第122話 神の神殿建設イベントが無事終わった。

「では、神に選ばれた未開の地の村の村長に登場してもらおう!

 多種多様な種族を束ねておる村長じゃ、今回は村の住民にも登場してもらうぞ!」


魔王の言葉の後すぐに、村の住民を乗せたドラゴン族が一斉に空へ飛翔していく。


「ドラゴン族!?」


「うわぁぁぁ!」


「すげぇーかっけぇー!」


観客の様々な声が何となく聞こえる、なぜ何となくなのか。


オスカーがものすごい高さまで飛んでいるからだ、他のドラゴン族よりだいぶ高い位置にいる……さすがに怖いぞ!?


そして一気に急降下し観客の頭の水平飛行、怖がってる人と感激している人半々くらいか……いや、何が起きてるか分かってない人もいるな。


シモーネとウーテもサービスのためか観客の周りや頭上を飛び回っている、他のドラゴン族は既に着陸しているみたいだ。


そしてシモーネとウーテも着陸、オスカーも着陸しに行ったかと思ったら直前で180度回転しホバリングを始めた……何をする気だ?


「グォォォォォッッ!!!」


ものすごい咆哮の直後に空中へ炎のブレスを吐き出す、パフォーマンスとしてもやりすぎじゃないか!?


ちょっと不安になり観客を見ると、全員がオスカーの炎にくぎ付けになっていた。


その後オスカーも着陸、小声で「あのパフォーマンスは大丈夫だったのか?」と聞くと「何、あれくらいしてこそのドラゴン族よ。」とドヤ顔をされる。


そんなものなのだろうか。


「派手な登場じゃったな、パフォーマンスで盛り上げてくれてありがとうなのじゃ!

 領民たちよ、これが未開の地の村に住む種族じゃ!

 他にも来れなかった住民もいるみたいじゃがの、ドラゴン族を筆頭に様々な種族が力を合わせて村で暮らしておる――そしてそれを束ねるのが中心に居る神に選ばれた人間の村長じゃ!

 さて、少し自己紹介を頼もうかの。」


何度も台詞は反復した、ものすごい観客で緊張するがやるしかないだろう。


腹をくくり1歩前に出る。


「魔王から紹介してもらった未開の地の村の村長をしている開 拓志だ。

 少し前から魔王だけじゃなく魔族領の様々な人と友好な関係を結ばせてもらっている。

 神に選ばれたのは事実だが、神からもらった想像錬金術イマジンアルケミーというスキル以外俺は普通の人間なのは間違いない、だが神は実在することはこの俺が保証する。

 信仰をすれば神がこの世界に顕現し、恵みをもたらすかもしれない……そして俺も想像錬金術イマジンアルケミーで村だけじゃなく魔族領へも還元することを約束しよう!」


多少のお金はもらうけどな、と心の中でつぶやく。


しかし俺の自己紹介が終わって、沈黙が訪れている……何か変だったか?


「神様万歳!村長万歳!」


沈黙も束の間、直後神と俺への万歳コールが会場全体を響かせている……登場よりすごい歓声だぞ!?


「ありがとう村長、魔族領の長としてこれからも恒久的な友好関係を続けていきたいのじゃ!

 それと皆、村長は優しいがそれに甘えるでないぞ!

 きちんと対価を支払い、恵みを分けてもらうのじゃぞー!」


「「「「「わかりました!」」」」」


魔族領の領民って怠けてる人をあまり見ない、俺の力に甘えるなと言われて即座に全員がわかったと返事できるのはすごいと思う。


お国柄だろうか?


「さて、それでは神殿の竣工祝いと神の存在の証明を祝いながら、未開の地の村との恒久的な友好関係を願ってここで食事会を開くのじゃ!

 今日は領からのご馳走じゃ、皆存分に食べて飲んで楽しむのじゃぞ!

