第130話 様々な報告を受けた結果、何も無いことは無さそうだった。

「魔族領でそんな話になったんですね、では開様の言う通り魔王様の案をお借りすることにしましょうか。

 私はグレーテさんに協力を仰いできますね。」


魔族領でマルチンやイザベル、それに魔王との話を伝えるとメアリーはグレーテの所へ向かっていった。


怒られなくて済んだ。


下手すると魔族領で罪に問われるだろうからあまりしたくないのだが……もし露呈しても分かってくれるのを祈るしかないな。


メアリーへの用事は終わったし、俺はクズノハに10日後に魔王とデートするのを伝えるとするか――本人はデートと認識出来ないかもしれないけど。


ついでにこの件の記録はクズノハに任せるとしようか、色気は無いが話題にはなるだろうし。


そう思い立ってクズノハの家を訪ねる、変わらずクズノハはダンジョンコアを作ってくれていた。


魔術刻紙はかなりの在庫が作れたので今は問題無いらしい、いずれこれも流通に乗せないといけないな……今これを主に使っているのはグレーテだけだし。


生活魔術もプラインエルフ族と元スラム街の住民の魔族がかなり賄えているらしいからな、だが個人で欲しいという人も少なからず居るだろう。


まぁ今はそれほど急いだものじゃないし、俺がダンジョンコアをもう一つ確保したいので今のクズノハの行動には口出ししないことにする。


閑話休題。


今未開の地に起きている問題とそれに関する記録係、それに10日後の事を伝えるとどちらも了承してもらえた。


何かを記録するのは好きなのだろうか、記録係の事を伝えた時に耳と尻尾がピコンと立ったのが分かる。


ちょっと可愛い、愛玩動物的な意味で。


とりあえずクズノハへの要件は終わったのでお暇することに、必要になるまでダンジョンコアの作成を頑張ってもらいたい。


家に戻ろうとしているとオスカーとノアが村に戻ってくるのが見えた、あちらも俺に気づいたのか俺の近くで着陸。


「村長、キュウビから地図の写しを預かって来た。

 ワシとノラ殿で確認したところ、キュウビの地図に間違いがなければダークエルフ族の里の近くまで谷があるとのことだ。

 それが今キュウビの居る場所まで続いておる。」


「お疲れ様、谷の件はシモーネとウーテの報告とも合うよ。

 今はオスカーとシモーネが異形の者を討伐していた穴とその谷が繋がろうとしていて、それが黒魔術と関係あるんじゃないかという前提で動いている所だ。」


「なるほどあの穴か……処理が面倒なので放っておいたが失策だったか。

 分かった、また何か出来ることがあれば声をかけてくれ。」


オスカーとノラは報告を終えそのまま食堂へ向かっていった、オスカーってドラゴンでも一番恐れられる存在のはずだが……誰かと行動すると絶対仲良くなってる気がするな。


ノラがオスカーへ積極的に話しかけるところなんて初めて見たぞ、キュウビやクズノハともそんな感じだった気がする。


とりあえずこれはクズノハに渡して資料として更に写しを作ってもらおう、何かの役に立つかもしれないしな。





クズノハに地図の写しを渡して家に戻ると、メアリーも帰宅していた。


「メアリー、オスカーとノラが帰ってきていて地図の写しを受け取ったぞ。

 クズノハに更なる写しを作ってもらっているから、もし必要ならクズノハの家に行ってくれ。」


「わかりました、ありがとうございます開様。

 グレーテさんは何とか説得することは出来ましたので、イザベルさんの居場所を教えてもらえればと思うのですが……。」


「それなら研究所の地図を書いてもらっている、渡すのを忘れていたよ。」


メアリーにイザベルからもらった地図を渡した、晩ご飯の時にグレーテに渡して今夜にでもイザベルを迎えに行ってもらうらしい。


「後はドラゴンの里を調査しに行った部隊の帰りか……予想はしてたがやはり帰りは遅いな。」


「仕方ないですよ、ドラゴンの里も決して狭くないでしょうしここから1日はかかりますから。

 戦闘面では村にあるオレイカルコス製の武器とドラゴン族が揃っているので間違いはないかと、開様のエンチャントもあることですし。」


安否の心配はしてしまうが、あのメンバーならそれは野暮なのだろうな……こればっかりは性格なので仕方ない。


決して信用してないわけじゃないんだけど。


「それより開様、ご相談があるのですが。」


「ん、どうしたんだ?」


「キュウビさんを一時帰還させることを許可出来るでしょうか、イザベルさんの見解次第では必要になる気がしまして。」


「どうしても必要になったら仕方ないさ、だがあくまで一時的な帰還だ。

 役目を終えたら贖罪の旅に戻ってもらうぞ?」


メアリーがわざわざ相談するくらいだ、恐らく必要になるだろうが……もしかしたらそうならないかもしれない。


それに一時的という所をきっちり線引きしておかないと、もし村から犯罪者が出た時に示しがつかないからな。


「もちろんです、ではまた進展しましたら改めてご相談しますね。」


メアリーはそのままクズノハの家へ向かった、俺も他にやれることはないかと考えたが特に思いつかないのでカールの世話をすることに。


この問題も何事も無く終わればいいんだろうけど、黒魔術なんかが関わってそうだと思うとそうはいかないんだろうな。


そう思いながら俺は泣いてるカールのオムツを取り替える、最初はダメダメだったが今は大分手慣れたものだ、自分を褒めたい。


なんて少しニヤつきながらオムツを取り替えていると、家の玄関が勢いよく開く音がした。


何かあったのだろうか?


「村長、報告があるわ!

 カール君のオムツを替えたらこっちに来て!」


ウーテがかなり慌ててこっちに来たが、オムツを取り替えるのは待ってくれるらしい。


別にそのまま報告してもらっても良かったんだが、話が長くなる報告なのだろうか。


手際よくオムツを取り替え、そのまま抱っこをせがむ仕草をされたので抱っこしたままウーテの所へ行く。


「終わったぞ。

どうしたんだ、そんなに慌てて。」


「今ちょっと気分が悪くなって谷に向かったついでに少し調査をしてたんだけど、その時谷からギガースがコカトリスを連れて谷底からよじ登って来たのよ……。

 その2匹は私が討伐したけど、あの谷が不自然に広がって異形の者と関係があるのがほぼ間違いなくなったわ。」


本当に話が長くなりそうだし、俺の願いは届かなかったみたいだ。


「分かった、報告ありがとう。

 明日には黒魔術に詳しいイザベルも来るから話し合いを行おう、ドラゴン族の里を調査しに行った部隊はまだ戻ってないが……戻り次第報告を聞いて改めて話し合いをすればいい。」


未開の地の谷に世界各地の穴……解決するのに大掛かりな問題になりそうだな。

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