第212話 オスカーがダンジョン調査から帰って来た。

デパートの喧騒が収まってから2日が経った、皆も本格的に仕事を再開したのでいつもの日常が戻ってきたと実感。


俺はいつも通り見回り、そういえばオスカーがキュウビの所へ向かってから帰って来たという報告を聞いてないな。


オスカー個人に用事は無いんだが、デパートの抽選会対策で意見を出してほしいから交えて話をしたいんだがなぁ……なんて考えていると「オスカー様がご帰還です!」と警備の人の声が聞こえてくる。


タイミングがいいなと思い、俺はオスカーが着陸しそうなところへ走っていく。


「ダンジョンの様子見お疲れ、休んだら皆を交えて話し合いをしたいんだが……今日は1日休んだほうがいいか?」


「ワシにかかればあの程度造作もない。

 最奥までの道のりやかかる時間、それに魔物の種類なんかもキュウビにメモ書きをしてもらったのを預かったからいつでも攻略は可能だ。

 一応ダンジョンコアを守る魔物は討伐したぞ、あれは持って帰れぬらしいからな……日を改めて部隊を組んで向かうとしよう。

 それと、話し合いは今日で大丈夫だ――風呂と食事は済まさせてほしいがな。」


「今遠征から帰って来たんだからもちろん待つさ、疲れてるところ話し合いに参加してもらうんだから問題無いぞ。」


「済まないな、では早速風呂に入ってくるとしよう。」


オスカーは俺にメモを渡すと足早に家へ向かって歩いていった、そこまで慌てなくてもいいんだけど。


それよりダンジョンを2人で最奥まで攻略したうえ、マッピングや魔物の種類まで調査したって……結構浅いダンジョンなのか、あの2人が規格外なのか。


恐らく後者だろうな、以前メアリーがオスカーとシモーネの次くらいに強いと言っていたし。


しかし現状知る限りで最強の種族のドラゴン族に妖狐族が勝てるのだろうか、あの言い方ではクルトやウーテを始めとした他のドラゴン族に勝てるとも聞こえる。


……それだけキュウビが強いという事なのかもしれない。


それでもシュテフィと違って自分より弱い俺と契約魔術を結んでくれているから、強さにそれほど固執する性格でもないんだろうな。


そんな事を考えていると、シュテフィにクリーンエネルギー機構の研究に興味が無いかも聞かないとダメだったのを思い出す。


オスカーは風呂と食事、それにお酒も少し飲むだろうからしばらく時間がかかるだろう。


今のうちに聞いておくとするか。




「シュテフィ、ちょっといいか?」


俺はその足でダンジョンに向かい、採掘作業とノームに指示を出してるシュテフィに声をかける。


「ちょっと待ってて、もう少しで手が空くから。」


「分かった、そこの鉱石置き場で待っているよ。」


俺は採掘した鉱石を置いてる場所に行ってどんなものがどれくらいの量あるのか確認、ダンジョンを稼働させてしばらく経つがまじまじと採掘した物を見たことがないんだよな。


鉱石置き場では鉄にオレイカルコスにシュムック、それにボーキサイトやその他色々なものがきっちり種類別に分けられて、それを各種族が使う分だけを持っていっている。


ボーキサイトだけは溜まっていく一方だ、今のうちにアルミニウムに錬成しておくか。


錬成して邪魔にならないところへアルミニウムの塊を移動させておく、後で倉庫に入れてもらうようお願いしなければ。


「村長お待たせ、何か用事かしら?」


「クズノハが魔王と夫婦になるから村を出るだろ?

 そこで流澪が筆頭で進めているクリーンエネルギー機構の研究に参加してくれないかと思って声をかけたんだ。

 クズノハが主に携わっているのは魔術を使う要素と書類関連なんだが……。」


「ふぅん、確かに魔力量で言うなら自画自賛するわけじゃないけどこの村じゃ私が一番ね。

 でも扱える魔術は割と少ないのよ、戦闘に特化した物がほとんどだし。

 それと書類関連は役に立たないと思うわ、過去でもそういった面倒ごとは使用人にさせていたから……。」


シュテフィってそんなに魔力量があるのか、あまり魔術を使わないからそんなイメージは無かったよ。


日常的に魔術を使うプラインエルフ族やラミア族よりも多いと言い切るあたり、その魔力量は相当なんだろうな、羨ましい。


「分かった、流澪に聞いてみるよ。

 魔術要素に関しては参加してもいいという事でいいか?」


「それなら指示をくれれば協力できると思うわ、ノームに関しては多めに魔力を支払っておけば働いてくれるだろうし。」


「じゃあそういうことで、また決まったら話をしに来るよ。

 それと良かったらこの後話し合いをするから参加出来そうならしてくれると助かる、色んな意見が欲しいし。」


「分かったわ、また後で。」


シュテフィとの会話を終えてダンジョンを出る。


普段魔術を使わないと思ったらそんなところで魔力を使用してたんだな、支払うということは主従関係ではなく契約のようなものなのだろうか。


言霊にノーム……この世界には珍しいが精霊はいるみたいなので、いつか俺も出会ってみたい。




その後各種族に声をかけて夕食前に話し合いをすると伝えて回る、伝えるとその種族が別の種族へ伝えるのを手伝ってくれたので割とすぐに声掛けは終わった。


風呂を覗いたがオスカーはいなかったので食堂を見に行くとシモーネと2人で遅めの昼食を取っていた。


「オスカー、シモーネ。

 夕食前に話し合いをすることになった、2人には是非参加してほしいから頼んだぞ。」


「うむ、任せておけ。」


「分かったわ。」


とりあえずこれで全員に声をかけれたはずだ、今のうちに書斎で聞きたいことや話すことを纏めておこう。


せっかく作ったしどんどん使わないとな……何となく自分の家に書斎って昔から憧れていたし。


纏める内容を考えてながら書斎に入ると、子ども達がキャーキャー言いながら遊んでいた。


「ここってそういうお部屋じゃなかったんですか?」


メアリーがキョトンとした顔で聞いてきた。


俺の仕事場だからと説明すると「すみません!」と謝って子ども達を引き連れて退散する。


空いてる時は自由に使ってくれて構わないけどな、棚や書類が多くなるだろうからそれにさえ気を付けてくれれば。


話し合い前に伝えておこうと思いながら、俺は机に向かって紙とペンを走らせ始めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る