第6話 2人のエルフを救出、怖がられるタイガ

タイガに乗って移動すると、人と魔物にすぐ追いついた。


早すぎて振り落とされそうになったけど。


俺を乗せたままタイガがサクっと魔物を討伐。


オークだったのですぐに肉に錬成した。


タイガ、そういえば錬成したのにポカーンとしなかったな。


もう慣れたのかな?


タイガから降りると、タイガはすぐに内臓を食べ始めた。


よく食べるなぁ。


「タイガ、肉は持って帰るから食べるなよ。」


タイガはグォッと鳴いて内臓の続きを食べる。


人のほうに目をやると、「ひっ……。」と怯えられた。


怖がらなくてもいいじゃないか。


よく見ると人間じゃない、耳がとんがっている。


エルフかな?


2人とも女性だ、ちょっと得した気分。


男でも全然よかったよ、ほんとだから。


しかもかなり美人、それに大きい。


何がとは言わない。


たわわな果実が二つ、実っている。


美人。


もう1人は幼い感じだ、可愛らしいぞ。


果物も食べたいな。


いやそうじゃない、今はコミュニケーションを取ろう。


「間に合ってよかった、大丈夫だった?」


俺はエルフらしき人物に話しかけた。


「あ、はい……。助かりました、ありがとうございました。でも……そのデモンタイガーは?」


タイガの種族はデモンタイガーというのか。


物騒な種族名だなぁ。


「俺の相棒のタイガだよ、と言っても昨日からなんだけどね。

 あ、俺は開 拓志。」


「「相棒!?人間がデモンタイガーを使役してるのです!?」」


2人でハモって驚かれた。


「使役とは違うと思うけど、何かおかしいのか?

 めちゃくちゃ人懐っこいぞ?」


実際ほとんど離れないくらい俺にくっついている。


「おかしいですよ……、デモンタイガーはこの森どころか世界でも恐れられている種族です。

 それに誰かと、ましてや人間と一緒に居るなんて聞いたことがありません。」


「そうですね、人懐っこいデモンタイガーなんてこの世で初めてじゃないです?」


え、そうなの?


「私たちがデモンタイガーに睨まれたら、人には言えない感じになって気絶します。

 それくらい怖いです、現状ものすごい我慢してます。」


何を我慢してるんだ?


聞かないでおこう。


「あ、申し遅れました……、私はプラインエルフのメアリー・ウォルフと申します。」


「私はラウラ・ウォルフと申しますです。」


「「改めまして、助けていただいてありがとうございました。」です。」


姉妹だったのか。


声が揃って仲良しなんだな。


ラウラは語尾に「です」をつけるのが癖か?


「いやいや、気にしなくていいよ。

俺も昨日神にこの世界に転移させられてね、話せる人と会ったのは初めてで嬉しいんだ。」


「神に転移!?どういうことですか!?」


「そんな話聞いたことないです、ですが神に魅入られているならデモンタイガーを使役しているのも納得です……。」


しまった、つい伝えてしまった。


改めて神に祈りを捧げるようにしましょう、とか2人でボソボソ言ってる。


神の思惑通りになるのは癪に障るが、この際いいか。


だが魅入られてはいない、適当に選ばれただけだ。


「そうなんだよ、だから色々この世界について知りたい。

 あと近くの町の情報と、可能なら物々交換もしたいんだ。」


メアリーが難しい顔をして答える。


「この近くには栄えた町はありません、この辺り一帯は未開の地と呼ばれていまして、原住民の里と生き残れている少数の冒険者しかいませんので。

 しばらく陽が沈む方角へ進むとある山を越えれば、魔族領の町に行けるのですが……。」


続いてラウラが話す。


「物々交換も応じれないです、私たちは里を離れ旅している身です。

最低限の荷物しか持ち合わせていないですし、必要なものは現地調達しているのです。

 オークに追われたのは屈辱ですが、メアリー姉の武器が壊れてしまって逃げるしかなかったのです。

 開様がいなかったら私たちも殺されていましたです。」


これは困った、調味料とか家具とかはここじゃ簡単には仕入れれないのか。


仕方ない、しばらくはここで住むようにしよう。


準備が整えば山越えとやらに挑戦するか。


2人の情報から先のことを考えていると、メアリーが口を開いた。


「開様……不躾なお願いで申し訳ないのですが、何か武器を譲っていただけないでしょうか。

 武器があれば私たちはまた旅を続けられます、不都合が無ければ是非。」


ラウラが続く。


「お願いしますです、開様。

 謝礼は労働でお支払いします、何卒宜しくお願いしますです。」


周辺の状況と町の情報はもらったし、その対価は払わないと失礼だな。


だが、武器となると剣が1本しかないから2人分となると無理なんだよな。


聞いてみるか。


「武器は剣が1つしかない、2人分の武器はないんだ。

 それでもいいなら譲ってもいい。」


メアリーが少し悩む。


「ラウラは魔術を使うので問題ないです、今は魔力切れを起こしてますが……。

しかし剣ですか……心得が無いわけではありませんが選ぶ権利はないですね。

ご厚意に甘えます、ありがとうございます!」


「メアリー姉、大丈夫?」


「大丈夫、弓を使ってたころより慎重になって、ドワーフ族の里へ弓を直してもらいにいけばいいわ。」


メアリーの壊れた武器って弓か。


弓ならもしかしたら想像錬金術イマジンアルケミーで直せるかもな。


素材次第だけど、どうにかなる確率は高い。


「その壊れた弓、詳しく見せてもらっていいか?

 もしかしたら直せるかもしれない。」


メアリーとラウラが同時に驚く。


「本当ですか!?

 弓が直るならこれ以上ないです、是非よろしくお願いします!」


「ラウラからもお願いするのです!」


「なら、立ち話もなんだから俺の家に来てくれ。」


「わかりました!よろしくお願いします!」です!」


「タイガ、俺と2人を乗せて家まで頼むよ。」


グォッとタイガが返事をする、いいらしい。


「さ、2人とも乗ってくれ。」


そういうと2人は一気に顔色が悪くなった。


「タイガ様に乗る!?無理です!怖すぎます!」


「というか未開の地の森に家って、開様は命知らずです!?」


めっちゃ引かれた。


タイガが落ち込んじゃったじゃないか。


お前は悪くないぞ、よしよし。


乗るのはダメらしいので、歩いて家まで向かった。


楽だし気持ちいいのに、ちょっと早すぎるだけで。


家に帰ってる途中に気づいた。


オーク肉、置きっぱなしだ。

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