第404話 俺の釣具のせいで釣りが一大ブームになった。
俺の釣具がパーン族の上位から村に広まって2週間ほど経っただろうか、現在村では釣りがブームになっている。
ドワーフ族も納品しなければならない物を作った後は釣具を分解し、新しい物を生み出すため研究しているみたいだ。
軽くてしなやかで丈夫な金属の生成にも躍起になっているらしい、もし俺が知っているものよりいい質の金属が出来たら教えてもらおう。
リゾート地は釣具を用意した3日後から稼働している、現状釣りがメインなのは否めないがコテージや簡易キッチンを使って野外での食事を楽しんでいるみたいだ。
ここは村の施設でも珍しく、利用時には誰からもお金をもらうようになっている。
もちろん村の住民でもだ――ある程度割引はされているみたいだけど。
理由としては俺達が認知していない種族の管理地の可能性が否めないから、というもの。
ここまで好き勝手やって何も言ってこないから大丈夫だとは思うが、もしトラブルがあった時に少しでも多く賠償金を支払って満足してもらうため積立をしているらしい。
武力で黙らせようとしなくて本当によかったと思う。
ドラゴン族とハーピー族が島の周囲を空から探索しているが、この島以外の陸地を1ヶ所確認しているらしい。
更なる精査の為キュウビを連れて地図を作ってもらい俺も確認したが、50㎞くらい離れているのでそこに種族が治める何かがあったとしても統治外だろうという判断になった。
前の世界では200㎞くらいはその国の領地のようなものだったが、この世界では違うらしい。
移動手段と安全面を考慮するとそうなるのも仕方ないだろう、この世界に関しては元々住んでいる人達のほうが詳しいので意見に全乗っかりすることにする。
その後はキュウビも釣りに興味を持ち、そのままドハマりしていた。
昼夜問わずずっとリゾート地に居るらしいけど……ケンカしないようにな?
「村長、入ってよいか?」
書類を見れてなかった件があったので、溜まっていた書類仕事を片付けようと書斎に篭っているとノックと共にクズノハの声が聞こえて来た。
「あぁ、いいぞ。」
俺は仕事の片手間に返事をした、そしてクズノハが書斎に入ってくる。
「村長、少し相談があるのじゃが……。」
「どうしたんだ?」
「リゾート地とやらで流行っている釣具なんじゃが……個人的に2人分融通してもらうことは可能じゃろうか?」
かなり神妙な顔をして会話を切り出したので何かと思ったが、特に聞いても問題の無い願いで良かった。
そろそろ魔王の所へ嫁ぎに行くから、マリッジブルーのような状態で村に残りたいと言われるかもしれないと考えてしまい一人戦々恐々としてしまっていたのは内緒。
「あぁ、問題無いぞ。
だけどある程度流通するまでは魔族領での使用は控えてほしい、それと用途によって違うから、クズノハと魔王がどんな釣り方が好きでどんな魚が狙いか教えてくれたら用意するぞ。」
「なっ……!
2人分とは言ったがワル……魔王の分とは言っておらぬじゃろう!」
「違うのか?」
「違わぬのじゃが……!」
クズノハは顔を真っ赤にして尻尾をブンブン振りながら反論してくる。
反論……では無い気もするけど。
「しかしクリーンエネルギー機構の研究施設に篭っていると聞いたけど、釣りを知る機会があったんだな。」
「食堂であれだけその話題が聞こえてくれば嫌でも知ることになるじゃろ。
それにクリーンエネルギー機構の問題は全て解決の目途が立っておる、今は他の者が協力して我が考案した魔法陣を構築しておるぞ。
試運転では効果があったのを確認しておるし、近いうちに稼働させることが出来るはずじゃ。
しかし魔族領へ行く前に解決して肩の荷が下りた気分じゃよ。」
何の気無しに振った話題だが、思った以上の答えが返ってきてびっくりしてしまう。
まさかそこまで進んでいたなんて……道理でここ2日くらい流澪が家に帰って来てないわけだよ。
だが近いうちに村に明かりが灯ると考えると嬉しいな、これで警備の人達も仕事をしやすくなるはず。
火を起こしているが、風の強い日とかもあるし街灯があれば改善されるだろう。
「そこまで進展しててびっくりしたよ。
やりたいことははあるから楽しみだ。」
「ふふ、あまりの静かさに驚くといいのじゃ。
それでは我は少し魔族領に行ってくる……明日には帰るのじゃよ。」
「分かった、気を付けてな。」
クズノハはそのまま書斎を出て行ったので、俺は仕事の続きをすることに。
話している途中も手を止めてはいなかったが、今しがた仕事が増えたからな……村の見取り図を見てどこに街灯を設置するか決めないと。
だが街灯の試作が先か……倉庫に行って試しに
だがそれなら流澪と一緒にしたほうがいいな、とりあえず作るだけ作って流澪の帰りを待つとしよう。
その日の仕事はそこで切り上げ、街灯の下となるLED電灯を作って家で保管することに。
LEDって石から作られてるんだな……倉庫に材料があってよかったよ。
用途が分からない石でも種類別に分けて保管してくれていたおかげだな、まさかぱっと見ただの石から作られてるなんて思いもしなかった。
後は流澪が帰って来てくれればだが……状況が状況だし帰って来ないかもしれない。
明日帰って来なければ俺から研究施設に出向くとしよう。
次の日、朝の運動の為外に出るとクズノハが尻尾をブンブン振って待ち構えていた。
「村長!
釣具は投げがいいらしいのじゃ、それとルアーとやらも興味を持っておってじゃな――」
朝から物凄いテンションで用意する釣具について説明された。
分かった、分かったから少し声のボリュームを落としなさい。
ほら、周りが何かあったかと思って目をこすりながら外に出てきてるから。
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