第125話 ラウラの子どもが無事誕生した。
ラウラが破水して1時間が経った、今は助産師とメアリーがラウラのお産に立ち会っている。
「村長、まだ産まれないのかな……ラウラ大丈夫かな。」
「まだそんなに時間は経ってない、メアリーの時はもっと時間がかかっていたしな。
それにウェアウルフ族から聞いたが半日とかかかることもあるらしいぞ?」
俺がクルトにそう言うと「そうなんだ……。」と不安げにうつむいた。
その気持ち分かるぞ、俺だってメアリーのお産の時はものすごい不安だったからな。
「そうだクルト、赤ちゃんに巻いてやるタオルをケンタウロス族からもらってきておいたほうがいい。
俺はお風呂の前に居るから、産湯が必要だろうし。」
「分かった、もらってくるね。」
こういう時は少しでも体を動かして気を紛らわせたほうがいい、俺もずっとお風呂の前で待ってたけど時間が経つのがものすごい遅く感じたからな。
しばらくするとオスカーとシモーネがクルトの家へ走っていくのが見えた、ラウラがお産しているのをクルトから聞いたのだろう。
あ、オスカーがシモーネに突き飛ばされた……その後俺に気づいてトボトボとこちらに歩いてきた。
「興奮しすぎた……。」
「そうだろうな、クルトでも入れてもらえないんだからオスカーは無理だろ。」
「ふふ、しかしワシもおじいちゃんになるのか。」
オスカーの顔がかなりニヤけている、孫が出来るのがそれだけ嬉しいのだろう。
「しかしラウラはハーフドラゴンになったよな、この場合ドラゴン族が産まれるのか、ハーフドラゴンが産まれるのか、それともプラインエルフ族が産まれるのか……。」
ふとした疑問をオスカーに聞いてみた、異種族での交配は基本母親の種族に寄って産まれるらしいからな。
その証拠にカールもプラインエルフ族として産まれている、ちっちゃい耳がとんがってて可愛い。
「異種交配なら通常通りだが、その母であるラウラどのが特殊過ぎる……ドラゴン族では無いと思うが果たしてどうなるか……。」
やっぱりハーフドラゴンはかなり特殊な例なんだな、俺もウーテとすることはしているがハーフドラゴンになる様子は無いし……どうやったらそうなるのだろうか。
今度クルトかラウラに聞いてみようか、そう思っているとクルトがこちらに戻ってきた。
「ラウラのお産、まだ終わらないの?」
「クルトがタオルをもらってきて30分も経ってない、長いならもう少しかかるだろう。」
「お前も父親になるのだ、不安な気持ちも分かるがどっしりと構えてラウラどのと子どもを支えてやらねばならぬ。
将来を考えて気持ちを切り替えるとよい。」
オスカーが父親としてクルトに助言をする、オスカーもクルトが産まれるときは不安がったりしたのだろうか?
「そうだね、僕頑張るよ!」
クルトはオスカーの助言を聞いて不安な表情が少し消えた、父親としての自覚が気持ちの前に出てきたのだろう。
「しかし先ほども村長と話したが、ラウラどのはかなり特殊だからな……種族の見極めをどうやるか問題だぞ。
もしドラゴン族なら一度能力の覚醒があるからそれを抑える役目が必要だ……わかっておれば問題無いがプラインエルフ族だとしたら必要ない。
ましてやハーフドラゴンだとますますわからん。」
「あ、子どもはプラインエルフ族だと思うよ。」
オスカーの悩みにクルトが答える。
「ん、どうしてそう断言出来るんだ?」
「ラウラがハーフドラゴンになったのは妊娠してからだと思うから。
流石に子どもまで種族は変わらないんじゃないかな……って考えてる。」
そうだったのか、てっきり最初の悪阻のようなものがハーフドラゴンになる時の体の変化に対する反応かと思ってたよ。
確かラウラもそう説明してたし、しかし妊娠してからだったんだな。
色々あって記憶がごちゃ混ぜになってたんだろう、だがプラインエルフ族が産まれてくるなら能力の覚醒とやらもなさそうだし一安心だな。
それを聞いたオスカーも安心したようだ、子どもとはいえドラゴン族の能力の覚醒を抑える役目が必要だということは、それなりに周りに被害が出るということだろうし。
3人でそんな会話をしていると、クルトの家の方向からメアリーの声が聞こえた。
「開様ー、クルトさーん、オスカー様ー!
ラウラのお産が終わりましたー!」
よかった、無事産まれたみたいだな!
クルトはタオルを持って猛ダッシュで家に向かう、俺とオスカーは産湯をお風呂で汲んでから急ぎ足で向かった。
「はい、産湯はお預かりします。
まだ片付け途中なので、クルトさん以外の男性はもう少し待ってくださいね。」
助産師に産湯を預けてクルトの家の前で待つことに、そう言えばメアリーのお産が終わった直後も男は俺だけだったな。
赤ちゃんの泣き声も聞こえるし、助産師も剣吞とした雰囲気ではなかったので母子ともに健康なんだろう。
「早く孫の顔が見たいぞ……。」
「もう少ししたら見えるんだ、片付けが終わるまでの我慢だ。」
孫が見たくてウズウズしているオスカーを宥めること数十分、ようやく他の男性の入室が許可される。
その瞬間オスカーがものすごい勢いで家の中に入っていった、よっぽど孫の顔が見たかったんだな。
俺もその後をついて中に入りラウラの顔を見る、疲れている様子だが安堵と他の皆の祝福を受けて笑顔で居たのが見えた。
「ラウラ、お疲れ様。」
「開様……ありがとうございますです。
女の子ですよ、後で抱いてあげてくださいです。」
女の子なのか、クルトもラウラも顔がいいから可愛い子になるだろう。
クルト・オスカー・シモーネ3人がうれし泣きをしながら抱いた後、俺にも抱かせてくれた。
産まれたての赤ちゃんってどうしてこう可愛いんだろうな、カールの時もそうだったがものすごく可愛い。
この場に居る全員が笑顔になるくらいだ、この子はきっと可愛くなるだろうな。
その後メアリーに交代、めちゃくちゃスリスリしながらデレッとした表情で抱いている。
「そうだ、この子の名前はもう決まってるのか?」
「決まってるですよ、2人で話し合って男女の名前を考えていたのです。
女の子なので、この子の名前はウルスラです。」
村に可愛らしい新たな住民が誕生した。
よろしくな、ウルスラ。
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