第10話 みんな定住するらしい。

デニスの前で野菜の錬成の実演、ナスの種を渡されたので錬成して育てる。


嬉しいがもっと生姜が欲しくなるな……これは醤油も欲しい。


「おぉぉ……!本当に一瞬で育った!

 これはすごいぞ!」


デニスは錬成を見てものすごく興奮している。


「デニス、この野菜に合う野菜から作った体が温まる辛めの調味料はないか?」


「おう、あるぞ。

 その言い方なら生姜だの。」


デニスが取り出したものは、確かに生姜だった。


やばい、にやけてしまう。


あの神、俺の世界の食べ物をそのままこっちに作ってるのかな。


初めて神に感謝した。


「これが好きなのか?

 確かにこれは美味いが、そんな笑顔になるのは珍しいな。」


「聞いたかもしれないが、俺は神に別世界からこの世界に転移させられたんだ。

 その別世界で、この調味料はあったから懐かしく感じてな。

 ナスだってそうだぞ。」


こっちに来てまだ短いが、その間の食事が素材の味しかないとなると本当に懐かしく感じる。


旅行とかで海外に行っても、自分の国の料理が一番落ち着くんだよな。


「デニス、穀物は何があるんだ?」


「今あるのは麦に米、トウモロコシくらいかの。」


「米があるのか!

 他には何があるんだ?」


「枝豆、落花生だの。」


酒のつまみじゃないか。


「デニスさん、お酒飲む気ですね……。」


「飲みすぎはダメです。」


酒は後で考える、今は食事のほうが大事だ。


後は大豆があれば醤油も作れるな。


「里に行けば他にも種類はあるんだよな?」


「あぁ、ここに持ってきてない品種もたくさんあるぞ。

 また取りに帰らねばの。」


取りに帰る?


「ん、ワシはここに住むつもりで来たぞ?」


え、なんで。


「ワシは食と酒を楽しみたいんじゃ。

 鍛冶はするにはするが興味があるというより、誰かの代わりにやっていたというのが正しい。

 開どのが育ててワシが酒と料理を作る、どうかの?」


魅力的ではある。


「あ、私たちもここに住みます!」


2人とも旅はどうした?


「お話してませんでしたが、私たちは里がつまらなくて飛び出しただけなんです。

 開様と住めるなら私は幸せなので、是非!」


「私もです!」


のんびり過ごすつもりが、一気に騒がしくなりそうだな。


まぁタイガが居るとはいえ、一人よりは楽しいか。


うん、楽しもう。


俺は火を起こして、昼ご飯をデニスとメアリーに作ってもらった。


俺はイノシシ肉を提供。


ナスとイノシシの生姜焼きだ。


デニスがお酒を振舞ってくれたので1杯だけもらう。


お酒と合うものがわかってるな。


だが、ラウラが飲もうとしてるので慌てて止めた。


「ラウラ、ダメだろ子どもが飲んじゃ。

 お酒は20歳超えてからだぞ。」


「見た目は幼いですが、20歳でいいなら問題ないです。

 飲むです!」


え、ラウラ何歳だ?


「ラウラは今年で50歳くらいですよ?

 私は80歳くらいかなぁ?年はあまり興味ないので覚えてません。」


エルフ、見た目で年がわからない……。




昼ご飯も終わり、デニスは畑を広げてくれと頼んできた。


確かに、1か所の畝でちまちま錬成するより一気にやったほうが楽だ。


そう思い、畝を作り出す。


メアリーも手伝いたいとのことなので、クワをもう1つ作りお願いする。


ラウラはタイガと一緒に遊んでいる、タイガも楽しそうなので何より。


デニスは他の品種の種やら調味料やらを追加で取りに行くとのこと。


遅くても明日には戻るらしい、ずっとあのスピードで移動出来るのか。


「ドワーフ族の体力は無尽蔵ですからね、あれで力もあるからすごいです。」


「そうだな、一緒に住む人たちが頼りになる人ばかりで助かるよ。

 俺は戦闘がからっきしだからな。」


「えぇ、任せてください!

 開様は絶対にお守りしますよ!」


うん、頼りにしてるぞ。


談笑しながら畝を作る。


家の拡張と布団を作っておいてよかった。


開けた土地が畑で手狭になったので周りの木を木材に錬成して拡張、倍くらいになったな。


休憩を取りながら、畝を広げていく。


本当の意味の生きるための労働とは、こういうことを言うのだろう。


転移させられてよかったな、と実感が湧いてきた。


魔物が来るけど、メアリーが頭を射抜いて終了。


頼れる仲間がいるっていいな。


鹿のような魔物を仕留めた。


「グレースディアー!

 これ美味しいんですよー!」


メアリーが仕留めた魔物見て歓喜する。


初めて見た魔物だが美味しいだと?


鹿っぽいよな、鹿肉を思い浮かべて錬成。


成功した、鹿という認識でいこう。


「タイガ、内臓が余ってるぞー。」


肉を回収し、地下室へ。


タイガはオークの内臓より美味しそうに食べている。


内臓も美味しいのかな。


タイガが食事を始めたので、ラウラはお昼寝。


畝をあらかた作り終わって、休憩。


メアリーと雑談していると、ふと次は氷の季節だと言うことを思い出した。


「メアリー、氷の季節は後どれくらいで来るんだ?」


「そうですねぇ、稔の季節になったのがつい最近なので、後3・40日程度でしょうか。」


肉の蓄えと、後は風呂も作らなきゃな。


肉の蓄えは狩りをすればいいとして、風呂はどうするか。


薪はいくらでも用意できるが。


電気やガスが無いからそれしかないな。


そう考えていると、田舎の屋根にある太陽熱温水器を思い出した。


子どもの頃に祖母の家で遊んで屋根に登ってる時、ガラスっぽいのに触ってめちゃくちゃ熱くてやけどしたっけ。


その時、色は黒っぽかったはずだ。


黒色の染料があれば、ガラスは作れるから再現出来るんじゃないか?


「メアリー、黒色の染料に心当たりはないか?」


「黒色の染料ですか?

 炭を作って砕いて水に溶いて濾すのを繰り返せば、似たものを作れると思いますが……。」


そうか、そうやって染料を作ることも出来るのか。


俺の世界とは違うだろうが、黒になりさえすればいい。


「ありがとうメアリー、ちょっとその手法で黒色の染料を作ってくれないか?

 俺はちょっと作りたいものがあるから。」


「わかりました、では今日は炭を作るところまで進めておきます。

 そろそろ夕食の準備もありますので……。」


もうそんな時間か、なら作業は明日からでいいぞ。


明日にはデニスも帰ってくる。


そう言ってメアリーと夕食の準備をすることに。


するといきなりタイガが吠えだした。


慌てて外に行くと、傷だらけの狼男が。


「頼む……助けてくれ……。」


そういうと狼男はその場に倒れこんだ。

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