第123話 村の種族代表と魔族領の会議に参加してきた。

神の神殿建設イベントと食事会が終了し、魔王に呼ばれて俺と種族の代表者が魔族領の会議に参加することに。


商人ギルドはともかく冒険者ギルドや宗教教団までも参加するということで、一体何を話すのだろうかと思いながら衛兵に会議室へ案内される。


今回はメアリーが居ないから少し不安だが、カタリナや他の種族の代表者も居る……もし俺だけの考えで判断が出来ないようなら頼らせてもらおう。


全体の種族の能力や出来ることを完全に把握できているわけではないからな、冒険者ギルドの要望は特に色々聞くことになるかもしれない。


「会議室に付きました、魔王様の近くの席にお座りください。」


衛兵に案内されたが、前の会議ではあそこは大臣などの偉い人が座っていたところだ……魔族領に所属しているわけではない俺たちが座っていいのかと考えたが、魔王に手招きされたので案内されるがまま座ることに。


「では神の神殿建設イベントも終了し、未開の地の村の村長及び各種族代表者を交えて魔族領の会議を開催するのじゃ。

 まずは商人ギルド、ギュンターからじゃの。」


「はっ、未開の地の村とは今までも懇意に取引をさせていただいておりますが……魔族領の貨幣が徐々に村に集まりつつある状況です。

 今はまだ大丈夫ですが、長い目で見ると経済混乱が起きる可能性があるというのが商人ギルドの見解です、何か魔族領にあるもので買われたい商品があれば用意して買い取っていただきたいのですが……何かあるでしょうか?」


何か売れる商品は無いかという相談だとは思っていたが、魔族領も貨幣の偏りによる経済混乱を懸念していたか。


それはそうだよな、貨幣を扱う以上その動きは商人にとって最重要だ。


それに村に貨幣を偏らせても村にメリットは何一つない、経済的な意味で魔族領を掌握することは可能かもしれないが……そんなことをするつもりは俺には無いからな。


ここは意見を述べて他の種族、特にドワーフ族・プラインエルフ族・アラクネ族に意見を乞うべきだろう。


「村長の立場からの意見では、村に役立つ物や村にない技術を持った技術者の雇用、それに村と魔族領で行う公共事業への出資なんかが主だった貨幣の使い道になると思う。

 他の種族が稼いだお金の一部は村に収めてもらっているから、そういったことでの利用は有用なものであればどんどん使っていきたい、他の種族はどうだ?」


「ドワーフ族からは食材や調味料、後は料理の技術じゃの。

 先ほどの食事会でも色々食べさせてもらったが、ワシらが知らない調味料や技術がふんだんに使われておった、料理人は流石に教えてくれんかったが。

 そういった調味料や料理器具、技術にはドワーフ族が稼いだお金を惜しみなく使っても問題ないぞい。」


「プラインエルフ族からは生活に役立つものや、己の魅力を引き出すものでしょうか。

 大半は生活魔術で事足りますが、それだけでは難しい場面も無くはないので……それにアラクネ族が装飾品を作ってくれていますが、服なんかはケンタウロス族が作ったものとは違う良さが今回のイベントで見受けられました。

 そう言ったものは若い世代は喜ぶと思いますので、そちらを前面に出せば経済は回るのではないかと。」


「アラクネ族からは魔族の方々がものすごい髪の毛がサラサラだから、どうやって手入れしているのか知りたいのはありますね。

 もしお風呂の時に独自に使っているものがあれば使ってみたいわ、それは村の女性なら誰でも欲しがると思うので。」


主に稼いでいる3種族からの意見をギュンターに伝える、他の種族からは今は思いつかないが思いつき次第行商に伝えるという形に。


ギュンターは必死にメモを取っている、今後村に来る行商に伝えて意見に当てはまるものを売りに出すのだろう。


そのあたりは村にも還元されるし大歓迎だ、俺としても技術者が来るのは非常にありがたいからな。


「では商人ギルドはこのようなところかの、私も村への貨幣の偏りは懸念しておったのでありがたいのじゃ。

 では次に冒険者ギルドからマルチンじゃの、発言を頼むのじゃ。」


「はっ、冒険者ギルドからはここ最近魔族領の辺境に出る魔物が強くなっていると報告が挙がっています。

 お恥ずかしい限りですが魔族領の冒険者では苦戦しているようで、未開の地の村から戦力の要請を円滑にする方法があればと思いまして。」


「それなら魔族領の首都に駐屯地を作れば解決すると思うぞ、戦力もドラゴン族・ウェアウルフ族・ミノタウロス族と戦闘を得意とする種族を常駐しておけば緊急時にも対応できると思うが、オスカー殿はどうだ?」


ローガーが解決策を提示したが、村の戦力は大丈夫なのだろうか?


