第318話 過去最大の宴会だが、過去最高に質問攻めを食らった。
俺・エルケ・オスカー・キュウビの4人で色んな人からの質問に答える。
もう誰がどんな質問をしたのか分からないくらいの量を答えた、昔動画でよく見た一問一答形式のような状態だったぞ。
まさかそんな事を自分がやることになるとはな。
だがそんな中でもカタリナがおふざけでやった質問だけは覚えている、なんだよ『今から新しい妻とベッドに行きたいですか?』って。
それは後ですることであって今じゃない、本当はすぐ解放されて色んな料理と酒を楽しみたいのに。
後パーン族の上位も『長を幸せに出来ますか?』って質問してきてたな、それはするから安心してくれ。
そんな一問一答形式の質問攻めが30分くらい続き、やっと落ち着いたのか徐々に人が減っていく。
「やっと落ち着いて飲み食い出来そうだ……疲れたぞ。」
「そうですね、まさかこんなことになるとは……。」
この騒ぎを起こした発端のエルケもかなりげっそりとしている、村の住民を焚きつけて場を盛り上げて告白したかったんだろうが、その先が読めなかったみたいだ。
村の住民は騒げることや話題にはかなり敏感だからな、そして全力で騒ぐし。
「めでたい事だ、そんな気を張らなくても思ったことを言っておけばいいものを。」
「お主は気楽過ぎる、村長やエルケ殿くらいの反応が普通だろう。
それより私は料理とお酒をたらふく楽しみたいぞ。」
オスカーはお酒を飲みながら上機嫌、キュウビはそこまで飲んでないのかと思ったらオスカーの倍くらい空のグラスが置かれていた。
クズノハといい、妖狐一族はお酒に強いのだろうか?
「村長、私も料理を楽しみたいです。
もっと容姿を女らしくしないと村長の妻として恥ずかしいので……。」
「そんなこと気にするな、それに皆の体つきが女らしいのはたまたまだから。」
俺がそう言うとエルケがそんな事信じられないという目で見てくる、ちょっと失礼だと思うんだけど。
そんな人を色情魔みたいに思わないでほしい。
「エルケ殿、村長に酷いことをされたら私に頼ってくるがいい。
妖術で村長を懲らしめてやるからな。」
「えっ……はい!」
はいじゃない。
そんなことしないし、まず断ってくれ。
恐らく悪意は無いんだろうが、エルケは色々と危なっかしいな……無垢というか何というか。
キュウビもはいと帰ってくるとは思わなかったのか、目を見開いて笑い出す。
「はっはっは、そんな事をしたら今度こそ私は村に居れなくなる。
だが相談事は聞くから安心してほしい。」
「ありがとうございます!」
それからキュウビとエルケは意気投合したのか、お酒と料理を楽しみながら会話が弾んでいった。
俺とはこれからほぼ毎日同じ屋根の下で暮らすんだし、他の人と交流を作っておくのは大事だと思い、オスカーに一声かけて席を離れることに。
「ちょっと他の所へ行ってくるよ。」
「うむわかった。
もしシモーネを見かけたらワシの所へ来るよう言っておいてくれないか?」
「見かけたら伝えておくよ。」
恐らく夫婦そろって飲みたいんだろう、だがシモーネは妊婦だからお酒を飲ませるんじゃないぞ。
だが俺は俺で探している人が居るので、声を掛けれなかったらすまない。
酒を片手に所々で料理をつまみながら歩いていると、目的の人が少し遠くに居るのが見えた。
きちんと話しておかないとな。
「楽しんでるか?」
俺が声をかけたのはパーン族の上位達、他の人とではなく身内で固まっているようだ。
「そ、村長……!
もちろん楽しませていただいております。
他の住民の方々からは厳しいお言葉をもらっていますが……。」
「そこに関しては自業自得だからな、お前達を擁護するつもりはない。
だが全員の前で謝罪をした姿に嘘は無いと思っている、もしあるなら村の住民から何かしら報告があるはずだし。
それより聞きたいことがあって来たんだ――単刀直入に聞くぞ、島の開拓に出発して逃走する気はあるか?」
俺の質問を聞いた御子と神官は目を見開き、私兵はビクッと体を跳ねさせた。
「どうしてそのような質問を?」
「俺の罰を聞いて最初に思いつくのがそれだろ、キュウビだってツッコんでいたし。
怒らないし、どうこうしようというわけではないから教えてくれ。」
「正直に申しますと逃走の算段は立てていました。
長から聞いてると思いますが、私達御子と神官は水の中もある程度自由に移動出来ますので。
ですが、この料理を食べてかなり踏みとどまっています……美味しすぎるんですよ。」
御子の一人が俺の質問に答える、俺の目論見は成功しているようだ。
「でも開拓を終えて私達の居場所がこの村にあると思えない!
私は今も逃走を推します、もし御子様や神官様がされないのなら私と部下だけでも!」
私兵の一人が感情を露わにして叫ぶ、その心配もあって当然だろう。
「その質問に答えよう、まず開拓が終わった後は絶対に村への居場所は作ってやる。
これは村長として絶対だ、もし不満をぶつけたりしてくるような人が居たら逆にそいつを怒るし。
そして逃走を止めるつもりもない、だが未開の地はもちろん山を越えた先にある魔族領、それに隣接した海の先にある人間領には逃走した人相の通達を送らせてもらう。
そこに居場所は無いと思ってほしい、もし逃走した先で生きていくなら本当に誰も知らない土地でになるぞ。」
それを聞いた私兵は顔を青くする。
そもそも私兵は水を自由に移動出来ないはずだし、この世界の技術力なら船は帆船だろう。
海を越えるならかなりしっかりした船を作らないといけないし、航海図も無いのでどこに行けばいいかもわからない。
やっとたどり着いた先が魔族領か人間領なら居場所が無い、かなり価値の目が薄い賭けだというのが分かったんだろうな。
「……開拓が終われば居場所があると言うのは信じていいですか?」
「もちろんだ、どれだけ早く終わろうが時間がかかろうがそれは絶対だから安心してくれ。
だが、俺はお前達に期待してることがあるんだよ。」
「罪人に期待などするものではないですよ。
ですが内容は聞いておきます、なんでしょうか?」
「能力を見込んでの事だから。
この村は酪農・農業に関しては隙が無い、飢えは余程の事が起きないと起こらない。
だが、俺はこの村で魚も食べたいんだ……そして御子と神官は水の中も自由に動けるんだろ?
船の作成と漁の技術を開拓の内に確立してもらいたい、定期的に来る見張りに頼めば技術開発については村から支援をするから。」
エルケには何もするつもりはないと言ったが、村のためになることの支援は許してもらうとしよう。
それを聞いた神官は少し考えたあと、俺に質問をしてきた。
「その口ぶりだと魚は食べれている様子。
それを獲っている方々に技術を提供してもらっては?」
「それはごもっともな意見だが、この村には陸しか活動出来ない人しか居ないわけじゃない。
水陸両用で活動出来るお前達目線で、全く新しい船と漁の技術を確立してほしいんだよ。
もしそれが完成したら、マーメイド族にコロポックル族……他にも人手が必要なら話し合いで回すし。」
「「「「「コロポックル族!?!?」」」」」
やべっ、言わないほうが良かったかもしれない……めっちゃ驚いてる。
周りの人も上位の叫びを聞いてこっちを見てるし、失敗したかもな……。
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