第403話 船を出して釣りが出来ると分かったので、しっかり楽しんできた。

「村長、よろしいのですか……?」


「構わないさ、取り急ぎ必要な仕事は全て済ませたし。

 ダンジュウロウとシモンにも失礼の無いよう対応したから、今日も頼むぞ。」


現在俺はリッカがリゾート地に仕上げた島に来ている。


そしてパーン族の上位に遊覧船を出してもらい釣りに行くところだ、もちろん自分の竿・リール・ルアー・餌・仕掛け……全て想像錬金術イマジンアルケミーで揃えた。


この世界の釣り用具を見たが本当に原始的だったからな、俺はあんなので釣れる気がしない。


一度見せてもらったが、カツオの一本釣りのようにバンバン釣果をあげるパーン族の上位に軽く嫉妬してしまった。


コツがあるらしいが、俺には出来そうもないので。


パーン族の上位は俺の言葉に渋々従い、船を出してくれた。


渋々なのは俺がここ3日ずっと船を出してもらっているからだろう、不安なのかもしれないが本当に大丈夫なので安心してほしい。


決して釣果が無くてムキになってるわけじゃないぞ、これでも1回船を出すと生簀がほぼ満タンになるくらい釣れているからな。




「村長、魚影が確認出来る地点に到着しました。」


「ありがとう、それじゃ釣ってくるかぁ。」


俺はパーン族の上位から声がかかったので、ロッドホルダーから竿を取り外して準備を始める。


遊覧船という名前だがかなり私物化してしまっているな……これは俺の船にして別の遊覧船を想像錬金術イマジンアルケミーで用意しなければ。


かなり釣り向けに改造してしまったし。


「あの、村長。」


「どうしたんだ?」


釣り糸と仕掛けを結んでいる途中、パーン族の上位から申し訳なさそうに声をかけられた。


まだ船を出したことが不安なのだろうか……関わってる人全員に許可を取ってあるから大丈夫だって言っているのに。


「大変差し出がましいお願いなのですが、村長が使われている釣具を使って釣りをしてみたいのです。」


「最初に見せてくれたあの方法じゃダメなのか?」


「あの釣り方は特定の魚にしか通用しません、それにその魚の魚群が見つけられなければ何も出来ませんし……。

 ですが村長の釣具はどんな時でも色んな魚を釣ることに成功しています、これは私達とコロポックル族が確立した技術とはまた違うものなんですよ。

 村長がよろしければ、私達の勉強の為にも是非……!」


なるほど、てっきりあの釣り方で何でも釣れるかと思ったがそうじゃないんだな。


たまたま同じ魚がかかっていると思ったがそれも狙いだったのか、ますますカツオの一本釣りのような釣り方だ。


パーン族の上位の願いは聞ける……聞けるんだが。


今ここに竿が3本しかない、だが俺の釣具を貸してほしそうにしているパーン族の上位は10人ほど。


足りないんだよなぁ……流石に人数分の釣具を準備するのは骨が折れる。


作るのは想像錬金術イマジンアルケミーで一瞬だが、必要な素材を使った所に収納したので倉庫を歩き回らなければならない。


結構、いや……かなり億劫だ。


仕方ない。


「それじゃここにある釣具を使い回して使ってくれ。

 俺は今回皆の教え役に回るから。」


「そんな、そこまでしていただくわけには!」


「全員が覚えれば他の人に教えれる、そうなればこのリゾート地の目玉に出来るだろ?

 俺としても同じ趣味の人が増えるのは嬉しいし、釣具はまた今度準備して持ってくるから。」


「……ありがとうございます!」


最初はメアリーの誘拐という最悪の出会いだったが、こうして交流すると別に悪くない奴らなんだよな。


あれしか生き方を知らなかっただけで。


それに傲慢という部分が直ってくれたのは大きい。


俺がロッド・リール・仕掛けの使い方を説明しているとパーン族の上位の一人が釣り糸と仕掛けの結び目を切ってばらしている。


「おいお前、何しているんだ!」


「いえ……この結び方より強力な結び方があるのでそちらに直そうかと……。」


「え、それ俺が知りたいんだけど。」


俺も一番頑丈な結び方を知ってるわけじゃないからな、あれより強い結び方があるならもちろん知りたい。


「それじゃそっちは釣っていてくれ、分からなければ呼んでくれたらいいから。

 俺はこっちで結び方を教わっているよ。」




それから数時間、釣った魚を捌いて食べながら皆で釣りの勉強会を終えた。


流石にお酒は自重した、というか積んでないみたいだ。


「村長、ありがとうございました!」


「こっちこそ勉強になったよ。

 釣具は20人分くらい作ってここに持ってくる、パーン族の上位はそれを収納する場所とまとまった魚を確保するための道具を増やしておいてくれ。」


「分かりました!」


釣りだけじゃ皆の魚を賄いきれないからな、あくまで釣りはレジャーとして楽しむ行為だし。


もちろん釣った魚はきちんと食べるけどな、命を粗末にするのはダメ。


俺は島を離れて村に戻り、釣具を作っているとエルケに捕まった。


「村長、最近島に行ってばかりで私達に構ってくれません……寂しいですよ?」


そういうつもりはなかったけど、確かに帰ったら仕事をしてお風呂に入って寝て……という生活になっていたな。


今日は仕事も無いし、妻達とゆっくり過ごすとしよう。


この後、寝る前にカタリナ以外の全員から引っ張られるとは思わなかったけど。


痛かった。

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