第335話 上空に浮かぶ場所に住む種族と話をした。

上空に浮いていた場所へ移動して数分。


未だけたたましい鐘の音が聞こえる、それに羽を持つ人間のような種族が武器を持って続々と戦線を敷きだした。


守護天使と言っていたし、天使族なのだろうか……一応神だからもう少し丁重に扱ってほしい。


言わなければ分からないだろうけどさ。


「そこの者、動くな……って、デモンタイガー!?」


「何だって!?」


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」


守護天使とやらはタイガを見た瞬間に絶望の表情を浮かべ、それはすぐに周りへ伝播。


戦線は瞬く間に阿鼻叫喚な状況になり機能しなくなっているのが分かる。


その……なんだ……ごめん。


怖がらせるつもりじゃなかったんだって、デモンタイガーが恐れられている種族だというのをついつい忘れてしまう。


今だって「何で怖がられてるの?」みたいな表情で俺を見てくるし。


お前が世界でも有数の実力者で恐れられてるからみたいだぞ。


「デモンタイガーを引き連れて来た者に問う。

 このマルクス城に何用だ――天使族を滅ぼしに来たのか?」


拡声器みたいな声で質問を投げかけてくる。


「俺がここで話して聞こえるのか?

 そっちは声を大きくしてるみたいだけど。」


「問題無く聞こえる、そこで話せ……いや、話してください。」


タイガがよっぽど怖いのだろうか、上から目線だったのが急に敬語になって少し面白いな。


でも今回は勝手に侵入してタイガを連れて来てる俺が悪いし、それを笑うのは流石に天使族が可哀想だ。


「俺はここの存在を今日のついさっき初めて知った。

 デモンタイガーのタイガがここを発見したから俺の力でここまで転移したんだが……まさか住民が居るなんて思わなかったんだよ。

 すまなかったな警戒させて、すぐに出て行くから安心してくれ。」


「地上からマルクス城を見つけた……?

 ちょっと確認を取る、もうしばらくそこで待――ってて、ください。」


何か変なのだろうか、小さかったけど雲さえなければ誰でも何かあるくらいには視認出来たけどな。


むしろ今まで良く誰にも見つからなかったものだ、下を覗き込む限りこのマルクス城という所は浮いてその場に留まっているわけではない。


気流に乗っているのか何かの動力で進んでいるのか……とにかく移動している。


ならば世界中を回っているだろう、どこかで見つかって話題になっていてもおかしくないんだけど。


いや、俺がそういう話を知らないだけかもしれないな。


ペーターあたりなら嬉々として教えてくれそうだ、今度聞いてみるとしよう。




待てと言われて15分くらいだろうか、向こうから次のアクションが一切されない。


流石にずっと待っているのも暇だ。


「まだ待たなければならないか?」


「もう少しだけお待ちを。

 現在調査報告待ちなんで。」


一体何を調査しているのだろう……というかそんな何かの調査ってそんな数十分で終わるものなのか?


もっとこう、何日もかけてしっかり精査したほうがいいようにも思うけど。


タイガも退屈過ぎるのか丸くなって寝てしまっている、俺もちょっとタイガの体で休ませてもらおう。


そう思いタイガの体に抱き着いた、その矢先。


「調査報告が提出されたので、あなた方の対応及び調査をさせていただきたく思う。

 待っている間、マルクス城に危害を加えることもせず動かずにいてくれたこと感謝する。

 あなた方は侵入者だが、危害を加えるつもりはないというあなたの発言を信用して客人としてもてなすつもりだ――調査に協力してくれるだろうか?」


「分かった、協力しよう。」


知らない種族と交流が出来るのは良いことなので大歓迎。


向こうもある程度信用してくれるみたいだし、侵入したことをきちんと謝って可能なら今後も交流していけるかどうか話してみようか。


しかし天使族か――神に仕えているイメージがあったけどそういうわけじゃないのかな。


オホヒルメノムチは不干渉の約定を結んでいたからこの世界に顕現してないはずだし。


色々考えながら待っていると天使族の一人が俺達を迎えに来てくれた。


「こちらです、案内しますのでついてきてください。

 ――そちらのデモンタイガー、本当に襲ってこないですよね……?」


「大丈夫、俺に危害を加えるか俺が命令しない限り普通にいい子だから。」


俺はタイガに跨って天使族についていこうとすると「何やってるんですか!?」と天使族に叫ばれた。


そんなに驚かなくていいじゃないか、疲れなくていいんだぞこれ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る