第121話 神殿建設イベントが始まった。
今日はとうとう神殿建設イベントの当日。
イベントが始まるのは昼からということなので、いつもより少し早い時間に起きて魔族領へ入ることに。
魔法陣をくぐると、村が利用している敷地内に衛兵が3人俺たちを待っていた。
「これは村長、朝早くからお疲れ様です。
これから建設予定地に向かわれますか?」
「あぁ、そのつもりだ。
わざわざ出迎えなんていらなかったのに、すまないな。」
場所は企画書に書いてあったし少し前に下見にも行っているので問題ない、一体どうしたのだろう。
「実はこのイベントがものすごい盛り上がりを見せていまして。
早朝どころか昨日の夕方から少しでもいい場所で見ようと、見物客がかなりの行列を作っているのです。
村長がそのまま正面から行ってはパニックになるので、裏口を案内しようと思いまして。」
それを聞いた俺は固まってしまう、大勢の前なのは覚悟していたが……行列が出来るほどの人数だとは思っていなかった。
せいぜい学校の体育館に収まる程度だろうと考えてたからな……行列が出来ていると間違いなくそれより多いだろう。
衛兵がかなりの行列を作っていると言ってたことからもそれは容易に想像出来た、そんな大勢の前で上手くやれるのか……?
まさかの事態に動揺してしまい少し震えていると、後からついてきた妻たちが「大丈夫ですよ、きっとうまくいきますから。」と抱きしめてくれた。
「……ありがとう、少し落ち着いたよ。
すまない、カッコ悪いところを見せてしまったな……裏口へ案内してくれ。」
「ふふ、魔族領を短期間で何度も救ったお方にも普通の一面があって安心いたしました。
案内します、私たちに付いてきてください。」
衛兵たちは俺たちを先導し、建設予定地の裏口へ案内してくれた。
「この後村の住民たちが入ってくると思う、その時はまた案内してやってくれ。」
「承りました。」
改めて建設予定地に入ると、とんでもなく広い土地にものすごい量の資材が運び込まれている。
下見した時は他にも老朽化した建物なんかがあって特に感じなかったが、更地に資材だけとなると広さの感じ方が全然違う。
「村の畑より広そうですね……。」
メアリーがキョロキョロしながら周りを見る、平原なんかで広々とした空間には慣れているはずだが、栄えている魔族領の首都でこの広さは違和感があるのだろう。
「村長、よく来てくれたのじゃ!」
俺らの姿を隠すために用意してくれた場所に行くと、そこには魔王が待っていた。
「久しぶりだな、魔王の台詞を採用できなくて申し訳ない。
ちょっと観客の多さにびっくりしているが、頑張って成功させるからな。」
「構わぬよ、アレは私もちょっと興奮しておったのもあるし。
他の種族はこの後来るのかの?」
「あぁ、荷物がある種族もあるしその準備の手伝いもあってな。
俺と妻たちだけでも先に行っておかないと、事前に伝えることがあって慌てても困るからと思って。」
実際早めに来ておいてよかった、広さと大きさのシミュレーションが頭の中で出来ていなかったからな。
ギリギリで観客を入れた後だとそれも出来なかったかもしれないし。
「今のところは企画書通りに進んでおる、ザビーネも相当考えて企画をしておったらしくトラブルらしいトラブルもない。
資材も村の協力もあって余る程度に用意しておいたと聞いておるぞ、安心してくれ。
それと村長、ザビーネから聞いたが魔力の消費量は大丈夫なのか?」
「新しく来てくれたアラクネ族の協力と俺の
実際こんなバカでかいものを錬成するわけにもいかないし、テストは出来てないんだよ。
ただマーメイド族の住居を村に作った時は、ポーションを使わなくても全く疲れが出なかったから何とかなるはずだ。」
「それは重畳じゃ、それよりマーメイド族が村に移住したという事は海の事故にはより気を付けねばならんの。」
「その件に関してはイベントが終われば話がある、とりあえず保留しておいてくれ。」
「なんとそうであったか、それなら今はイベントに集中するのじゃ。
今回は魔族領をあげての一大イベント、司会は私だから頑張って盛り上げていこうぞ!」
「あぁ、俺たちも出来る限りの事はするつもりだ。」
