんだけど……それより造形は今の時代に即している物なのかしら。
それを教えてくれないと先に進めないのだけど、もし即してないなら現代はどういったものになってるのか教えてね。
まぁ話の続きは作業場で聞くわ、せっかく村長が作ってくれたのだし。」
そう言いながらザビンの腕を引っ張って作業場まで移動するイザベル、あまり粗暴に人を使うんじゃないぞ?
さて、それじゃ俺は教育施設の準備でも進めておくか……とりあえず俺の学歴で使用した施設の内容を説明できるようメモ書きを作るところからだな。
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