第337話 天使族を宥めれたので交流を持ちかけてみた。

「もういいから、怒ってないから。」


俺が何度も天使族を宥めるが一向に頭をあげてくれない。


流石にずっとこのままだと話も出来ないし、申し訳ない気持ちが凄くてお願いも出来ないから困る。


「しかし……まさか本当に神様だとは知らず……!

 天使族の歴史を顧みても神が顕現したという記録は残っていないので、まさか私の代でそのような事が起こるとは……。」


「それは仕方ない、今まで神はこの世界に干渉出来なかったからな。

 詳しい理由は話せないけど、俺はとある条件を理由に世界に干渉出来るようになったわけだ。」


「その条件とは一体……?」


「俺個人としては話してもいいが、世界に与える影響を考えて話さない事にしておく。

 変な憶測が飛び交っても嫌だしな。」


俺はこれまでの経験で、話さなくてもいいことを話すとトラブルを招くと学んだんだ。


ましてや今は神、発言の取り上げられ方ひとつでどんな事が起こるか分かったものじゃない。


「これは出過ぎた真似を!」


「だからいいって、とりあえず顔を上げてくれないか。」


「ですが……!」


「分かった、神として命令するぞ。

 顔を上げて俺を普通の客人として扱ってくれ、俺も話したいことがあるんだ。」


「……分かりました!」


天使族も何か宗教を信仰しているのだろうか、俺に……というか神に従順だ。


今のところ未開の地で神を崇拝してる種族は一癖も二癖もあるから注意しないと。


既にひと悶着はあったけど、とりあえずこれは解決でいいよな?




俺が神として命令してから少し待ってくれと言われたので待っていると、お茶と茶菓子が用意されたのでご馳走になることに。


空に浮かぶ城なのによくこんなのが用意出来るな、かなり見た目もいいし香りもいい。


「お口に合いましたか?」


アンドレアが心配そうに俺の顔を覗き込みながら問いかけてくる。


「大丈夫だ、美味しいぞ。

 俺が前に居た世界でもこういう味の物を食べていたから懐かしい、まさか天空に浮かぶマルクス城で食べれるとは思わなかったけど。」


「天使族は技術の応用は苦手ですが真似をすることは得意ですので。

 これも過去の文明を再現して異世界の門を開き手に入れた技術です、作物なんかは城の畑で育てたり地上に降りて買ったり……ですね。」


機具といいアンドレアの口からは聞き捨てならない言葉がポンポン出てくるな……異世界の門だって?


流澪なら分かるかもしれないけど、この茶菓子って俺が居た世界で食べてた気がするんだよな……まさかとは思うんだけど。


しかし俺の世界にあった技術もアカシックレコードに記録されてるだろうし、それを他の星の核がそこに住んでる生命に伝えててもおかしくない。


たまたまだと考えておこう、俺にしろ流澪にしろ覗きに行くのはかなりリスクが高いし。


縁が残っていると戻ってこれないかもしれないからな。


「天使族にお願いがあるんだが、俺が村長を務めている村と交流を図らないか?

 稼ぎが必要なら必要としている場所で雇うし、物々交換がいいならある程度の物は用意してやれる。

 食事に関しては今まで苦情が出たことない美味さを誇るドワーフ族と魔族が作った料理を提供するけど、どうだ?」


「天使族は慎重故にすぐ返事は出来ません。

 神様を信用してないわけでは無いのですが、ここは種族柄と思ってお許しください。

 ですのでまずは誰かを派遣し、その報告書を読んでから詳しい返事をしたいと思うのですが。」


「あぁ、もちろん構わないぞ。」


俺が返事をしてる時に小声で「アンドレア様はおっちょこちょいですけど。」と聞こえて来た。


うん、それは俺も思う――報告書を読まずに客人を叱り飛ばすのは駄目だろう。


「それと神様、お願いがあるのですが。」


「どうしたんだ?」


「天使族の先祖からは神は存在すると言い伝えられてきましたが、誰も姿を見てないので姿を模った物が存在しないのです。

 崇拝はしているのですが、像があれば日々の祈りにも更に精が出るはず……甘えて申し訳ないですが用意してもらえたりしないでしょうか?」


「問題無いぞ、置く場所と石か木を用意してくれればすぐだ。」


想像錬金術イマジンアルケミーで一瞬だな、どんな規模になったとしても神になった今なら対応出来るだろう。


即答の返事に驚いたのか、少しの間が空いたがすぐに準備の指示を出すアンドレア。


俺がすぐ帰るかもしれないとか言ってるけど、そんなことは無いから安心してくれ。


まだ日も高いし時間はあるからな?


「では私も派遣する者の選定をするため部屋に戻らせていただきます。

 神様はマルクス城を散策していただいて大丈夫ですので、必要ならば案内人を付けますが。」


「いや、分からなかったらそこに居る人に聞くからいいぞ。」


案内があると主要な場所しか回れないだろうし、俺は裏方仕事にも興味があるから見ておきたいんだよな。


「分かりました。

 準備が整い次第拡声器でお呼びいたしますので、ごゆっくり散策してください。」


「そうさせてもらうよ。」


アンドレアと一緒に俺も会議室を後にする――さて、マルクス城の散策へ行くとするか。

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