魔王は最終の打ち合わせがあるらしくこの場を離れていった、俺たちは打ち合わせしなくていいのだろうか。
特に呼ばれるまでやることも無いので、妻たちとどう登場すれば盛り上がるかを話していると他の住民たちが続々とこちらにやってきた。
「待たせたな村長。
ドラゴン族、村の警備に就いた者以外こちらに到着した。」
「ウェアウルフ族も警備の者以外到着したぞ。」
「ケンタウロス族も同じく。」
「ドワーフ族もじゃ。」
「ミノタウロス族も到着しております。」
「プラインエルフ族も到着しましたよ。」
「ダークエルフ族も到着しました。」
「アラクネ族も来たわよ。」
「マーメイド族からは私だけですー……池なんかがあると助かりますー……。」
「村に住む魔族を代表して私とグレーテも参加することにしたわ。」
アラクネ族から後は予定には無かったが、ドラゴン族の数も充分に足りているし問題ないだろう。
それよりアストリッドは大丈夫なのか、池を作る予定はあるが俺たちの登場予定地とかなり離れているぞ。
……我慢してもらうか。
「皆イベントに参加してくれてありがとう、楽しみにしてくれてる人がほとんどで俺も安心しているよ。
イベント開始まではここでゆっくりしてて構わないと思う、始まったら魔王の司会進行に従って俺が神殿建設、そこから登場の流れだからよろしく頼むぞ。」
「「「「「分かりました!!!」」」」」
ここまで村の住民をほぼ総動員して何かにかかることは初めてだから多少の不安はあったが、皆の気持ちは綺麗にまとまっているようで安心。
「ささっ、村長はこちらのお召し物に着替えてください。」
妻たちとケンタウロス族、それにティナが決めた豪華絢爛な服を目の前に出されて少し気負いする……だがもうここまで来たんだ、俺も男だし腹をくくろう。
そう思って渡された服に袖を通す、装飾品も含めると結構重いんだよな。
「おぉ、似合ってるではないか。」
「村長きれーい!」
「あまり見慣れなから違和感があるが綺麗じゃのぅ。」
着替えて皆の前に姿を見せると、多種多様な意見が飛んできて少し恥ずかしくなる。
「開様も村の技術力と繁栄を表現していただけました。
後は皆さんの存在で種族の繋がりを魔族領に見せましょう!」
「「「「「おぉぉぉーーー!!!」」」」」
俺の気持ちを察してくれたのか、メアリーも皆を鼓舞してくれる。
助かるよ、ありがとう。
粗方の準備を終えて各々休んでいると外が少しずつ騒がしくなってきた、恐らく観客の導入が始まったのだろう。
もうすぐだな……うぅ、やっぱり緊張してきた。
「魔族領の民よ、忙しいところこれだけの人数よく集まってくれたのじゃ!
ただいまより、幾度となく魔族領を救ってくれた未開の地の村の住民が崇める神を崇めるための神殿を魔族領にも建設する!
神に選ばれし村の村長による、神から賜った業でここに神殿が顕現する……しかとその目に焼き付けよ!」
始まった……!
俺は企画書に書かれていた通りの神殿を頭に思い浮かべて資材を確認、よし……光ってるな。
そのまま
「うぉぉ、本当に神殿が一瞬で出来上がった!」
「すげぇー!」
「な、何が起きたんだ!?」
観客のどよめきが響き渡る、どうなるか分かっていただけに気絶者は居ないのが幸いだな。
俺は少し疲れを感じたのでポーションを飲んでおく……よし、疲れも取れたし倒れなかった――後は登場と自己紹介だけだ。
「どうじゃ、これが魔族領を救ってくれた神から賜った力じゃ!
聞くと魔族領にも崇めておる神はおるが、村長を選ばれた神とは違うらしいのじゃ……じゃが神は寛容であり我らを差別などせぬ。
どちらの神も崇め感謝し、多くの救いと恵みを分けてもらおうぞ!」
魔王がそう言うと、大きな歓声が起きた数秒後に静かになった。
何があったのかと思うと観客全員が神殿に向かって祈りを捧げている……神を崇拝してもらうという意味ではこの時点で大成功かもな。
「では、神に選ばれた未開の地の村の村長に登場してもらおう!
多種多様な種族を束ねておる村長じゃ、今回は村の住民にも登場してもらうぞ!」
さぁ……とうとう登場シーンだ、皆よろしく頼むぞ!
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