第124話 他人の恋愛事情に首を突っ込むのは初めてなんだが……。
「クズノハに心を奪われているって……恋愛感情があるという事か?」
魔王がクズノハをどう思っているか確認しておく、恋愛感情だとは思うがもしかしたら憧れと言う意味で好きなのかもしれないし。
「そうじゃ、今日も参加するものとばかり思っておったのじゃが……残念じゃの。
また追ってこちらの予定を連絡するのじゃ、その時にクズノハ殿を連れてきてほしいのじゃよ。」
やっぱり恋愛感情なんだな、応援してやりたいし出来ることはするさ。
「それはいいが……魔王の気持ちは伝えないでおくぞ?
そういうのは自分から伝えるものだ。」
だがクズノハには本当の理由は黙っておく、このことに関しては第三者の俺の口から伝えるのは違う気がするからな。
「分かっておるのじゃ、ではよろしく頼むぞ。」
俺は頷いて自分の席へ戻る、まさかこんなことを頼まれるのは完全に想定外だったな。
てっきり魔族領のことだけだと思っていた、完全に個人の事じゃないか。
カタリナから「魔王様との話は終わったの?」と聞かれたので「終わったぞ、今のところはな。」とだけ返しておいた。
実際ここで出来ることはないからな、いくら話しても答えが出るものでもないし。
「村長お待たせした、冒険者ギルドとの話も今しがた終わったところです。」
ローガーたちもマルチンとの話を終えて戻ってきた、他に何も無いなら解散かな?
「ではこれで今回の会議を終わろうと思うが、他に何か話すことがある者はおるかの?」
そうだ、定期便を増やすのは魔族領にとって問題が無いのか聞いておかないと……せっかく魔族領の領民から得れた貴重な意見だし。
「魔王、領民から定期便が少なくて村に行く機会があまり取れないという意見を今日もらったんだ。
魔族領は村への定期便を増やす事に問題無いだろうか?」
「それは問題無いぞ、むしろ大歓迎じゃ。
ただ増やす時には事前に一報をくれるとありがたいの。」
「それはもちろんだ、大丈夫だという意見が聞けただけでいい。
村に帰って改めて話し合って、どうするか考えさせてもらうよ。」
そう言って今日の魔族領での会議は終了、俺たちも解散となった。
今日の会議で出た意見を村で改めて話し合い、どうするか意見をまとめて魔族領に報告しないとな。
村に帰ってその日は休んで次の日に話し合うことになった、俺も疲れていたから非常に助かる。
だが俺はクズノハに魔王と食事ないし出かけるとなると、それに応じてくれるか聞かなければならない。
食事を終えてクズノハの家に行くと、特に返事も無いので覗いてみると何かに魔力を込めるような仕草をしたままうたた寝している。
疲れているだろうから起こすと悪いだろうなと、静かに家を出ようとすると「ん……誰ぞ来ておるのか?」とクズノハの声が後ろから聞こえてきた。
「すまない、起こしてしまったようだな。」
「構わぬよ、それより今日のイベントはどうじゃったかの?」
俺は今日のイベントで何があったかを話すと、クズノハは興味深そうに頷きながら俺の話を聞いていた。
さて、魔王のことを話さないとな。
「ちょっと聞きたいんだが、もし魔王から食事や出かけることに誘われたらそれに応じる気はあるか?」
「む、それは我と魔王が一緒にということか?」
クズノハに質問を返されて「そうだ。」としか答えれなかった、この時点で魔王がクズノハに気があると言っているようなものかもしれないが……他に答えようがなかった。
「むぅ……我の何に興味があるか分からぬが別に構わぬよ。
妖狐一族について何か聞きたいことでもあるのかの、それならキュウビが一度村に帰って来た時のほうが良いかもしれぬな。」
クズノハがものすごい鈍感で助かった、でもキュウビも一緒に行くのは魔王が可哀想だからやめてやってくれ。
「いや、キュウビの名前は出てなかったからクズノハだけで大丈夫だと思うぞ。
後日魔王の予定が村に伝えられるから、あまり急いだ予定を入れないようにしてやってくれ。」
「そうなのか、まぁ我は大丈夫じゃよ。
魔族領について知りたいこともあったしの、ではしばらくはダンジョンコアの生成に尽力するとしよう……今もしておったのじゃがついうたた寝をしてしまったのじゃよ。」
「お、そうだったのか。
あとどれくらいで出来そうなんだ?」
「何も無ければ花の季節になって少し経った頃には出来上がるじゃろう、これは当初の約束通り村長に譲るから安心するのじゃ。」
ダンジョンコアがもう一つあれば何かあった時の備えになる、当初は狩場や鉱山の役割を分けようと思ったが、どうもお互いに助け合って上手く成り立っているみたいなので緊急時……というか俺に何かあった時に村が飢えないよう作物を中心にアイテム生成をしてもらうつもりだ。
「分かった、多少遅くなってもいいからダンジョンコアが出来たら俺に渡してくれ。
魔王の件は何か連絡があればまた伝えに来るから。」
「分かったのじゃ、我も楽しみにしておるよ。」
この楽しみにしてるは魔族領の事を知れるという意味での楽しみなんだろうな……そう思いながらクズノハの家を後にした。
魔王とクズノハの件誰かに話すにも話しづらい……しかしミハエルには話したほうがいいのだろうか?