 もちろん未開の地の村の方々も参加してもらってよいからの!」


そんなこと企画書になかったが、魔族領の計らいなんだろうと思いお言葉に甘えることにする。


脇に構えている料理人と即席の料理スペースは何だろうと思っていたが、こういう事だったんだな。


料理が出来るまでは色んな人と話をして過ごすことに、普通の領民から色んな職の人と幅広い人に声をかけられる。


その中でも特に気になった声が、定期便が少なくて村に行く機会が取りづらいというものだった。


村に帰ったら相談して調整してみると返事をしておいたが、ケンタウロス族は色んな所で活躍してるから難しいかもしれないな。


だが人の流入が増えるのはいい刺激にもなるし、村がお金を魔族領に使えば経済も回る。


話を聞いてると行商から色んなものを買っているみたいだし、経済を停滞させるようなことはあまりなさそうで安心してる。


ただ、住民が稼げば稼ぐほど村にお金が貯まるので、それを使わなければ多少停滞させてしまうのは難点だけどな。


村全体で必要なものを定期購入するようにしようか……今のところそういうものは見つかってないけど。


やはり現金で魚の定期購入をするべきか、でもそれだと城にツケているお金を消費出来なくなるかもしれないしな……。


俺は別にいいが、ツケを残していると魔王や大臣にずっと気を遣わせてしまいそうなので避けたい。


お金だけの繋がりではないのは分かっているだろうが、やはりお金という概念がある以上そういう考えは切っても切れないものだ。


便利ではあるが、同時に不便でもある……魔族領と関係を持つまでお金のない生活に満足していただけに余計そう感じるな。


前の世界でもお金はそういう感じだったので、扱いには気を付けないといけない。


そうこうしていると料理が出来たという声がかかり全員が一斉に並び出した、住民もきちんと並んでいたのだが魔族領の領民に「お先にどうぞ!」と列を譲られる。


全員遠慮していたが、領民の押しに負けて最初に料理を取らせてもらう事に……何か申し訳ないな。


気づくとテーブルもいくつか用意されているな、バイキングのようなものか。


列の邪魔にならないようテーブルを確保し料理を食べる……おぉ、村には無い味付けでこれは美味しい。


前の世界でも味わったことのない味だな、ドワーフ族が食いつきそうだ――と思っていたらデニスが料理人の所へ既に移動して話を聞いていた。


レシピは料理人の命だと思うんだが、情報共有してもらえるのだろうか?


俺は緊張が解けて一気にお腹が空いたので、最初の料理はさくっと平らげて次の料理を取りに行く。


「開様、あんまり早く食べると体に障りますよ?」


「メアリーも並んでるってことは、俺と同じスピードで食べてるからお互い様じゃないか?」


「私はカタリナとシェアして食べてますから、2人で食べたほうがいろんな味を楽しめるでしょう?

 カタリナは向こうの列に並んで料理を取ってきてもらってます。」


何で俺も誘ってくれなかったんだ、1人で食べれる量は限られているからいろんな味を楽しめたほうがお得なのは間違いない。


だがよく考えるとここは村ではない、いわば公共の場なので異性でのそういう行為はマナー違反の可能性もある。


周りを見渡すと同性ではシェアしてても、異性でそういうことをしている人は見つけることが出来なかった。


メアリーはそれに気づいて俺を誘わなかったのだろう、損した気分だが仕方ない。


「大丈夫です、味と分かる限りの使われた素材はドワーフ族にお伝えして再現の努力をお願いしておきますから。」


俺がちょっとへこんでいたのに気づいたのか、メアリーが気をつかってくれた。


すまないな、楽しみにしてるよ。




食事会も終わり、神殿内部のお披露目は明日ということで今日は解散ということに。


今日は疲れたし帰ってゆっくり休もうか、と支度をしていると魔王に声をかえられた。


「村長、今日はお疲れだったのじゃ、そして魔族領のイベントを成功させてくれて感謝するのじゃよ。

 もしよければこの後村の住民たちも一緒に城に来てくれんかの、商人ギルドや冒険者ギルド、それに宗教教団を交えた会議を行うのじゃが……是非参加してほしいのじゃ。」


「俺は良いが、さすがにこの人数が世話になるわけにもいかない。

 人数が出っぱなしというのも村の警備の関係上怖いから、せめてもう少し人数を絞らせてくれ。」


「それはもちろんじゃ、では私は城で待っておる。

 衛兵を残しておくので、参加してくれる人たちは衛兵に案内してもらってくれ。」


「あぁ、わかったよ。」


そう言って魔王は城へ帰っていた、さてどうするか。


「ここは各種族の族長が魔族領に残り、他は村へ帰還ということでいいのではないでしょうか?」


メアリーが提案をすると全員それに賛成、もちろんメアリーが言わなかったら俺がそれを言うつもりだったぞ。


「では開様の妻としてはカタリナに残ってもらおうかしら、私は村に帰ることにしますね。」


「あら、会議なんかはメアリーのほうが適任じゃないかしら?」


カタリナがメアリーに意見を返す、カタリナも決して頭の回転が遅いわけではないがメアリーの凄さには敵わないからな。


「ラウラの姉として、経産婦の先輩として出産間近の妹を放っておけないので。

 それにウーテさんも心配ですし、そういうわけで今回はカタリナに頼みたいんですよ。」


「そういう事なら引き受けるわ。」


そういう事なら俺も納得だ、早めに帰れるといいがこの人数となるとかなり長引きそうな感じはあるな。


衛兵に声をかけて城へ案内してもらう、帰る住民も他の衛兵に案内されて魔法陣の方向へ進んでいった。


しかし、商人ギルドはともかく冒険者ギルドと宗教教団まで会議に参加とは……どんな話をされるんだろうな?

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