第336話 天使族の調査に協力した。

上空に浮かぶマルクス城は城と言うだけあって、庭・外観・内装共に非常に立派だ。


中世ヨーロッパのような文化を感じる、魔族領と少し似ているが違う地域の文化だと言い切れるくらいには違うんだよな。


人間領とは明らかに違う、あそこは俺が住んでいた国の1600年代のような文化だったし。


「こちらが調査を行う会議室になります。」


「ありがとう。」


城の中を案内されるがまま歩いていると、ある一室に到着した。


ここが会議室らしい、かなり大きな部屋だな……魔族領のそれより大きい気がする。


「侵入者の客人を連れてきました。」


「ご苦労、下がってよろしい。

 ――お初にお目にかかる、私は天使族の長アンドレアと申す。

 お主の名と種族は?」


ものすごいイケメンの女性だ、目つきもキリッとしてるし。


男として少し羨ましくなるくらいかっこいい――おっと、俺も自己紹介をしなきゃ。


「俺は未開の地の村の村長、開 拓志だ。

 つい先日神になったんだけど、なったところで俺がやることは変わらないから気にしなくていい。

 こっちは……もう天使族は充分分かっていると思うがデモンタイガーのタイガだ、俺の相棒でもある。」


「グォッ!」


タイガは俺に紹介されると前足をあげて返事をした、偉いぞ。



「未開の地の村……神……?」


アンドレアを含む天使族は俺の言ったことがイマイチ分かっていない様子。


「少し前に未開の地に俺が村を興したんだ。

 そこに住民がどんどん移り住んで紆余曲折あってだな――」


俺は天使族に俺の事情や体験してきたことを説明、書記を務めている人に何度も聞き返されてちょっと面倒だったけど。


だが全員信じれない様子だし仕方ない、迷惑をかけてるしこれくらいはやらせてもらおう。




「話を纏めると神によってこの世界に転移させられ、そしてつい先日その神と神の座を交代した――という事でいいだろうか?」


「それであっているぞ。」


「ふざけるな!

 そのような与太話で私や他の天使族を騙せると思うなよ!」


質問に返事をするや否や、アンドレアの物凄い怒号が会議室に響き渡った。


「貴様のような若造、しかも人間種が神だなどと驕りが過ぎる!

 天使族の前でそのような嘘を吐くなど、許されることではないぞ!」


「じゃあ逆に問おう。

 どうすれば信用してもらえるのか……俺は翼も持たずに地上からここまで瞬時に移動したぞ、それをただの人間が出来るとでも?」


「っ……それは。」


「それに俺が来てすぐだ、発言を聞いた後慌てて調査を行っていたよな?

 それの報告も聞かされてないし、終わってから俺は客人として扱われると言っていたが……これが天使族による客人へのもてなしなのか?」


「それは貴様が嘘をつくから――」


「俺は信用されるならここで神の力を使ってもいい。

 それにドリアードと契約しているからな、そこに植えられてる木に触れれば召喚することも可能だ。

 人間である俺の発言が信じれなくとも、大精霊の言葉なら信じられるだろ?」


アンドレアの言葉を俺の正論で塞ぐ、信用してもらえないのは仕方ないけどこのまま信用されないのも癪に障るし。


俺の言葉を聞いて口を噤んだアンドレアは、後ろの兵士らしき天使族から書類を受け取り、それを読み始めた。


恐らく報告書だろうが……せめてそれに目を通してから取り調べをしてほしかったぞ。


ほら、その書類に何が書いてあるか知らないけど物凄い驚いてるし。


あんなにしっかりしてそうに見えて、案外おっちょこちょいなのか?


「この報告書によると貴様らは生の理から外れていると書いてあるが、それは本当か?」


「せいのことわり……とは何だ?」


「普通に生きて死ぬ生命の循環を指す言葉だが、それから外れるということは不死か死にながらにして動いているという事だ。

心当たりはあるか?」


なるほど、心当たりしかない。


「あるぞ、俺もタイガも不死だ。」


「……念のためこの城にある機具で本当かどうか私の目で確かめさせてもらう。

 少しここで待っていてくれ。」


「分かった。」


そう言ってアンドレアは会議室から退出する、それよりさっきの言葉だ。


機具だって?


まさかこんなところでそんな言葉を聞くとは思ってなかった、天使族はかなり発達した文明を有しているかもしれない。


いくら取り調べてくれてもいい、何なら信用されるならなんだってするから是非友好な関係を結びたいぞ。


その技術と村のクリーンエネルギー機構が合わさればもっと発展出来るかもしれない、イフリートの破壊対象にならない程度にだけど。


だがあれはその文明を動かすための力の生成の方法に問題があるだけで、文明自体は星を破壊するようなことはそうそうないはず。


空調とか自動車なんかは駄目だろうけど。


「待たせたな。」


俺が思考を巡らせているとアンドレアが戻って来た。


さぁいくらでも確かめてくれ。


「これは天使族が過去の文明を再現して作り上げた生命探知機だ。

 今からこれで貴様とデモンタイガーを覗かせてもらう、もし生の理から外れてなければ……嘘をついてたことになるが大丈夫か?」


「問題無い。」


俺が即座に返事をすると、アンドレアの顔が少し歪んだ。


そのまま生命探知機とやらで俺とタイガを覗き込むアンドレア、その後ゆっくりと生命探知機を机に置いて頭を下げる。


「申し訳ございませんでした……!」


自分の間違いが分かるや否や即座に頭を下げて謝るアンドレア、信じてくれて嬉しいけど長が簡単に頭を下げると周りから変な目で見られるんじゃ――


「「「「「申し訳ございませんでしたぁ!」」」」」


この部屋に居た他の天使族全員も頭を下げて俺とタイガに謝ってきた、ちょっとびっくりするからやめてほしい。


怒ってないから、頭をあげてくれ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る