こういった他人の恋愛事情に首を突っ込むのは初めてなのでどうすればいいか悩む、他言無用で妻たちには相談してもいいのかもしれないが……女性はこういった話題が大好きだろうから話が広がるのが怖いな。
妻たちを信用してないわけじゃないんだけど。
「開様、先ほどから何か悩まれているようですがどうされたのですか?」
家に帰っても魔王とクズノハの件を考えていたからか、メアリーに悩んでることを感づかれて突っ込まれる。
話すべきかと少し思考を巡らせたが、悩みを共有したいという気持ちに負けてメアリーに話した、もちろん他言無用だということを伝えて。
「そういう事だったんですね、魔王様という立場の都合上難しい問題ですが……それを除けば2人の問題なので魔王様からのお誘いをお伝えして見守ればいいと思いますよ。
魔王様も施政者です、個人的な理由で村との関係を悪化させるようなことはしないでしょうし。」
そうだといいんだがな、前の世界の過去の歴史を遡るとそういった事情で国を亡ぼすような事例もあったし何が起こるか分からないのが怖いんだよ。
この世界ではそういうことはないのかもしれないが、知識としてある以上悩みもするし恐怖もする。
だが、メアリーの言う通りなるようにしかならないだろうというのも分かる、そもそもクズノハは魔王に対しての恋愛感情に気づいてないし、自身もそういった気持ちは無いだろう。
「ミハエルには伝えるべきだろうか、一応魔王の姉でもあるし……。」
「やめておいたほうがいいんじゃないでしょうか、恋愛感情を身内に知られるのって面倒じゃありません?」
……それもそうだ、一番からかってくるのは身内だろうからな。
というかそのあたりのメアリーの考え方が前の世界と似てて少しびっくりする、この世界でもそういう事はあるのだろうか?
「そうしておくよ、話して考えがまとまったしスッキリした。
俺は第三者として2人の行く末を見守ることにするよ。」
「えぇ、それが一番かと思います。」
魔王の予定が決まればクズノハに伝えて後はなるようになれだ、当のクズノハは魔王と出かけることに抵抗は無いのが確認出来ただけで俺の仕事はほぼ終わりだろう。
そう考えると安堵して、悩むことも無くなった。
悩む仕草も無くなり、カールがハイハイしてきたのであやしながらおもちゃで遊んでいると玄関が勢いよく開く音が。
ウーテやカタリナならいいんだが、それ以外の人に猫なで声で子供をあやす姿を見られるのは少し恥ずかしいので姿勢を正す。
「村長……ラウラが!」
クルトの声が玄関から響く、なにかあったのだろうか。
「ラウラから物凄い水がどばって……どうしよう!?」
ラウラが破水したか!
「すぐ行きます、クルトさんは奥様方のところへ行って助産師を連れてきてください。
私は最初の処置を取りに向かいます、開様は産湯の準備を!」
メアリーの指示に従って俺とクルトは動き出した、自分の出産を覚えているメアリーすごいな……と思いながら。
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