「問題なかろう、ドラゴン族も村での空の哨戒だけでは少し持て余していた節もある。

 1日交替でローテーションを組めばきちんと機能するはずだ。」


「ミノタウロス族も大丈夫です、戦闘時だけでなく力が必要な際は呼んでいただければ対応しますよ。」


村への影響は特に無いらしい、それなら俺も賛成だ。


しかし魔族領に出現する魔物が強くなったといい、キュウビの報告に会ったギガースの頻出といい……何か良くないことが起こっていなければいいんだけどな。


かなり離れているし、偶然だろうとは思うけど。


マルチンもローガーからの意見を聞いて、ギュンターと土地の話も兼ねて5人話をしだした。


「うむ、マルチンの話はまとまるまで少し長そうじゃの。

 では宗教教団の枢機卿、ユルゲンの意見を今のうちに聞いておくのじゃ。」


「はい、宗教教団としては非常に良い立地へ神を崇拝するための神殿を建設していただいてありがたい限りです。

 ですがいい立地故に、そこから離れた土地に住む領民や農民が訪れづらいという問題もあるのです……何か良い案はありますでしょうか。」


確かに土地の価格の関係でアクセスの悪い場所に住んでる人や農村に住んでる人はあの神殿に訪れづらいだろう、首都は広いからその端あたりに住んでる人はほぼ首都の半分を移動しなければならない。


農村に住む人たちはそもそも首都に訪れる機会が非常に少ないだろうし、確かに解決してやれるなら解決してやりたいな。


「それならケンタウロス族が定刻通りに魔族領の首都内で馬車を引っ張って周回し、決まった場所で利用客を乗降させるサービスはどうだ?

 有事の際に人員が出払ってる場合は難しいかもしれないが……ハインツはどう思う?」


「ケンタウロス族も多少人員に余裕があるので大丈夫です、1日に首都を数周するくらいの頻度であれば問題ないでしょう。」


「おぉ、それは非常にありがたい意見です!

 ですが農村は厳しいでしょうな、彼らにも仕事があります故首都まで離れるとなると……。」


確かに、農村の人たちは首都に訪れなくていいように商人ギルドが色々な手続きを請け負っているくらいだ……首都に行くことはあちらも相当な用事でない限り望んでいないだろう。


「それなら簡易の神殿を農村に作ればいいんじゃないかしら?

 神は信仰する場所を問わず心が大事、とプラインエルフ族では習っているから……日々の感謝をその簡易神殿で伝えれば神は差別しないと思うわよ。」


カタリナが意見を出してくれた、分社の要領だな。


確かにそれなら首都と同じ神を信仰出来る、二柱分の簡易神殿を作れば宗教教団としても満足するんじゃないか?


俺も前の世界では初詣で神社には行ってたが、本宗には行ってなかったもんな……あまり気にしたことなかったから分社の発想が出なかった。


やはり信仰のアイデアはプラインエルフ族の得意分野なのだろう、さすがだな。


「おぉ、それはいいです!

 早速宗教教団から依頼を出し、農村へ簡易神殿の建設を依頼しましょう!」


枢機卿のユルゲンは興奮気味に会議室の外へ出ようとしたが、魔王と衛兵によって止められた……まだ会議中だものな。


「これで3人の案はほぼ解決かの、流石は未開の地の村の力じゃ。

 村の住民の手を借りた場合、もちろん賃金は発生させるので安心してほしいのじゃよ、貨幣の偏りに関しては魔族領の努力によっていい物を村に売ることで解決するじゃろう。」


それは商人ギルドと魔族領の職人や農民の頑張りに期待しよう、もし経済混乱が起きそうなら一時的に魔族領へ貨幣を返還して食料の件のようにツケにすれば解決するはずだし。


「じゃあ俺たちはこれで解散していいか?

 オスカー・ローガー・ヤンは話が終われば村に帰るように伝えてくれればいいから。」


「あ、ちょっと待ってほしいのじゃ。

 私からの個人的なお願いがあるのじゃが……ちょっと村長だけこちらに来てくれんか?」


魔王の個人的な願い……こんな会議の場じゃなくてもいいと思うんだが、よっぽどなのだろう。


魔王に手招きされるがままに近くに寄る、一体どんな事を頼まれるのだろうか。


「今日はクズノハ殿が居らぬみたいじゃったが、どうしたのじゃ?」


ものすごい小声で俺に話しかけてくる魔王。


「クズノハなら妖狐一族は魔族領ではいいイメージが無いだろうからと参加を自粛したんだ、どうかしたのか?」


「クズノハ殿との仲を取り持ってほしいのじゃ……正直に申すと心を奪われておる。」


魔王からとんでもないカミングアウトが飛び出してきた。

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